Reading for Pleasure No.51

「母語が異なる者同士の共通語(English as a lingua franca)」でSDGs を学ぼう!

水野邦太郎
 SDGs とは Sustainable Development Goals (持続可能な開発目標)の略称です。2015年9月の国連サミットにおいて、国連加盟193カ国が2016年から2030年の15年間で達成すべき目標として採択されました。すなわち、地球の未来のために世界全体が共有している目標が SDGs です。そのような世界的規模の目標と現状を、世界中で母語が異なる者同士が共通語として使う英語で学ぶのにイチオシの本が、今回紹介する『大学生のためのCNNニュース・リスニング:SDGs編』です。

 本書は、SDGs が掲げる17の目標(GOAL)を考える切り口として、世界最大のニュース専門メディアCNNの放送から選りすぐりのニュースを取り上げています。目次は、GOAL 1〜 3を例にとると、次のような構成になっています。

GOAL 1: No Poverty 「貧困をなくそう」 
 Shocking Report on Poverty in the U.S. 「4000万の米国人が貧困生活という衝撃」
GOAL 2: Zero Hunger 「飢餓をゼロに」
 Unexpected but Deserved「世界食糧計画」がノーベル平和賞受賞
GOAL 3: Good Health and Well-being 「すべての人に健康と福祉を」
 Drug-Resistant Malaria Spreading「薬剤耐性マラリアが東南アジア全域に」

 ひとつのニュースは1分ほどの長さで、ニュースの「生の映像」を朝日出版社のホームページで無料で視聴できます。ニュースのスクリプトは本書で確認できます。例として、GOAL 1をみてみましょう。

“Shocking Report on Poverty in the U.S.”というニュースで使われているキーワードや難しい語句に「語注」がつけられています。例えば、UN Human Rights Council:国連人権理事、withdraw from:〜から脱退する、a third of:〜の3分の1、income inequality:所得格差、Western countries:西洋諸国。

 ニュースは映像つきの「ナチュラル音声」だけでなく、「ゆっくり音声 (ポーズ入り)」の音声ファイルも出版社のホームページからダウンロードして聞けます。

 何度か聞いたあと、ニュースの自分の理解をチェックするために、次のような設問が用意されています。例えば、1.According to the report, what percentage of the U.S. population lives in poverty? (A)Around 4 percent,(B) More than 12 percent,(C) About 20 percent,(D) Nearly 32 percent

 ニュースは、次のように「意味のかたまり」ごとに示されているので、目で見ながら英文の意味を理解するのに便利です。

A shocking report on poverty in the United States/
「米国の貧困について衝撃的な報告書が」
will be presented to the UN Human Rights Council/
「国連人事理事会に提出されます」
Thursday.// 「木曜日に」

 ニュースの内容を理解したら、ニュースの映像やゆっくり音声ファイルと「同時」に音読する「オーバーラッピング」を実践します。強弱をつけながら音読してスラスラと意味がとれるようになったら、次に「シャドイング(shadowing)」をします。「シャドイング」とは、英文を見ずに音声が聞こえた2秒後くらいに、聞いた英文をリピートして追いかけることです。シャドイングは最低「10回」、通学時間など「定期的なスキマ時間」を使い、「ニュースキャスター」にすっかりなったつもりで行いましょう。この「成り切る」ことを、ぜひ楽しみましょう。17のニュースがスラスラとシャドイングできるようになると、日々のニュースを英語で聞く力が抜群に伸びているはずです。英文を読むスピードも向上しているはずです。

 ニュースの英文の後に「ニュースのミニ知識」とGOAL 1に関する「SDGs のミニ知識」「GOAL 1に関連した語彙リスト」が用意されています。ここを熟読することで「米国の経済格差」や世界規模の「貧困」問題に対する理解を深めることができます。

 本書を通じてSDGsの「世界規模」の現状を知り、「日本の現状はどうか」を調べていくと、SDGsが「自分の身近なこと」と関連していることが見えてくるでしょう。ぜひ、SDGs を切り口に「過去の自分」を振り返り「これからの自分」は何を学び、何をするべきかを、大学の講義やゼミで仲間と一緒にディスカッションして欲しいと思います。
 

今回ご紹介の本

CNN English Express編集部=編
『大学生のためのCNNニュース・リスニング:SDGs編』
朝日出版社
定価1,320円(税込)
ISBN:9784255156934購入はこちら >
 

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P r o f i l e

水野 邦太郎(みずの・くにたろう)

千葉県出身。神戸女子大学文学部教授。博士(九州大学 学位論文.(2017).「Graded Readers の読書を通して「主体的・対話的で深い学び」を実現するための理論的考察 ― H. G. Widdowson の Capacity 論を軸として ―」)。茨城大学 大学教育センター 総合英語教育部准教授、福岡県立大学人間社会学部准教授、江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授を経て、2022年4月より現職。

専門は英語教育学。特に、コンピュータを活用した認知的アプローチ(語彙・文法学習)と社会文化的アプローチ(学びの共同体創り)の理論と実践。コンピュータ利用教育学会 学会賞・論文賞(2007)。外国語教育メディア学会 学会賞・教材開発(システム)賞 (2010)。筆者監修の本に『大学生になったら洋書を読もう』(アルク)がある。最新刊『英語教育におけるGraded Readersの文化的・教育的価値の考察』(くろしお出版)は、2020年度 日本英語コミュニケーション学会 学会賞・学術賞を受賞。

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