読書マラソンWEB版 5月特別号

『ドグラ・マグラ 上/下』著:夢野久作 出版社:角川文庫

ドグラ・マグラ 上

ドグラ・マグラ 下

『ドグラ・マグラ 上/下』
著:夢野久作
出版社:角川文庫

これほど影響を与えられる本がほかにあるだろうか。「この本を読んだ人は発狂する」と言われることもある、三大奇書が一冊、ドグラ・マグラ。
作者の夢野久作はこの作品を書き上げるのに10年以上の歳月をかけたという。最初はびっくりするかもしれない。なぜなら、この本はミステリーでもあり、ホラーでもあるからだ。深い人間ドラマでもあるし、哲学書でもある。
大学の精神病科の一室で目覚めた主人公は、てんかんの影響で記憶を失っていた。そこに現れた医学教授の若林は、主人公に自分自身で名前を思い出させようとする。今は亡き正木博士の予言を実現させるというのだ。話は主人公に起きた出来事をたどりながら、名前を思い出すために進んでいく。そのうちに見えてくるのは登場人物一人一人の心情だ。何を考えて一つ一つの行動をとったのかが、明らかになっていく。「前世の記憶」といった一見オカルトじみたテーマも扱われ、単なる論理パズルではない深いミステリーとなっている。最後に主人公がたどり着く答えには、きっと衝撃を受けるだろう。
余談だが、この本に出てくる科学的な考え方は、今では当たり前のこともあるが、当時(出版された40年前)では全く新しいものだった。これは予言書でもあるのかもしれない。

この本は、一回読んだだけでは理解できないといわれる。解釈も、人によって違うかもしれない。でも、それが面白いのだ。デリケートな問題を扱っていて、ちょっと読みにくいかもしれない。それでも、この本を読んだ後では、世界の見え方がきっと変わってくると私は思う。
時間の余裕がある大学生の間に、読んでみてはいかがだろうか。

静岡大学
笠原稜子