読書で世界一周③

「探検記&歴史改変小説」編

 今回は、探検記と歴史改変小説を紹介します。ゴビ砂漠をラクダのキャラバン隊で探検。スペインがインカ帝国を、ではなく、インカ帝国がスペインを征服!など。ぜひ読んでみて下さい。

 

『ゴビ砂漠探検記』

スウェン・ヘディン〈梅棹忠夫=訳〉
『ゴビ砂漠探検記』
河出書房新社/定価2,750円(税込) 購入はこちら >

 2022年9月から河出書房新社より刊行が始まった「世界探検全集」シリーズ(復刊)の第12巻にあたります。刊行時から非常に気になっていたのですが、なかなか着手できずにいました。
 しかも、本シリーズは、『世界最悪の旅』『東方見聞録』『石器時代への旅』『アマゾン探検記』『ニジェール探検行』『恐竜探検記』『エベレスト登頂』『アジア放浪記』『アフリカ探検記』が既に刊行済み。アマゾン、アフリカ、エベレスト、アジア、恐竜など、どこから読書で探検しようかとまずは、そこで迷ってしまいました。
 そんな中、シルクロードに憧れがある私が選んだのが本書と9巻にあたる『黄河源流からロブ湖へ』です。前者は、スウェーデンの探検家、後者はロシアの探検家によるものですが、中国国内の政治的対立、匪賊の出没、ラクダの反乱、現地の風俗などの記述は共通点もありました。探検の地理的要素以外も非常に興味深かったです。
 

 

『文明交錯』

ローラン・ビネ〈橘明美=訳〉
『文明交錯』
東京創元社/定価3,300円(税込) 購入はこちら >

 スペインがインカ帝国を、ではなく、インカ帝国がスペインを征服するというその内容が興味深かったからこそ、手にとった本書。とはいえ、そのような大胆な発想にも拘わらず、描かれ方は、思いの外落ち着いているのが本書の特徴かもしれません。
 特に、インカがヨーロッパを征服していく過程はかなり現実的。急進的ではない過程に、私は結構はまりました。例えば(ここからはネタバレ的になるので書くのは控えたい所ではありますが)本書のヨーロッパ支配の主役は、歴史的にはスペイン側に捕らえられてしまうアタワルパになっています。
 また、当時はレコンキスタ(1492年)や宗教改革(1517年)が起こった時代ですが、アタワルパが優遇したのが当時スペインで迫害されていたユダヤ人勢力でした。
 果たして、当時のヨーロッパの権力者カール五世や宗教改革の波に、アタワルパはどのように対峙していくのでしょうか?
 ちなみに、コロンブス、セルバンテス、エル・グレコなども登場する本書は、本屋大賞第1位(翻訳小説部門)を獲得した『HHhH―― 1942年』などの著者による作品です。
 
執筆者PROFILE
重松 理恵(しげまつ・りえ)
 2004年入協。広島大学、東京大学、名古屋大学生協など各大学生協での書籍担当者を経て、現在、大学生協事業連合書籍商品課に在籍。著書に『東大生の本の使い方』(三笠書房)、最新刊は『読んで、旅する 海外文学』(大月書店)がある。


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