いずみスタッフの 読書日記 176号 P2


レギュラー企画『読書のいずみ』読者スタッフの読書エッセイ。本と過ごす日々を綴ります。
 
  • 慶應義塾大学4年生
    手賀 梨々子
    M O R E
     
  • 信州大学大学院
    山崎 ひかり
    M O R E
     
  • 名古屋大学5年生
    後藤 万由子
    M O R E
     
  • 千葉大学3年生
    高津 咲希
    M O R E
     

 

 

名古屋大学5年生 後藤万由子

7月中旬

 今日は蒸し蒸しと暑い。帰りの電車で昼寝をしてしまった。頭が重い。国家試験の勉強をしたかったのに。そういえば今日も先生からの質問に答えられなかったな。
 乗り換えのA駅で10分ほど待ち時間があったため、コンビニに寄った。もしかして、と本棚を見るとやはり『PHP』(PHP研究所)が置いてあった。特集「ちょっとがんばれないときの気持ちの切り替え方」。どうしていつもこの雑誌はタイミングが良いのだろう。今日待たされてよかった。
 そういえば『PHP』にはよく助けてもらっている。少し日記を遡ってみることにした。『PHP 2023.8月号 気持ちの切り替え方』購入はこちら >
 
*****
 

3月

 奈良に行った。今日は飛鳥へ。行く途中のコンビニでPHPを買って電車で開いた。山田(山田ルイ53世)さん 学生時代に苦労されていたんだ。
「確かに時間を有効に使えればそれに越したことはない。でも人間はどうしても無駄な時間を過ごしてしまうこともある。そういうものだ、と諦めてあげるのも大事だ」と書いてあった。
 全ての時間に意味を見出さないといけないというのは世間の「圧」だ。
「全ての時間には意味がある。無駄なものなんてない」。確かにそう考える人は多いしその言葉に励まされる人もいるだろう。しかし私にはこちらの方が心にスッと入った。
 

5月中旬

 奈良に行った。ここのところよく行っている。4月は橿原考古学研究所附属博物館、先週は斑鳩の藤ノ木古墳、今回はまた博物館で説明会。行きの車で母が「電車で読む?」とPHPを渡してくれた。「まゆちゃんみたいな性格の人にこの言葉ぴったりじゃないの」。そう渡してくれた5月号の特集は「急がずに生きる」だった。
 帰り、重たい図録を特急の隣の席に置き、PHPを開いてみた。今回は豆塚エリさんか。楽しめるもの自分らしくいられるものに没頭することで周囲に対する焦りを小さくすることができた豆塚さん。「没頭しているときこそ、その人がその人らしくあり、命を輝かせているのに違いない」。なんだか私もizumi の投稿文を書きたくなった。
 それにしても、どうして遺跡を見に行く時関係ない本ばかり読みたくなるのだろう。裏表紙の言葉も誰が書いているんだ?一見説教のようで、しかし ゆるやかで心地よく、もたれかかりたくなる言葉。明日への希望をそれとなく示してくれる。私もこんな文章書きたいなぁ。『PHP 2023.5月号 急がずに生きる』購入はこちら >
 
 
 

 

千葉大学3年生 高津咲希

5月

 美しい装丁に惹かれ思わず、『掌に眠る舞台』(小川洋子/集英社)を手に取った。ピンク色のチュチュを身に纏い、白い花冠をつけた少女の横顔。何かをじっと見つめるような、凛とした、でもどこか切なさを帯びた表情。そして、彼女を囲むように生い茂るピンク色の花と緑の葉。とても美しい絵であるのにどこか暗い……。
 演劇好きの私は、「さまざまな“舞台”にまつわる、美しく恐ろしい8編の物語。」という帯を見て、レジへ直行した。
 特に印象的だったのは、「装飾用の役者」という物語。“コンパニオン”という一風変わったキャリア一筋の女性が、自分がいかに“コンパニオン”にふさわしい資質を持っているかについて語るという内容だ。“コンパニオン”とは何なのか、“装飾用の”にはどのような意味があるのか……不思議で不気味な世界観に身震いした。『掌に眠る舞台』購入はこちら >
 

6月

 ずっと気になっていた小説『愛なき世界』(三浦しをん/中公文庫)を読んだ。
 シロイヌナズナの研究に情熱を注ぐ植物学研究室の院生・本村紗英に近所の洋食屋「円服亭」の見習い・藤丸陽太が恋をする。
 題名の“愛なき”世界とは裏腹に愛で溢れた心温まる物語だった。
 何かに夢中になる人は輝いている。輝いている人がいったい何を見て、何を知って心躍るのか。自分も同じ視点で見たいと願う真っ直ぐで純粋な気持ちが丁寧に描写されていた。
 研究室の個性的なメンバーが愛らしい。いつも黒スーツで陰気な教授が、研究室に入る学部生を勧誘するチャンスでもある学生実習に、アロハシャツ姿で現れて研究室のイメージアップ?を狙うなど、不器用で微笑ましいエピソードが面白い。
 そして何より円服亭の料理がどれもとても美味しそう……!!『愛なき世界』購入はこちら >
 

7月

 ただ今、作歌に挑戦中。短いからこそ奥深く、語順を入れ替えてみたり、言葉を変えてみたり……あれこれと格闘し、気づけば三十一文字を書くのに何日もかかっている。
 俵万智さんの歌集『プーさんの鼻』(俵万智/河出書房新社)には、日々成長する子供の姿が丁寧に綴られている。
「あーじゃあじゃ、うんまばっぽー、この声がいつか言葉になってゆくのか」
 妹が赤ちゃんの頃、発する言葉を真似て一生懸命話しかけていたことを思い出した。『プーさんの鼻』購入はこちら >
 
 
 
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