気になる!和菓子

 
 パリっと頬張るチョコレート、濃厚クリーミーなチーズケーキ、キラキラ輝くフルーツたっぷりのパフェなんて、神さまの食べ物って感じがしませんか。
 こんにちは。思いつくまま大好きな甘いものたちを挙げてみました。あなたのお気に入りはなんですか。
 ところで、上記のものって全て洋菓子なんですよね。なんだか個人的に、身の回りの甘いものって洋菓子が多い気がして。コンビニでふと手に取ってしまうドーナツだったり、友達と喫茶店で食べるプリンだったり。
 でも。あんこも、大好きなんです! 桜、紫陽花、紅葉、梅。四季を甘いもので表現するなんて、発想が素敵すぎる。それぞれの季節の風景の中で、光に照らされきらめく、繊細で優美な和菓子たち。風物に見立てられた彼らは、微かな息づかいまで感じられそう。
 

和菓子と京都と物語

 

 ところで私は今、京都で下宿しています。京都には、和菓子屋さんが沢山あります。自転車を漕ぐたび、「あ、ここにも」と。和菓子屋さんって佇まいがスッとしていて風情があって、憧れなんですが、一介の学生が入っていいのかな、とちょっと緊張してなかなか入れなくて。でも! せっかくそこに美しく可愛く美味しい和菓子たちがいるのに、もったいない! 出会いたい!
 ということで、今回は京都を舞台にした物語の軌跡を辿りながら、和菓子のご紹介をしていきます。和菓子と物語の素敵な味わいを、一緒に楽しんでいただけると嬉しいです。
 

『であいもん』

 

 『ヤングエース』で連載中の『であいもん』。
 舞台は京都の和菓子屋「緑松」。1人息子の納野和は、大学卒業後、ミュージシャンを夢見て実家を飛び出し、上京。バンド活動をしながら10年間東京で暮らしていたが、実家からの手紙で父が入院したことを知らされ、店を継ぐ決意をし、実家へ戻る。ところが、彼が不在の間に、雪平一果という少女が店で看板娘として働いていて――
 というのが1話のあらすじ。緑松のご主人と女将さん(つまり和の父母)を慕うも、二人暮らしだった父に緑松に預けられ、置いていかれた寂しさから心を閉ざしがちだった一果ちゃんが、お調子者だけどとっても温かい和さんと交流していく中で、少しずつ色々な表情を見せてくれるようになって、どんどん周りの人たちの輪も広がっていきます。
 登場人物たちも、チャーミング。和さんは和菓子たちが大好きすぎて、買われていく彼らを見送るたび「おいしく食べてもらうんやで〜!」と泣くし。一果ちゃんはくるくる働く本当にしっかり者の頑張り屋さん。和さんに対してツンデレなところがすごくかわいくて大好きです。他の人たちも個性豊かで、それこそ和菓子を作るときのように丁寧に描かれています。昨年アニメ化され、そちらも原作エピソードを愛を込めて拾い上げられていることが伝わる素敵な作品。色合いが優しくて、癒やされます。一果ちゃんと緑松のアルバイトの美弦ちゃんの声優さんが『であいもん』で登場する和菓子を京都の和菓子屋さんで作るYoutubeの企画もおすすめです!
 さて、ここからは和菓子パート!
 
 
 

よもぎ薯蕷饅頭

 アニメ1話で登場。よもぎ薯蕷饅頭は、すりおろしたつくね芋、砂糖と米粉を合わせた生地によもぎを練りこみ、餡を包んで蒸しあげたお饅頭。一果ちゃんがあるトラブルに巻き込まれ、よもぎ薯蕷饅頭100個を手売りする事態に。一人奮闘する一果ちゃんの元に和さんが颯爽と(?)現れ、歌う! 「そこのお姉さん! あんこは美容にええんやで!
 小豆には食物繊維にポリフェノ〜ル。女性に不足しがちな鉄分ちゃんもしっかり取れるんやで〜! ついでに〜、カロリーオ〜フウ!」はい、ここ重要テストに出ます!
 

 

うぐいす餅

 アニメ1話で登場。「京菓子司 俵屋吉富」さん(京都・烏丸 「であいもんと巡る京都和菓子ツアー」参加店舗)で頂いてきました。青みがかった、優しい黄緑色の鶯を模したお餅。上にきな粉がふりかけられていて、鴨川のベンチで取り出すと、日光できらきら輝いて、綺麗で、じーんとしてしまいました。それに本当に美味しい! 餡は粒の食感となめらかさが混在して、甘さが絶妙! 絶対にまたこのお店の和菓子を頂こう……と決意しました。
 

 

下萌

 原作21話に登場。「下萌」とは、寒い冬を越して雪の下から新芽が芽吹いた様。つまり「希望に向かう姿」でもある。この回である人物が語る、和菓子を「見て考えて 食べて考えて 余韻で考えて ああ美味しかったって思った時にはモヤモヤも片付いてるんや」が、真髄を表わしているなと感じます。「紫野源水」(京都・北大路)さんの下萌、餡が白く、粒あんがシャクシャクで、雪を踏みしめるようで楽しかったです。柔らかい黄緑に春を感じます。
 

 

栗饅頭

 栗ManJu! 和さんは栗の被り物を被ってバンドで演奏していたのですが、そのバンド名が栗ManJu。あのドから始まる国民的漫画の栗饅頭回がモチーフ。宇宙を支配する栗饅頭ってロマンですよね。そして実はこの和さん思い出の栗饅頭、なんと「山科鳴海餅」(京都・山科)さんとのコラボ商品として販売されていたんです! 私事ですが、『であいもん』は受験生時代にお守り代わりにしていたすごく大切な作品で、中でもこの栗饅頭回が大好きです。なので『であいもん』のイベントでこの栗饅頭を買えて、本当に幸せでした。
 
 和菓子も『であいもん』も語り足りない!魅力的な和菓子、お話が他にも沢山詰まっている『であいもん』の世界を皆さんにもぜひ訪れてみてほしいです。そして、世界の風景、情感を切り取った、優美な和菓子の世界にも。
 

BOOK
  • 浅野りん
    『であいもん 1』
    KADOKAWA
    定価638円(税込)購入はこちら >  お話も絵も、優しくて繊細で和菓子みたい。くすっとしてしまう所やじわっとくる所、色々な情感が詰まっています。季節が巡るたびに読み返したくなる作品です。(アニメ2期、待ってます!)
  • 藤井清美
    『京大はんと甘いもん』
    KADOKAWA
    定価1,760円(税込) 購入はこちら >  京大×和菓子×タイムスリップ。友情と恋に胸がときめき、仲間の命を救うため奮闘する姿にグッときます。そして美味しそうなお菓子たち! 実際にあるお店が登場しているのでぜひ聖地巡りしてみてください!
 
執筆者紹介
 

徳岡 柚月(とくおか・ゆずき)

京都大学大学院農学研究科修士1回生。今回の企画に背中を押してもらい、たくさん和菓子屋さん巡りができてすごく幸せでした!書き切れませんでしたが、他にも柚羊羹や唐板など色々作中の和菓子に出会え感激でした!

*「気になる!○○」コーナーでは、学生が関心を持っている事柄を取り上げていきます。


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