読書マラソンWEB版 5月特別号

『ジョーカー・ゲーム』著:柳広司 出版社:角川文庫

ジョーカー・ゲーム

『ジョーカー・ゲーム』
著:柳広司
出版社:角川文庫

もし彼らの様なスパイが日本にいたとしたら、私たちの国にも希望があったかもしれない。私はこの本を読み終わったときそう感じました。舞台は第二次世界大戦真っ只中の日本を中心に、イギリス、上海など世界中を国境関係なく話は展開していきます。大日本帝国の陸軍将校結城中佐は、昭和12年に極秘の『諜報員養成所』つまりスパイ養成学校『D機関』を開設しました。そこでは帝国陸軍のような軍事練習や主従関係は存在せず、偽名で呼び合いながら体力と精神的にも厳しい訓練や任務を平然と遂行していきます。実際の歴史的事件を織り交ぜながら進むスパイたちの諜報戦に、私はどんどん飲み込まれ自分が勉強してきた事実に疑問を抱くほどでした。私自身はどちらかというと、歴史小説より推理小説の方を今まで好んできました。しかしこの『ジョーカー・ゲーム』は歴史的事実を扱いながらも、スパイたちが決死の任務をスマートに成功させる姿を描く、歴史的でありながらスパイ・ミステリーという珍しいジャンルの小説です。よって作品の内容をより理解しやすいように感じさせてくれます。現在このシリーズは第三弾まで発売されていますが、基本的に一話完結で読めるので、まずはシリーズ第一弾であり「D機関」の始まりを書いたこの作品を読んでみてはいかがでしょうか。

静岡文化芸術大学
池田恭子