2023年度 第1回 学生の生活リスク講座 開催報告
「自分を守る、仲間を守るための消費者トラブル防止術」

日時
2023年2月21日(火)14:30~17:30
形式
オンライン(Zoom)
参加者
59名
学生 24名、大学教員 7名、大学職員 2名、文科省 1名、消費者庁 1名、JASSO 2名+α、国民生活センター 1名、三菱総研 4名、コープ共済連 3名、生協専務理事 3名、東京ブロック 5名、大学生協連 5名、大学生協連職員OB 1名
最大アクセス 64


グループワークをワイワイとやりました。

【1】「学生の生活リスク講座」とは…


冒頭挨拶:大学生協連の米山会長理事
2月に発売となった新刊「大学生が狙われる50の危険」のご紹介もありました。

「学生の生活リスク講座」は2015年より2020年2月まで、その時々の学生のリスクをテーマに、学生・教職員と学生を応援したい社会人の参加によって、知見を深めてきました。コロナで中断を余儀なくされましたが、この3年間の変化を鑑み、復活再開することとなりました。正しい知識を身につけ、自分を守るリテラシーを身につけるとともに、周囲の仲間がトラブルに巻き込まれないように、声掛け、啓発する力も身につけることが重要と考え、今回も、「講義(インプット)→グループワーク」を行い、ワークショップ型のより実践的な講座としました。

【2】インプット①・講義


インプット① 奈良 由美子先生 (放送大学)

奈良先生からは、リスクには「beingのリスク」(生きているだけでも被る可能性のあるリスク…自然災害、病気、交通事故など)と、「doingのリスク:選択し行動することで被る可能性のあるリスク(SNS上のリスク、バイトのリスクなど)があることや、現代社会においてリスクとは、「様相」「認識」「対処」の3つの局面に分けて考えてみることをお話しいただきました。また、リスクを「じぶんごと」化してとらえることとや、じぶんだけではなく周りの人をリスクを減らす行動も大切とお話しいただきました。

【3】インプット②・講義「大学生を取り巻くカルト問題の実態と対処法」


インプット② 太刀掛俊之先生 (大阪大学)

元首相の襲撃事件の後からカルトの問題が社会全体で注目され、深刻な被害についてどう防ぐべきか話題になっています。太刀掛先生からは、最初にカルトトラブルにどう対処すべきか、周囲はリスク回避のためにどう動くべきかについて、お話いただき、引き続いて、ワークショップ「カルトトラブルにどのように備えるか」を提起いただきました。最初に、太刀掛先生が「誘う先輩」役、本日の司会進行の矢間くんが「誘われる後輩」役でロールプレイの見本をしていただき、その後、ブレイクアウトセッションで6グループに分かれて、ワークを実施しました。

「身近でお世話になった先輩から、(怪しい)イベントに誘われた」という設定で、断るのにどうしたらいいか、「誘う先輩」「誘われる後輩」と役割を決めて、実際に演じてみて、感じたことを出し合いました。

30分間のワークで行ったあと、3つのグループより参加学生から感想を発表してもらいました。感想としては、

A 「お世話になった先輩にぐいぐい来られると断れない。理由を言っても一つずつつぶされて逃げ道がなくなってしまう」

B 「相手にねばられると、早く終わりたいばっかりにちょっとくらいならいいかな…と答えてしまった」

C 「先輩なので無下に断れないので“興味がある”と言ったら、そこから付け込まれてしまった」

等の声が聞かれました。
「実際に誘う側の役をやると、相手の話のどこが突っ込みどころなのか、よくわかった」という感想もありました。

全体共有・講評として、太刀掛先生からは、あやふやな意思表示ではなく「NoはNo」と答えるように、含みのある返し方をすると、そこに付け込まれる、ということや、誘ってくる側は「相談して答えるという返事を嫌う」等のアドバイスがありました。

【4】インプット③・講義「大学生を取り巻く消費者トラブルの実態と対処法」


インプット③ 早野先生(消費生活センター)

最初に、消費生活相談員の早野先生からは、コロナ以降の消費者相談、とくに若者からどんな事例が増えているのか、また、消費者センターの役割等についてお話をいただきました。

若者の相談はこれまでは「20歳」を境として急増する傾向があったところ、成年年齢の引き下げにより今後は「18歳」にシフトし、被害の若年齢化が懸念されます。また、成人になったばかりの若年者が悪質事業に狙われやすいとう実態を踏まえた周囲の人々へ普及啓発等、被害防止対策が必要となっています。

引き続いて、ワークショップ「消費者トラブルにどのように備えるか」を提起いただきました。先ほどと同じグループでの、ブレイクアウトセッションを行いますが、今回は、先生の書いた、実例をもとにした「消費者被害のシナリオ」を使って、「騙そうとする役」「騙される側」「ナレーター」などグループに分かれて、ロールプレイを実施しました。

シナリオは、セリフ自体は早野先生が作成したものですが、ロールプレイでは「複数のダマす役」がいたり、怪しい方言を使う男が出てきたり、どのグループも楽しく、笑い声が聞こえるものとなりました。また、役割を交代して演じたり、他の人が演じるのを観察して感じたことを全体にフィードバックするような工夫をしました。

その後、全体で、また3グループより感想を出していただきました。

D 「ダマそうとする方は人気のないところで話そうとされるので、他の人の目にとまるところで話を聞くようにするといいと思った」

E 「出会い系サイトでダマす側を演じたのですが、自分に好意を持ってくれている人をダマすのはたやすいんだ、と実感しました」

F 「あなただけに特別、というスペシャル感を出されると、もったいないかな…と思ってしまう」

感想を交流しあうなかで、「ダマす側、ダマされる側の両方の役割を演じたので、とてもリアルに感じた。耳で聞くだけでなく、その立場に立って演じたら怖くなった」、「新学期に生協学生委員会の勧誘をするときに、怪しまれないように注意したい」という声も出されました。

【5】講座全体を通じて~奈良先生から

「ダマす側」と「ダマされる側」の両方を実際に演じることで「じぶんごと」ととらえられるようになったのではないか。消費者被害…騙されている人を見たら、仲のいい友達だからこそ「ダメじゃない。おかしいよ。」と言ってあげたい。自分のリスクを小さくするとともに、仲間のリスクも減らしてあげる。大学の相談室に一緒に行ったり、消費生活センターに一緒に問合せをしてあげるなど、自分とともに、仲間のリスクを減らす活動も大切にしてほしい。

各大学で新歓の時期になるので、「大学生が狙われる50の危険」もぜひ活用してほしい。

【6】参加者の感想文 抜粋

  • 台本を読むだけ?!と思っていましたが、言葉にすることで感じることがたくさんあるんだな・みんなとワークすることで様々な考え、対処が考えられるのだなと思いました!(大学4年)
  • 自分は絶対に詐欺にあわないと思っていましたが、今回の講座に参加して身近な人から勧誘を受ける場合があることや、怪しさを感じないチラシ、自分の悩みを解決してくれるかもしれない期待等いろいろな点で怪しさを感じず行動してしまい、自分も嫌なことに巻き込まれてしまうかもしれないのだと思いました。(大学3年)
  • 先輩や仲のいい人からの誘いだと、断れず行ってしまいそうだな…と危機感を覚えました。
    また自分たちは割とイベント開催などで人を呼ぶ側にもなるので、連絡先や主催者の明記など、カルトと思われない、健全である証拠を出す必要もあることを逆に学びました。(大学4年)
  • ロールプレイングが話を進めるほどどんどん怖くなっていくように感じました。手遅れになっていく印象がついて戻れない状況までいくとどうすればいいのだろう…と思いました。しっかり相談できる人がいることが大事ですね(大学4年)
  • 大学生だけではなく社会を取り巻くリスクに対応するためのリスクリテラシーについて自分ごとにとらえることがまず必要であると感じた。リスクを学んでいても気づかずに罠にはまる可能性もあるし、身近な人が"騙す側"になっている可能性も、そして自分さえもが、何かしらの課外活動の中で知らずのうちに"騙す側"になっているかもしれないと思った。(大学1年)
  • リスクというものが他人事であるという話では、自分も当てはまっていると感じました。特にそのリスクの提起が長引くごとに、それに慣れてしまい、また、自分の身近で起きないと沿岸の火事のような印象になってしまうことを意識しました。
    自分のためだけではなくて、大切な友達や家族がリスクを負った場合に、助けになれるように知識をつけることは大事なのだと知ることができました。(大学1年)
  • 成人年齢が引き下げられたこともあり、大学生がこうした消費者トラブルに巻き込まれる可能性は高くなっているかと思います(高校などでこうしたトラブルについてのケーススタディを行うことも増えているように思いますが)。大学生だけではなく、こちらも一人の社会人や大人としてどのように対処すればよいのか、大学生に対してどのような働きかけをしていくことが有効なのかを改めて考え直すきっかけとなりました。(社会人)
  • 大学生の身近に迫るリスクを守る側の私たちも常にアップデートしていくことが大切であると改めて感じました。(社会人)
  • どれも生活で1度は経験しそうな、体験したことのあるようなもので、現実的でとても分かりやすかったです。奈良先生の講義内容にあるように、リスクは不確実性がるからこそ、きちんと現実に起こっている問題を知り、自ら下げられるリスクは低減させ、被害にあった際でも自ら/周囲の力を借りながら回復できるようにすることが大切だと実感しました。(社会人)

【7】今後の講座について

①大学生活を取り巻くリスクは、コロナ以降も多様。

  • 高校の金融教育開始の影響は?
  • オンラインやSNS化の進行~ダマす手口も多様に。
  • 18歳成年~ダマされる事件の低年齢化が懸念される。
    今後も「じぶんごと」として捉えられるようになるためのワークなど重要。

②大学や自治体、民間との協力関係~企画だけでなく、学生の日常的な相談窓口として、ハードルを低くして「より身近な存在」に。

③講座のオンライン形式での実施→参加者が自分の大学や地域に戻って、同内容の開催を検討できる。
→沢山の学生に「リスク講座」を経験してもらいたい。

以上

資料【タイムテーブル】

14:30
開会式
主催者挨拶 米山 高生先生
(全国大学生協連副会長理事、東経大教授、一橋大名誉教授)
14:45
インプット①
講義「“自分を守る”“仲間を守る”ためのリスクリテラシー」
奈良由美子氏(放送大学教授)
15:00
インプット②
講義「大学生を取り巻くカルト問題の実態と対処法」
太刀掛俊之氏(大阪大学教授)
15:25
ワークショップ①
「カルトトラブルにどのように備えるか」グループ別、ロールプレイングなど
15:55
全体共有・講評
各グループの対処方法を全体で共有
16:00 休憩
16:10
インプット③
講義「大学生を取り巻く消費者トラブルの実態と対処法」
早野木の美氏(消費生活相談員)
16:35
ワークショップ②
「消費者トラブルにどのように備えるか」グループ別、ロールプレイングなど
17:00
全体共有・講評
各グループの対処方法を全体で共有
17:05
全体講評
奈良先生より
17:25
閉会式
再度新刊「大学生が狙われる50の危険」のご紹介、今後の講座など
17:30 終了


司会進行のおふたり。矢間さん(大阪大院生)、元田さん(三菱総研)


当日の様子(大学生協 杉並会館 会議室)

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