1970年3月に
Love Storyという本がアメリカで出版されました。この本は、アメリカ国内だけで1200万部を売り切るという大ベストセラーとなりました。小説と映画が同時進行で制作され、小説が出版されて数週間後に映画が公開されました。この映画は、日本では『ある愛の詩(うた)』というタイトルで上映され、「愛とは決して後悔しないこと(Love means never having to say you're sorry)」という名台詞が公開当時流行語になりました。今回は、その原作と、原作を1000語レベルの見出し語で書き下ろしたオックスフォード出版の本を紹介します。
この物語は、大富豪の家庭で生まれ育ったハーバード大学法学部の学生オリバーと、イタリア系移民の菓子屋の娘で、貧しい家柄で苦学してラドクリフ大学(ハーバード大学関連の女子大学)に入学し音楽を専攻するジェニーが、図書館で出会うところから始まります。二人はすぐに恋に落ちます。そして、大学卒業後に、二人は結婚することを決意します。しかし、オリバーの父親は、オリバーがジェニーと結婚することに対して次のように反対します。
“But what do you
think, Father?”
“I think Jennifer is admirable. And for a girl from her background to get all the way to Radcliffe girl …”
“Get to the point, Father!”
“The point has nothing to do with the young lady,” he said, ...“She is not many things.”
“She is not many things.”とは、「あの女子学生は多くのものじゃない」(上流階級の出でもなければ、アングロ・サクソン[英語を母語とする白人]でも、父親が有名人……というわけでもない)という意味です。
オリバーと父親との間の確執は、以前からずっと続いていました。オリバーは父親の反対を押し切りジェニーと結婚するために、親からの一切の援助を断ります。そのため、ジェニーはオリバーが法科大学院に進むため、パリへの音楽留学の夢を諦め、ハーバード大学の学費と生活費を小学校の教師をして稼ぐことになります。このような結婚生活が続くことを覚悟して、二人は結婚式を挙げます。結婚式に、ジェニーの父親は呼ばれましたが (母親は亡くなっている)、オリバーの両親は招待されませんでした。結婚式で二人は互いに見つめ合い、自らの想いを有名な「詩」を朗読して贈りあいます。ジェニーがオリバーに捧げた詩は、次のように始まります。
When our two souls stand up erect and strong,
Face to face, silent, drawing nigh and nigher,
Until the lengthening wings break into fire
At either curved point …
われらの魂 真直ぐに力満ちて立上がり
相向い、黙して、ひたと相寄るとき
さし伸べし翼、弧を描きしそのきわみ
炎となりて燃ゆるまでに【訳:上岡弘二=注解『LOVE STORY ある愛の詩』(英光社)より】
みすぼらしいアパートで新婚生活をスタートさせ、苦労を重ねて、ついにオリバーは優秀な成績で大学院を卒業して弁護士の資格を取得します。そして、ようやく生活が楽になりはじめ自由な時間を享受できるようになったころ、二人にある悲劇が訪れます。
この小説の中に“Love means never having to say you're sorry”という台詞が何度か登場します。この台詞が、どのような場面で、誰が誰に向かって、どういう意味で述べられているか、ぜひ本書を手に取って読んでみてください。
原作の英文は少し難しいので、詳しい注解がついた英光社の本 (残念ながら絶版) を手に入れて原作を読むか、オックスフォード出版の本を読んでから原文を読むとよいでしょう。原作でなくても、英語で十分にストーリーを味わうことができます。
今回ご紹介の本
- Erich Segal
Love Story
(Oxford Bookworms Library)
定価786円(税込)
9780194791229
- Erich Segal
Love Story
Hodder & Stoughton
9781444768381
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P r o f i l e
水野 邦太郎(みずの・くにたろう)
千葉県出身。江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授。博士(九州大学 学位論文.(2017).「Graded Readers の読書を通して「主体的・対話的で深い学び」を実現するための理論的考察 ― H. G. Widdowson の Capacity 論を軸として ―」)。茨城大学 大学教育センター 総合英語教育部准教授・福岡県立大学人間社会学部准教授を経て、2018年4月より現職。
専門は英語教育学。特に、コンピュータを活用した認知的アプローチ(語彙・文法学習)と社会文化的アプローチ(学びの共同体創り)の理論と実践。コンピュータ利用教育学会 学会賞・論文賞(2007)。外国語教育メディア学会 学会賞・教材開発(システム)賞 (2010)。筆者監修の本に『大学生になったら洋書を読もう』(アルク)がある。最新刊『英語教育におけるGraded Readersの文化的・教育的価値の考察』(くろしお出版)は、2020年度 日本英語コミュニケーション学会 学会賞・学術賞を受賞。
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