読書マラソンWEB版 5月特別号

『ブラバン』著:津原泰水 出版社:新潮社

ブラバン

『ブラバン』
著:津原泰水
出版社:新潮社

吹奏楽をやっていた高校時代、この本が書店に並んでいたのをたまたま見つけ手に取りました。物語は主人公の高校時代を中心に語られました。いろいろな人と関わり、ときに無茶や無謀があり、またすれ違いや対立があったり...音楽に彩られた1/1サイズの青春が描かれていきます。当時まさに吹奏楽部にいた私からすると非常に身近な物語でした。環境や時代は自分とは違うけども、同じように音楽と部活に向き合っていく姿に引き込まれて、部活の行き帰りの電車で少しずつ読み進めました。
この物語の魅力は、劇的ではないところにあると感じました。彼は高校生活でさまざまな出来事に出会っていきましたが、どれかが物語を決定付けることはありません。すべての出来事が少しずつ影響しあって日々が進んでいく。私自身と同じように悩み考えて、物語のためではなく彼自身が決めて進んでいく。そんなところが現実感を持って、彼自身の青春を見せてくれています。それは自己投影ではなく、まるで他校の同級生に話をきいているような感覚でした。
部活に行く電車でこの本を読み、着いたら本を閉じて今度は私が音楽に向き合う。少し素敵な体験でした。

静岡大学
能勢翔