Reading for Pleasure No.56

When I come back,
I will be prouder than ever of my little women

水野 邦太郎
水野 邦太郎Profile

●今回ご紹介の本●
Alcott, Louisa May/Escott, John
Little Women
Oxford Bookworms Library
ISBN:9780194791755
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 日本では『若草物語』というタイトルでよく知られている Little Women を紹介します。この物語は作者の自伝的な小説です。物語のマーチ家の四姉妹は、著者ルイーズの実の四姉妹がモデルです。物語では、長女メグ16歳、次女ジョー15歳、三女ベス13歳、四女エイミーの四姉妹が設定されています。4人の特徴は、挿絵とともに次のように説明されています。

Meg was sixteen and very pretty, with large eyes and soft brown hair, and white hands. Fifteen-year-old Jo was very tall and thin. Her long, dark-red hair was usually pushed up out of the way. Beth was thirteen, a very shy girl who seemed to live in a happy world of her own. Amy was the youngest but thought herself to be the most important. She had blue eyes, and yellow hair which curled on to her shoulders.

 上記の説明を少し補いながら、一人ひとりの性格を説明します。長女メグは美しい容姿を持ち、気品があります。お金持ちの家庭の家庭教師をしながらマーチ家の生計を助けます。次女ジョーはおてんばで、情熱的、男性的、独立心が強く、読書が大好きで作家を目指しています。ジョーのモデルが、著者ルイーズ自身のようです。三女ベスは音楽が大好きでピアノを弾いて家族のことを癒します。内気な性格ですが、四姉妹の中で一番家族のことを考える優しい心の持ち主です。四女エイミーは、美的センスがあり絵描きを目指します。末っ子なのでわがままです。このような四姉妹の性格や価値観の違いが丁寧に描き分けられながら物語が展開していくところが、この物語の見どころです。

 ときは、1861年から1865年まで続いた南北戦争時代の真っただ中。父のマーチ氏は、黒人奴隷解放のために戦地に赴いていました。そうしたなか、物語はある年のクリスマスから始まります。そのときの様子が、次のように描かれています。

Jo said sadly, “We haven’t got Father, and we won’t have him for a long time.” She didn’t say “perhaps never”, but each silently thought it, remembering that he was away at the war in the South.

 このような気持ちでいると、マーチ夫人が夫のマーチ氏から手紙が届いたことを娘たちに伝えます。全員、大喜びです。手紙の最後に、四姉妹に宛てて次のようなメッセージが書かれてあります。

Give them all my love and a kiss. I think of them every day. I know they will be loving children to you, and that when I come back,
I will be prouder than ever of my little women.

 手紙の最後の little womenという言葉に、戦場で戦っている父から四姉妹への願いが込められています。それは、立ちはだかる試練から逃げずに立ち向かい、乗り越えて欲しいということ。そして、little girls(少女) から little women (小婦人) へと成長し、父が誇れる人間に成長して欲しいということ。そのような父の願いがlittle womenという言葉に込められています。

 四姉妹が立ち向かった試練のひとつを紹介します。ベスが病を患い家族で看病をしているとき、マーチ夫人に次のような電報が届きます。

Mrs. March: Your husband is very ill. Come at once. S. Hale, Blank Hospital, Washington.
Jo knew that the money for the journey must be borrowed from Aunt March, and she too wanted to do something −anything−to help her father.

 このことを知ったジョーは、次のような行動に出ます。

It was late afternoon when she came walking in and gave her mother some money. “That’s to help make Father comfortable and to bring him home,” she said. “Twenty-five dollars!” said Mrs. March. “My dear, where did you get it?” Jo took off her hat. “Your hair, your beautiful hair!” cried Amy. All Jo’s lovely, thick, long hair was cut short.

 四姉妹は、それぞれが自己実現を目指していろいろな困難や挫折を経験しながら成長していきます。そして、そのなかで家族の絆も深まっていきます。ぜひこの物語を通して、女性の生き方について、また、家族とは何かについて考えてみてください。

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P r o f i l e

水野 邦太郎(みずの・くにたろう)

千葉県出身。神戸女子大学文学部教授。博士(九州大学 学位論文.(2017).「Graded Readers の読書を通して「主体的・対話的で深い学び」を実現するための理論的考察 ― H. G. Widdowson の Capacity 論を軸として ―」)。茨城大学 大学教育センター 総合英語教育部准教授、福岡県立大学人間社会学部准教授、江戸川大学メディアコミュニケーション学部教授を経て、2022年4月より現職。

専門は英語教育学。特に、コンピュータを活用した認知的アプローチ(語彙・文法学習)と社会文化的アプローチ(学びの共同体創り)の理論と実践。コンピュータ利用教育学会 学会賞・論文賞(2007)。外国語教育メディア学会 学会賞・教材開発(システム)賞 (2010)。筆者監修の本に『大学生になったら洋書を読もう』(アルク)がある。最新刊『英語教育におけるGraded Readersの文化的・教育的価値の考察』(くろしお出版)は、2020年度 日本英語コミュニケーション学会 学会賞・学術賞を受賞。

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