読書マラソンWEB版 5月特別号

『吉野北高校図書委員会』著:山本渚 出版社:MF文庫

名城大学 土性穂乃花

名城大学
土性穂乃花

吉野北高校図書委員会

『吉野北高校図書委員会』
著:山本渚
出版社:MF文庫

物語の舞台は徳島県のある高校。そこの図書委員会の生徒たちが図書室という場所を通して、それぞれ悩みや不安を抱えながらも限られた高校生活を過ごしていく様子が描かれています。私がこの本を読んだのは高校生のときで、登場人物達とほぼ同じ歳だったので当時は自分と重ね合わせて登場人物の子たちが自分と同じ悩みや不安を持っていたことに共感しながら読んでいました。そして大学生になった今読み直すと、あの頃感じた気持ちや放課後の空気感というのは高校時代にしか味わえないかけがえのないものだったことに気づかされ、懐かしさやせつなさが混ざった不思議な気持ちにさせられました。 その人のためを想って行動すればきっとその想いは伝わる、みたいな話は世間に溢れている。一方、どれだけ相手のためを想って行動するその姿がどれだけ美しくても、努力が報われる保証はなく、それどころか踏みにじられ相手に届くことすら叶わないこともまたよくあることだ。そんな美しさがただのエゴイズムにで終わることもある、と残酷さをもって示しているのだろう。それがとても切なかった。

私が皆さんに注目してもらいたいところはこの作者さんの書く図書室の描写です。図書室の描写がとても繊細で、そこの空気の温度や窓から入ってくる風のにおいまで読んでいる側に伝わってきて、この本を読むと図書室に行きたくなると思います。
大学生の読書離れが問題視されている中で、まずは図書室に足を運んでもらうきっかけになればいいなと思ってこの本を紹介させていただきました。恋愛小説とはまた違った味でギュッと胸をわしづかみさせられます。

名城大学
土性穂乃花