音楽のいずみ②

日本の80年代を彩った
2大フュージョンバンド

 先日、ジャズピアニストとして活躍していた和泉宏隆さんの訃報が飛び込んできました。今年の2月に世界的に有名なジャズピアニストであるチック・コリアが亡くなったことも衝撃だったのですが、和泉さんの楽曲は個人的にもよく聞いていただけにショックは大きいです。和泉さんは1982年から1998年までの間、THE SQUARE(現T-SQUARE)というバンドのピアニストとして活動していたことでよく知られています。
  今回は1980年代に一世を風靡した2大バンド、T-SQUAREとCASIOPEAをご紹介していきます。この2つのバンドの共通点は、ジャズとロックを融合させたフュージョンと呼ばれる音楽を演奏し、基本的に楽器だけで演奏を披露しているという点にあります。今ではボーカルがない楽曲がヒットチャートに入るなんてことは想像できませんが、当時はフュージョンバンドが生放送の音楽番組に出演したり、ドームで単独ライブを行ったりなど、世間でもかなり高い人気を誇っていました。
 T-SQUAREはTHE SQUAREというバンド名で1978年にデビューをしました。バンドのスタイルとしては、ボーカルの代わりにサックス奏者の伊東たけしさんがフロントを務め、ギター、ベース、キーボード、ドラムスがバックで支えていることが特徴です。T-SQUAREの音楽で1番有名な楽曲は「TRUTH」。こちらはF1のテーマソングとしてよく使われていました! テレビのバラエティ番組などでも頻繁に流れているので、皆さんも一度は聞いたことがあると思います。先日、デビュー当時からバンドリーダーであったギタリストの安藤正容さんが引退を発表しましたが、バンドは現在でも精力的に活動を続けています。おすすめアルバムは『ADVENTURES』(1984年)。中でも「ALL ABOUT YOU」と「TRAVELERS」はビールのCMに起用されたことで、お茶の間にSQUAREの名前が知れ渡るきっかけにもなったと言われています。これらの楽曲で使用されているウインドシンセサイザーは、サックスのような形をした電子楽器で、一度聴いたらなかなか忘れられない音をしていることから、T-SQUAREの代名詞となっています。個人的には「ALL ABOUT YOU」を聞きながら海辺でドライブなんかもしてみたいです。もう1つのおすすめアルバムは1985年の『R・E・S・O・R・T』。特に1曲目の「OMENS OF LOVE」はSQUAREの代表曲にもなっており、ライブでも頻繁に演奏されています。吹奏楽版の編曲も有名であるため、学生時代に吹奏楽部に所属していた方はご存知だと思います!
 そんなT-SQUAREと人気を二分していたバンドがCASIOPEAです。彼らは1979年にデビューをし、度重なるメンバーチェンジを経て、現在ではCASIOPEA 3rdというバンド名で活動を続けています。CASIOPEAの特徴は超越した楽器のテクニックです。バンドの編成はギター、ベース、キーボード、ドラムというシンプルな構成ですが、メンバー全員の演奏技術がかなり高いため、4人だけで演奏したとは思えないような楽曲が多いです。特に、デビューアルバム『CASIOPEA』は必聴です! 1曲目の「Time Limit」からメンバー4人の超絶技巧が輝いています。ドラムとベースが作り出す複雑なリズムの上に、キーボードとギターが奏でるソロは、今の時代でもかなり斬新なサウンドに聞こえるかもしれません。このデビューアルバムには「スリル、スピード、スーパー・テクニック」という帯が付けられ、このキャッチコピーはCASIOPEAの代名詞にもなりました。普段から楽器を手に取っている方でも、これらの楽曲をコピーすることはなかなか難しいのではないかなと感じます。そして、私が特にオススメするアルバムは『CASIOPEA recorded LIVE and BEST』。こちらは80年代のヒット曲を集めたベスト盤とライブ盤を合わせたものです。この中でもオススメの楽曲は「LOOKING UP」。こちらは伝説となった1983年の日本武道館公演でのライブ盤が収録されています。当時のライブ映像を見てみると、女の子の声援が鳴りやまない中、バンドメンバーが笑顔で演奏しており、アイドルのような人気を博していたことを伺えます。また、「GALACTIC FUNK」はスピード感溢れる楽曲で、メンバーそれぞれのソロにはかなり度肝を抜かれます。ライブで録音したとは思えない高いクオリティであるため、「スーパー・テクニック」を体験するにはもってこいの1曲です!
 T-SQUARE、CASIOPEAはどちらも海外でも演奏活動をしており、そのテクニックは世界レベルで評価されています! 2003年にはCASIOPEAとT-SQUAREの初代メンバーと新メンバーが集まり、合同でライブを開催したことはフュージョン界の中でも歴史に残っています。この2つのバンドメンバーはそれぞれ卓越したテクニックを持ったミュージシャンであるため、様々なアーティストのバックバンドで演奏したり、大人気ゲーム「マリオカート」のBGMを演奏していたりなど、私たちの身の回りで流れている音楽に携わっていることが多いです!
 皆さんも是非T-SQUAREとCASIOPEAのアルバムを聞いて、今のポップスとは一味違うような斬新なサウンドを体感してみてください!
 
P r o f i l e
戸松 立希(とまつ・たつき)

慶應義塾大学4年生。クラシックピアノが趣味ですが、聞いている音楽は英国ロック、ジャズ、J-POP……といわゆる雑食系。最近は伝説のロックバンドBOØWYにハマっています。


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