リレーエッセイ
内田 充俊(読者スタッフ・東京経済大学3年生)

P r o f i l e

内田 充俊(うちだ・あつとし)
読書のいずみの末席を温めております、東京経済大学3年生の内田です。冬めく風を感じながら、まだまだアイスが食べられる時期だと温度計とコンビニのピノを見比べる日々。先日、秋晴れを見計らって洗濯物を干すものの、風に飛ばされて白いシャツに泥が付いていました。やけ食いでピノを食べました。
 
 ひんやりと乾燥した風とか、駅までの道に咲くコスモスとか。そんな風物詩の何やかんやで季節の変わり目に気付く丁寧な視点の持ち主でありたいと思いながら、スタバの季節限定でしか季節の転換を意識できない。
 締切を翌日に控えた原稿が書けなさすぎて訪れたスターバックスにて、期間限定のお芋のフラペチーノをすすって口の周りをクリームまみれにしながら、そんなことを嘆いた。
 振り返れば大学生になって、1年生の半年間、まるで麻疹にかかったように、ビジネス書と自己啓発書にかぶれていた。そのやや赤面する青春に読んだ一冊に、「できる人は、仕事が早い」との一文があった気がする。締切前日にこの「リレーエッセイ」の原稿に、慌てて手をつける僕は、胸を張って仕事ができない人間代表を名乗ることができる。胸を張ることではないけれど。
 ところで試験前に気がつくと漫画を読み耽ってしまった経験のある人は多いだろう。僕もそんな意志弱き人間である。大学のレポート課題でも、『izumi』の原稿でも、締切を前に、書けない自分に苦悩する。そして資料を探すつもりが、ふと正気に戻ると、足元に読みさしの本と漫画が散乱している惨事が発生するのである。今日(締切前日の午前中)がまさに、そうだった。それゆえにスタバまで足を運んだわけである。だから、今、ここにいる。
 世の中にはいろいろな本があるもので、『〆切本』という、夏目漱石から村上春樹に至るまで文豪たちの原稿締切に間に合わない言い訳を蒐集した本が存在する。個人的には、「かんにんしてくれ給へ どうしても書けないんだ……」、「鉛筆を何本も削ってばかりいる」という言い訳が特に、苦悩を煮詰めた呻吟の叫びがひしひしと伝わってきて好きである。いまの僕も何か名言に残りそうな言い訳を叫びたい。スタバの床に寝転がって幼児のように手足をジタバタさせて現実逃避したい。しかし、残念ながら往々にして名言で重要なことは、何を言ったかではなく、誰が言うかである。言い訳をしたところで、記録にも残らなければ、僕が干されて終わりである。現実は無常だ。だから書く。次回の原稿を書く僕にお願いです、どうか、「直前にやればいけるやろ」という根拠のない自信は持たないで下さい。そして、生まれ変わったら、締切などない自由な世界で、狂気を捨てたい、以上、内田充俊でした。
 

次回執筆のご指名:光野 康平さん

169号では「座・対談」では初めてのインタビュアーに挑戦し、大活躍だった光野さん。普段も企画の提案に積極的に参加してくれる、頼もしいメンバーの一人です。光野さん、自己紹介を兼ねて最近の関心事をぜひエッセイに綴ってください。(編集部)

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