いずみ委員の気になる本屋さん


葉ね文庫 〜大阪市北区〜 
蛙軒 〜愛媛県松山市〜 
本とコーヒーtegamisha 〜東京都調布市〜 
 

葉ね文庫 〜大阪市北区〜

 葉ね文庫さんは詩歌句専門の本屋さんだ。詩集、歌集、句集、総合誌、結社誌、同人誌、フリーペーパー…… 町の本屋さんではちょっとお目にかかれないものまで、詩歌句にまつわるいろいろなものが置かれている。
 お店に入ってまず出迎えてくれたのは、ハロゲンヒーターの暖かな空気と、常連さんと店主さんの会話。土足禁止のカーペットは、気に入った一冊を手に座り込みたくなる。ソファもあるのだけれど、ついつい自分の部屋にいるような、秘密基地に来たような気がしてしまって。
 私が葉ね文庫さんを好きな理由の一つに、居心地の良さがある。そしてそれはきっと、置かれている本が持つ熱を、店主さんが伝えてくれているからだ。葉ね文庫さんに置かれている本には、一般的な商業ルートで流通していないものも多い。でもどれもこれも、たっぷりの愛や熱で作られていて、それが伝わるように並べられている。だから葉ね文庫さんは、あんなに居心地がよくて、きらきらしているのだと思う。
 その日は店主さんのご厚意で、日付が変わる頃までお邪魔させていただいた。お会計をしてもらっているとき「前にも来てくれましたよね?」と聞かれてびっくりする。確かにそうだけれど、その“前"は、一年以上前の一度っきりのことだ。
「覚えてますよ」
 当たり前のように言われてドキドキした。びっくりして、嬉しくて、絶対にまた来よう、と思う。私は葉ね文庫さんは、そういう本屋さんだ。

居心地がいいから住むのはやめとくね
ノックを鼓動と同じリズムで

(杉田佳凜)
 

Information

葉ね文庫
〒530-0015
大阪府大阪市北区中崎西1-6-36
サクラビル1F(梅田駅・中崎町駅近く)
営業日 火・木・金・土曜日
営業時間
火・木・金:19:00 〜 21:30
土:11:00 〜 21:30

葉ね文庫HP


 

蛙軒 〜愛媛県松山市〜

 三津浜の厳島神社を海がある方に歩いて、さらに奥へと進む。小学校の手前に青色の入り口が見えてきた。昔、文房具屋さんだったこの場所は、今では本屋さんとなり、蛙軒(げろけん)と名付けられた。扉を開けて中に入ると、静かな空気と柔らかい香りに出迎えられる。チリンと首の鈴を鳴らしながら白と黒のスラリとした猫が奥の部屋から覗いていた。看板猫のクマンガピックだ。本に猫。最高のマリアージュ。猫に癒されたら、本をじっくり観察する。大切に仕入れられた本たちは、静かに物語を包み、誇り高くたたずんでいる。大きな本屋さんでは見たことのない本や詩集もあって、マイナーな本好きさんにはたまらないだろうなと思う。早川ユミさん、梨木香歩さん、武田百合子さんなど自然への愛に満ちた作家さんの本に目を留め、本のページをめくる。そういえばこの空間にも、色んな植物がキレイにディスプレイされている。イチョウ、どんぐり、この葉っぱはなんだろう。
 私はこの空間が大好きだ。ここで出会う本やイベント達は見たことのない世界の色を教えてくれた。私にとってこの本屋さんは新しい世界への扉を教えてくれる、「きっかけ屋さん」だ。本は知らない世界を教えてくれるもの。そして本屋さんは物語や世界を秘めた本と出会わせてくれる場所。蛙軒は静かにひっそりと、世界への扉を開いてくれる本屋さんなのです。
(頼本奈波)
 

Information

蛙軒
愛媛県松山市三津3-2-5
(三津浜小 正門 斜め前)
営業日 火・木・金+第1・3水曜日
営業時間 13:00 〜 19:00

蛙軒HP


 

本とコーヒーtegamisha 〜東京都調布市〜

 各駅停車しか止まらない小さな駅に私が降り立つのは、あのお店があるからだ。お昼のキーマカレーの残り香がする、本屋さん。お財布と相談してコーヒーだけにしようか、ケーキも食べようか、考えているうちに1分は歩いていて、いけない、通り過ぎるところだった。おいでおいでと呼びかける暖かいお店に吸い込まれていく。出迎えてくれるのは壁一面の黒板と、飾り棚に誇らしげに整列した本たち。フェアのスターティングメンバーなんだね、と思わず微笑む。こだわりの雑貨の間を縫って探検しているうちに、やわらかい音楽に体がほぐされて、このエッセイ見たことない、こんなレシピ集あったのと好奇心も自由に動き出す。一見かわいい本が多いと思いきや、前衛的文学の新星が紛れていたり、顔触れは個性的。でもみんなそれぞれの棚でくつろいでいて、こちらもほっとさせられる。どっしり構えている本たち一冊一冊に「どうも」「はじめまして」と挨拶したくなって、ついつい長居してしまうのだ。そんなつくりだから、練り歩いているうちに帰る時間は迫ってくる。まだコーヒーも飲んでいないのになぁと店をあとにすると、街はすでに黄昏れ時。ことこと各駅停車を待ちながら、次はもっと余裕のあるときに行きたいなぁと、とぼんやり考える。もう十分ゆったりさせてもらったのだけれども。
(任 冬桜)
 

Information

本とコーヒー tegamisha
〒182-0007
東京都調布市菊野台1-17-5 1階
(京王線柴崎駅より徒歩1分)
営業時間 書店…12:00 〜 20:00
カフェ…12:00 〜 19:00(L.O 18:30)
土、日、祝日のみモーニング営業あり…8:00 〜 12:00
定休日 毎週月曜日(※4月16日より毎週月・火曜日)、年末年始

本とコーヒー tegamisha Web site
 


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