読書マラソンWEB版

伊藤計劃著『虐殺器官』早川書房

全国大学生協連
常勤学生委員
中村一路

 

著者:伊藤計劃
出版社:早川書房

 言葉が溢れる時代になった。TwitterやFacebook等のSNSによって、人は自分の感情や思考を言葉にして容易に発信できるようなった。また、その言葉を、何処にでも、誰にでも発信して共有できるようになった。

本書の中で、「言葉」はキーワードの1つであるように思える。物語の中で「言葉」がキーワードの1つであるとともに、筆者の物語を綴った言葉もまた、作品の魅力であると感じた。

 読了して最初に思い浮かんだことは、自分の感情や欲求を、感じたそのままに言葉にできているのだろうか、という疑問だった。感情や欲求を表現する言葉が多くなっていくことと同時に、表現したいことが十分に表現できなくなっているのかもしれない。

 言葉の多さにおしつぶされる、人間。

 本作品で語られている言葉は、氾濫した言葉から、伝えたいメッセージを表現するために必要な「言葉」を選び抜いているようで、潔く感じる。

 感情や欲求、思考を容易く発受信できる時代だからこそ、私たちは感情や欲求、思考を表現するために最適な言葉を選ぶ力を身につける必要がある。

全国大学生協連 常勤学生委員
中村一路