物語に登場する食事のシーンは、思い浮かべるだけでも食欲をそそります。今日はそんなおなかを空かせた皆様をいずみ食堂へお招きしましょう。お鍋や一品料理、風変わりなスイーツなどいろいろご用意してお待ちしております。ソーシャルディスタンスにお気を付けながら、物語の世界とともにご堪能ください。
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瀬尾まいこ
『僕らのごはんは明日で待ってる』
幻冬舎文庫/本体500円+税
鍋を食べるとぽかぽかして幸せな気分になります。なんだかいつもよりゆっくりと時間が進んでいるような感じがしませんか。そんなときにこそ家族で大事な話をじっくりしてみましょう。何でも話せそうな気がします。この物語ではそんなシーンが登場します。そして、ご飯を一緒に食べられる平凡な日常こそが大切なものであると気づかされます。
(河本捷太)
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原田マハ
『やっぱり食べに行こう。』
毎日新聞出版/本体1,400円+税
原田マハさんによる「グルメ」エッセイ。国内外さまざまな地域の料理が取り上げられており、目次を見ただけでお腹が鳴りそう。その中の1つが「余呉の熊鍋」。余呉は滋賀県の地名です。原田さんいわく、熊肉はすべてのおいしい肉の記憶がとぶほどおいしいのだそうです。ごくり……。
(徳岡柚月)
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森鴎外
『普請中/青年 森鴎外全集 2』
ちくま文庫/本体951円+税
この本の中に「牛鍋」という短編がある。ほんの数ページの作品だが、鍋に入っている牛肉や葱など、牛鍋の描写が実に写実的で読んでいるだけで食べたくなってくる。それに加えてこの食事風景の中に人間特有の心の動きを上手く表現している。牛鍋のおいしさだけでなく「人間」も巧みに描写した秀作。
(田中匠)
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ローラ・インガルス・ワイルダー〈恩地三保子=訳〉
『大きな森の小さな家』
福音館文庫/本体600円+税
北アメリカの寒い冬を乗り越えるためには、家にたくさんの食糧を蓄えておかなければなりません。とうさんが仕留めたシカ肉は何日もかけてヒッコリィの煙で燻されて、他のたくさんの食料たちと一緒に食料部屋に保管されるのでした。この冬、時間をかけて作ったものを大切に食べてみるのもいいかもしれませんね。
(北田あみ)
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江國香織
『つめたいよるに』
新潮文庫/本体520円+税
冬の夜を連想させるタイトルの短編集から。
後編の「温かなお皿」では各話にごはんが出てくるが、ここでのごはんはどこか寂しげ。例えば豪快なイメージのミラノ風カツレツは、不倫をしている自分が本妻に叶わないと自覚させられる一品だったり。でも、どんなに寂しいときにもごはんが日常と分かち難いことにふと気づかされる。
(畠中美雨)
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宮下奈都
『誰かが足りない』
双葉文庫/本体528円+税
レストラン「ハライ」をとりまく人々の短編集。わくわく感が本から伝わってきて、私もハライに行きたくなります。このなかの一篇、「予約5」にはオムレツの話が出てくるのですが、現代のホロホロオムレツとは全く違うのがハライのオムレツ。気になっている女の子に「これはオムレツではない」と言われたらショックだろうな……。ぼんやりと優しく書かれる料理と、そのあとに残る不思議な甘さ、この感覚を味わってほしいです。
(品田遙可)
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寺村輝夫=作、岡本颯子=絵
『こまったさんのグラタン』
あかね書房/本体900円+税
今思うと、こまったさんの連れ合い・ヤマさんは困ったお方だ。普段料理は妻まかせで、上から目線だし態度はデカいし(夫婦仲は良好だけど)。その彼がこまったさんの夢世界以外で自発的に料理をするのが、「グラタン」巻と「シチュー」巻。なぜ冬に食べたくなる料理に限って、ヤマさんは自分で作るんだろう、と考えたら止まらなくなった。
(沼崎麻子)
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あまんきみこ=作、渡辺洋二=絵
『あまんきみこ童話集 1』
ポプラ社/本体1,200円+税
「冬のごはんが出てくる本」が思い浮かばず、本棚を探っていたら再会した一冊。思い出の本なのに、すっかりご無沙汰していた。節分の夜、心優しい黒おにの子ども「おにた」は、何も食べずに母親の看病をする女の子にごはんをあげる。喜ぶ彼女だったが……。優しく、温かく、だけどちょっと切ない、冬の夜にぴったりなお話。
(川柳琴美)
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ほしおさなえ
『菓子屋横丁月光荘 浮草の灯』
ハルキ文庫/本体680円+税
家の「声」が聞こえる青年が主人公の、穏やかであたたかい物語。埼玉県の川越にある「月光荘」が舞台となっています。「かわじま呉汁」は、川越の近くにある川島町の郷土料理で、すりつぶした大豆に芋がら、そして10種類以上のお野菜を入れた盛りだくさんな呉汁です。ちなみに「月光荘」シリーズ3作目にも登場します。
(徳岡柚月)
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小川糸
『あつあつを召し上がれ』
新潮文庫/本体400円+税
食べ物にまつわる短編小説が七つ収められている。かき氷もぶたばら飯も松茸ご飯も全部おいしそう。ページの隙間からにおいまで漂ってきそうな描写に、よだれが出てきた。おいしいご飯は人を幸せにする。でも人生は幸せなことばかりではない。優しく甘い話もあれば、つらくて苦い話もあって、お腹がいっぱいになった。
(北岸靖子)
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皆さんに得意料理はありますか。この本のエッセイの一節「こーちゃんのおみそ汁」に登場する呼春の得意料理はみそ汁です。誰にも簡単に作れそうなみそ汁がなぜ得意料理なのか。そこには重要な意味があるみたいです。人と人との絆を繋ぐ7つの食べ物の物語がここにはあります。ぜひ堪能してみてはどうでしょう。
(河本捷太)
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本当においしそう。あつあつだし、ほくほく! この方の書く料理には、愛が詰まっていると思う。料理の周りにいる人たちも、なんてきれいで温かいんだろう。「美味しい物を食べている時が、一番幸せなのだ。いやなこととか、苦しいこととか、その時だけは全部忘れることができる」他のお話も、すごく心がほっこりして、おいしそうな料理ばかりです!
(品田遙可)
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食べ物にまつわる短編小説が七つ収められている。かき氷もぶたばら飯も松茸ご飯も全部おいしそう。ページの隙間からにおいまで漂ってきそうな描写に、よだれが出てきた。おいしいご飯は人を幸せにする。でも人生は幸せなことばかりではない。優しく甘い話もあれば、つらくて苦い話もあって、お腹がいっぱいになった。
(北岸靖子)
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小川糸
『あつあつを召し上がれ』
新潮文庫/本体400円+税
皆さんに得意料理はありますか。この本のエッセイの一節「こーちゃんのおみそ汁」に登場する呼春の得意料理はみそ汁です。誰にも簡単に作れそうなみそ汁がなぜ得意料理なのか。そこには重要な意味があるみたいです。人と人との絆を繋ぐ7つの食べ物の物語がここにはあります。ぜひ堪能してみてはどうでしょう。
(河本捷太)
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本当においしそう。あつあつだし、ほくほく! この方の書く料理には、愛が詰まっていると思う。料理の周りにいる人たちも、なんてきれいで温かいんだろう。「美味しい物を食べている時が、一番幸せなのだ。いやなこととか、苦しいこととか、その時だけは全部忘れることができる」他のお話も、すごく心がほっこりして、おいしそうな料理ばかりです!
(品田遙可)
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夏目漱石
『吾輩は猫である』
新潮文庫/本体630円+税
お正月に食べる汁ものといえば、雑煮を思いつくだろう。雑煮が出てくる小説で有名な作品といえばこの作品だ。主人が正月に雑煮を食べているのを見た猫は試しに雑煮を食べたくなってくる。猫と雑煮に入った餅との格闘は読んでいてほほえましく面白い。雑煮のおいしさを猫に理解してもらえなかったのは残念である。
(田中匠)
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ブライアン・セルズニック〈金原瑞人=訳〉
『ユゴーの不思議な発明』
アスペクト文庫/本体952円+税
1940年代のパリを舞台に、少年ユゴーが父の遺したからくり人形に隠された謎を解き明かそうとする物語。緊迫したシーンの合間、主人公が寒さの中ひとりクロワッサンを食べる一瞬のシーンで、行間から彼の抱える孤独や、雪が舞うパリの景色が伝わってきて、印象に残っています。
(福田望琴)
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灰谷健次郎
『せんせいけらいになれ』
角川文庫/本体495円+税
初版は1965年に理論社より出版。これぞ小学生という自由すぎる詩・微笑ましい詩が満載。昭和の香りを感じ、切なすぎるエピソードに涙し、灰谷作品の元ネタを発見して懐かしくなったりも。食べ物が出てくる詩も多いのが小学生ならでは。特に2年生によるお雑煮とラーメンを描いた2編の詩では、のどごしや温かさがリアルに伝わってくる表現に脱帽!
(沼崎麻子)
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燃え殻
『ボクたちはみんな大人になれなかった』
新潮文庫/本体430円+税
牛乳シーフードカップヌードル。この単語がすでに悪魔的である。てらてらの脂肪分に満たされたジャンクフードの代名詞、カップヌードル。あまりにも不健康で、あまりにもうつくしく、あまりにも美味しい。寒い冬に、アツアツのスープと麺。もう、元の世界には戻れないかもしれない。
(末永光)
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山口つばさ
『ブルーピリオド 1〜8』
講談社/①〜⑥本体630円+税、⑦・⑧本体660円+税
主人公が、勉強終わりにラーメン屋に行くシーンがある。苦しみながらも闘っている受験勉強のさなかで、親友と食べるラーメンの味、想像を絶する美味しさだろう。頑張っている時のご飯ほど美味しいものはない。頑張った今日くらいは、夜中にラーメンでも食べに行きましょう。
(末永光)
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荻原規子
『RDGレッドデータガール 6
星降る夜に願うこと』
角川文庫/本体680円+税
特殊能力者たちが繰り広げる学園ファンタジー『RDGシリーズ』(一応の)完結作である本書は、一作目からやきもきしてきた読者にとって待ち焦がれた一冊だ。その大事なシーンに登場するのがココアである。料理に含まれるのかという点には目をつぶっていただき、冬になると無性に飲みたくなるココアを片手に、ぬくぬく装備で読んでほしい。
(川柳琴美)
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宮下奈都
『静かな雨』
文春文庫/本体560円+税
松葉杖の男性がたいやき屋を営む女性と出会い、親しくなるが、女性は交通事故の後遺症で新しい記憶を留めておけなくなってしまう。楽しいこともつらいことも全部忘れてしまうのは、どんな感じだろう。想像すると、濃霧の中でさまよっているようなもどかしい気持ちになった。息苦しくてどこか切ないラブストーリー。
(北岸靖子)
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村上春樹
『風の歌を聴け』
講談社文庫/本体450円+税
表紙に「WHITE CHRISTMAS」と書いてあるし……という言い訳はさておき、変わり種を。それがこの“焼き立てのホット・ケーキ”を“深い皿に何枚か重ね、ナイフできちんと4つに切り、その上にコカ・コーラを1瓶注ぎかけ”たもの。“食事と飲み物が一体化している”という利点を含めても、変わり種好きの私もトライする気にはならないが、話のネタにはなるかも?!
(畠中美雨)
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柚木麻子
『BUTTER』
新潮文庫/本体900円+税
“熱いバターが砂糖と醤油を溶け合わせ、ほの甘く柔らかく形のない塊に絡みついて、輪郭を得ようと泳ぎだす。バターの脂っこさと砂糖のしゃりしゃりとした食感、醤油の強い味が一つになる”。こんなに食欲がそそられる文は初めてかもしれない。今年のお正月、間違いなくわたしはこのお餅を食べるでしょう。
(北田あみ)
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江國香織
『やわらかなレタス』
文春文庫/本体580円+税
おいしい情景について風味豊かにつづられたエッセイ集。「ニューヨーク・大雪とドーナツ」の一節を読むと、雪に覆われたニューヨークの景色とともに、寒い日に頬張るドーナツのあたたかさ、サクッとした食感が浮かび上がってきて、お腹がすくこと間違いなし。
(福田望琴)
■選書・紹介:『読書のいずみ』
委員・読者スタッフ