読書で世界一周④

大人気ドラマ「VIVANT」ロスの今、
改めて中央アジアについて知ってみませんか?

 考察ドラマとしても話題となった「VIVANT」(TBS系)。9月の最終回直後は日本中がロス状態でもありました。大学生協ではドラマの舞台となった中央アジアに関するフェアを開催中ですが、そのラインナップから2点をご紹介します。

 

『シルクロード全史』

ピーター・フランコパン
〈須川綾子=訳〉
『シルクロード全史
 文明と欲望の十字路 上・下』

河出書房新社 定価(上・下)各3,960円(税込) 購入はこちら >

 お勧めの本を紹介する時、自分の中での本当のベスト1ではなく、むしろ、3〜5位の本を無難に紹介してしまうことって、誰にも経験があるのではないでしょうか。
 前回「シルクロードに憧れがある」と書きましたが、実は私は、シルクロードの魅力は自分だけに留めておきたいと思っており、できればこの本は、あまり紹介したくありません。
 もちろん、この本には売れて欲しいと思っています! ですが、多くの人に読まれることで、シルクロードファンが増えることは、私は望んでいないのです。
 それくらい、シルクロードの本髄が溢れる本書! シルクロードの単なる道としての歴史的側面ではなく、現代にもつながるシルクロードや中央アジアの奥深さを存分に教えてくれます。
 

 

『まんぷくモンゴル!』

鈴木裕子
『まんぷくモンゴル!
 公邸料理人、大草原で肉を食う』

産業編集センター 定価1,320円(税込) 購入はこちら >

 モンゴルロケが行われた「VIVANT」にちなみ、やはりお勧めしたいモンゴル本。中でも著者の鈴木裕子さんがこれ以上ないくらいモンゴルに溶け込んでいるのが本書です。
 異文化紹介というより、現地の人がありのままのモンゴルの食文化や生活について解説して下さっているレベルです。
 例えば、日本では、牛の他、鶏や豚肉が一般的な一方、羊がよく食べられるモンゴル。羊をしばしば食べるようになった鈴木さんは、じきに、羊を食べるとからだが喜ぶようになり、「羊の尾こそがおいしい」ことも知ったそうです。
 また、湿度がなく乾燥した気候のモンゴル。においの薄さに、料理人としては、最初は戸惑った鈴木さんでしたが、湿度が匂いの運搬者だと改めて気づいたそうです。様々な日本との違いをネガティブにとらえるのではなく、受け入れる。そんな鈴木さんの言葉だからこそ、本書の内容は実にするすると入ってきます。
 それにしても、モンゴルの人はあたたかいものがご馳走である一方、冷たいものがちょっと苦手で、アイスは油脂が多いモハッとしたものが多いらしいですが、どんなアイスなのか!? 気になりました(笑)。
 
執筆者PROFILE
重松 理恵(しげまつ・りえ)
 2004年入協。広島大学、東京大学、名古屋大学生協など各大学生協での書籍担当者を経て、現在、大学生協事業連合書籍商品課に在籍。著書に『東大生の本の使い方』(三笠書房)、最新刊は『読んで、旅する 海外文学』(大月書店)。


ご意見・ご感想はこちらから

*本サイト記事・写真・イラストの無断転載を禁じます。

ページの先頭へ