世界の本棚から⑬

 

Harmony Becker
Himawari House
Macmillan USA
ISBN:9781250235572購入はこちら >

 海外でグラフィック・ノベルと呼ばれる漫画。
 日米ハーフのナオは幼いころに日本からアメリカに引っ越して育った。外見や習慣をからかわれた彼女はアメリカ人になりきれないと感じて母国日本にほのかな憧れを持ち、大学を休んで日本へ留学を決める。タイトルになっている東京郊外のシェアハウスで暮らすことになったナオは韓国人のへジョン、シンガポール人のティナと出会って意気投合。初めての夏祭りを楽しんだり、言葉の壁や文化の違いに悩んだりしながら友情を深めていく。
 
 三人にはそれぞれに国を出たいと強く願う理由があった。ナオはアメリカ人になりきれず日本なら居場所が見つかると期待するが、日本語が殆ど話せないので早速疎外感を味わう。へジョンは韓国の厳しい両親の束縛と期待、また過去の恋愛でトラウマを抱えているし、ティナはみんなより年上なのにまだ目標が見つからず焦っている。そうした傷つきやすい部分をお互いに思いやりながら少しずつ日本に慣れ、家族のように仲良くなる三人の日常に引き込まれてしまった。
 
 そして異文化交流を見事に表現しているのがこの漫画の吹き出しだ。英語・日本語の併記のセリフもあれば、へジョンの母国語の韓国語だったり、ちゃんぽんで喋った時の臨場感がたっぷりだ。全編英語だけの本より少しとっつきやすいので、ぜひ手にとっていただきたい。

 
 

Susan Cain
Bittersweet
Crown Publishers
ISBN:9780593443392購入はこちら >

 YouTubeでも活躍中のSusan Cainは弁護士資格を取得しながら夢だったライターになった人物。原題Quiet (邦訳『内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力』講談社)では外交的に見えるアメリカ人の1/3が実は内向型であること、ビル・ゲイツなど成功者の多くがシャイな内向型であるなど驚きのデータを出している。
 
 数年ぶりとなる新刊のタイトル「ビタースウィート」はお菓子で言うならほろ苦さだが、この場合は悲しみと喜びが入り交じった状態を呼ぶ。ケインは学生のころにレナード・コーエンの物悲しい曲を聴いて不思議な高揚感を感じたそうだ。なぜ悲しい音楽で高揚感を感じる事があるのか、逆に美しいものを見て切ない気持ちになるのはなぜ? 個人的な疑問を解くためケインは優秀な精神科医から一流のバイオリン奏者、神秘主義の指導者など様々な人に会う。人は生きていればいつか悲しみを経験するが、その悲しみを温かく抱えながら前を向くことができて、そのほんの少しの「ほろ苦さ」が人生を輝かせることもある、と説く著者。とても大事なメッセージを含んでいるように感じた。

 
P r o f i l e

角 モナ(すみ・もな)

海外に30店舗持つ書店チェーン・紀伊國屋書店で洋書仕入に携わるバイヤー。子供のころはインターナショナルスクールで学び、洋書は日常生活の一部。

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