レギュラー企画『読書のいずみ』読者スタッフの読書エッセイ。本と過ごす日々を綴ります。
慶應義塾大学4年生 手賀梨々子
6月19日

今日は風が気持ちよくて、なんだか吉本ばななを読みたくなる気分。キャンパスでは外で昼寝している人を見かけた。気持ちよさそうだったなー。最近練習した合唱曲の歌詞に出てくる言葉がタイトルだったので、びびっと反応した『
アムリタ』(吉本ばなな/新潮文庫)。あとがきの中に、吉本さんにとって人生がつらい時期にこの本を執筆したということが書いてあった。つらいことがあっても、それはずっと続くわけではない。だからこそ、水をごくごく飲むように、先にある何かを求めるように生きていくのだというところが私の中で納得感があった。
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6月20日

175号で紹介されていた『
美女と竹林』(森見登美彦/光文社文庫)。幼い頃、タケノコ掘りに行った時のことを思い出した……。久しぶりに祖父の実家の竹林に行ってみようかな。それにしても、森見さんの文章は、読むと元気になるからいい。たしか、大学1年の時も、夏バテしそうな時期に『四畳半タイムマシンブルース』(角川文庫)を読んでたくさん笑ったなあ。でも、大学近くの古本屋で手に取った『きつねのはなし』(新潮文庫)には背筋がぞくぞくして、購入したものの手元に置いておけず、母に預けてしまうくらいにこわかった。
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6月21日
以前紹介されていた、浜島書店の英文メールマガジン「
じゃれマガ」。今日のテーマは語学学習において、よくない3つのPについて。Passiveness、Perfectionismそして Pride。新しいことを学んだり、何かに挑戦する時は、恥ずかしい気持ちよりも突き進む気持ちを大事にしないとなと、朝から前向きになれた。
6月25日

今日は真夏日! 上野にマティス展を見に行った。涼みに入った書店で『
52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ/中公文庫)を購入。ずっと気になっていて、文庫本になるのを待っていたのだ!
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6月29日
『52ヘルツのクジラたち』読み終わり。
心の状態と言葉との関係性に注目した。自己肯定感が低くなると話し方も弱々しくなったり、ショッキングな経験から言葉を口にすることのハードルが高くなってしまったりと、言葉にはその人の「今まで」が表れるのだなと感じた。言葉と言葉の間や声のトーンから読み取れることもあるだろう。対面で会って話すことは、相手の気持ちを知るためにとても重要なことだと思う。
信州大学大学院 山崎ひかり
5月中旬:推しと時間

とあるアイドルグループが好きな友達に誘われて、カラオケでライブ鑑賞会をした。私は詳しくなかったので、友達がメンバー全員の魅力を語ってくれた。おかげで、私もそのアイドルにどぷどぷとハマった。
今の世の中は、見るべきコンテンツが多すぎて、全てを追いきれない。私の知らないところで、知らないコンテンツが盛り上がっている。どれも追いかけたいけれど、それには何より「時間」が足りない。
そんなことを考えていた頃に出会ったのが、『
スター』(朝井リョウ/朝日文庫)である。コンテンツの多い今の時代に、時間をかけ、こだわり抜いた作品はどれだけ注目してもらえるだろうか。対し、誰もが発信者となれる配信動画やSNSは、無料で手軽に見ることができるし、量産も多い。このどちらに、どんなことに、どんなふうに、私の「時間」を使おうか。そんなことを考えさせられる『スター』の時間だった。
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6月上旬:押し花の写真集

私はつい積読をしてしまうタイプで、常に5冊以上、机の上に待たせている。久しぶりにその山を小さくしようと思った時、最初に読むのはやはり、詩集や画集のような、言葉が少なめの本だ。
薄くて大きいがために、下の方に積んであった『
テロメア』(永石勝/木楽舎)は、色鮮やかな花々を押し花にした写真集である。1ページごとめくっては、美しい、美しい。なぜこんなにも美しいのか?
写真に添えられた文章から、赤坂BLITZというライブスタジオの壁面に、同様の押し花のパネルが飾られていることがわかった。調べてみると、改修工事後の2022年からは押し花パネルの情報が出てこない。あれ、もしかして、もう無い……?
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6月下旬:日本ホラーの体験

ホラーが好きか分からないのにホラー映画を観る約束を友達とした。映画まで1週間。研究室の先輩から借りた日本的ホラー&ミステリーの『
あさとほ』(新名智/KADOKAWA)を読んでみることにした。内容は……じわじわと怖い。どうにか最後まで読み終えて、なんとも言い難い気持ちになった。これが日本のホラーか。
読み切った自信を胸に、友達と映画を観に行った。結果……やはりじわじわと怖い。そして終わりがなんとも言い難い。これが、日本のホラーなのだ。
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