ものまねタレント コロッケさん インタビュー

いつでも、どこでも、
胸に「心のボランティア」を。

地震など大きな災害が起きた時、被災地支援や復興に関わる上で自分たちに何ができるか。
時間の経過とともに風化する災害の記憶を風化させることなくとどめておくにはどうしたらいいのか。
阪神・淡路大震災にはじまり、東日本大震災、熊本地震と、長年にわたり、被災地へのさまざまな支援活動に取り組まれてきたものまねタレント コロッケさんにお話を伺いました。

 
ものまねタレント コロッケさん

ものまねタレント コロッケさん
プロフィール
インタビュイー

全国学生委員会 浦田 行紘

全国大学生協連
全国学生委員会
浦田 行紘
インタビュアー

全国学生委員会 笹森 穂花

全国大学生協連
全国学生委員会
笹森 穂花
インタビュアー

(以下、敬称を省略させていただきます)

相手のことを、相手の立場で
貫き続けた座右の銘

浦田 行紘
浦田
コロッケさんは熊本地震の発生以降、被災地への継続的な支援活動に取り組まれ、支援物資だけでなく、人との直接の出会いの機会などをお届けする活動を続けてこられたとお聞きしています。本日は、そのあたりの復興支援について、コロッケさんの経験を交えていろいろお聞きしたいと思っています。その前に、コロッケさんはこれまでの芸能生活を通じて得難い経験を数多くされてこられたと思いますが、お笑いを提供することでお客さまにとってどんな存在でありたいと考えておられますか。
 
コロッケさん
コロッケ
ものまねは基本的に世代別に喜んでいただくことを前提としたお笑いなんですね。私の場合はどちらかというと年配の方をターゲットとしたネタが多いので、たぶん皆さんのお父さんやお母さん、おじいちゃん、おばあちゃんの方が私のことをよく知ってくださっているのではないかと思います。だから、若い人たちにすれば「うちの親は何でこんなに笑っているんだろう?」「何がそんなにおもしろいの?」「これってそんなに似ているの?」といった感覚なんじゃないでしょうか。でも、それでいいと思っています。そのギャップがあるからこそ家族間での会話が増える、友だち同士の話が弾むのですから。私がエンターテインメントにおいて重要だと思っているのは、観ている人たちの会話がその場だけでなく、「昨日、観た?」「変なことやっていたよね」とその後も生活の一部として会話が続いていくこと。もし、各家庭のさまざまな出来事が100ページの百科事典にまとめられていたとしたら、その中のどこかのページの端の方に「コロッケ」という名前が入っている、入っていたい、というのが私の感覚なんです。
 
浦田 行紘
浦田
それは素敵なことですよね。先ほども少し触れさせていただいたように、そんなコロッケさんが復興支援に尽力されていることはすでに知られたことですが、とかく災害の記憶は時間とともに風化しがちです。そこで災害の記憶を忘れないことやその記憶をもとに防災を意識していくことを続ける上で、コロッケさんが大切だと思われていること、コロッケさんが活動の中で意識されていることなどがありましたら教えていただきたいと思います。
 
コロッケさん
コロッケ
正直、私たちにできることというのは、炊き出しだったり、支援物資を運んだり、人前に立たせていただいてものまねをやらせていただいたりということしかないんですけれども、それによって被災された方々に喜んでいただけることがすごくありがたいというか。だからこそやるべきだという思いで、阪神・淡路大震災はもちろん、東日本大震災、熊本地震の時もさまざまなお手伝いをさせていただきました。ただ、やはり被災地域以外の人の記憶は時間とともに風化していきます。それは仕方のないことなんですけれども、特に若い人たちには少なくとも普段からいざという時にどうすべきなのかという心構えだけは持っていてほしいですね。何かの時にはこれがあればいいとか、ここに逃げればいいとか、きちんと防衛本能を働かせることが重要ですよね。私自身、防災支援を通じてそうした姿勢を後押ししていくことで、記憶の風化に少しでも歯止めをかけたいと思っています。

それと私の中でもう一つ大切にしたいと思っているのが「心のボランティア」という言葉で、それを持った人が増えていってくれるといいなあ、と。復興支援ではせっかく物資を運んでも「すでにたくさんあるから…」と言われてしまうなど、思いとは違った結果を招いてしまうこともあるわけです。そうならないために、事前に本当に必要なものが何かを調べておくこともボランティアには欠かせません。つまり、心のボランティアとは、常に相手のことを、相手の立場になって考えるということです。普段の生活の中でも、前から人が歩いてきたら相手が避けるのを待つのではなく、自分から避ければいいし、エレベーターに乗ったら誰かが「開」を押してくれるのを待つのではなく、自分が押せばいい。私には「相手が一番、自分が二番」という座右の銘があって、常にそう考えれば相手にどうしたら喜んでもらえるかが分かってくる。でも、自分が一番だと「分かってもらえないなら別にいいや」とどうしても自分勝手になってしまうんです。すべてにおいてこの言葉が当てはまるとは言えないけれど、特に災害ボランティアにはその気持ちがないとだめだと思いますね。
 
浦田 行紘
浦田
そうした気持ちを普段から持ち続けるのは大変ではありませんか。
 
コロッケさん
コロッケ
これはね、癖になるとね、大変じゃなくなるんですよ。要はコロッケの三原則なんですが、「やるか、やらないか」「できるか、できないか」「気づくか、気づかないか」なんです。例えば、社会に出た時に90度ちゃんとお辞儀をしようと決めるとします。そのことに気づいた人は、お辞儀の仕方を考える。相手に対するあいさつを考える。でも、気づかない人は1年間軽いお辞儀しかしない。相手からすれば、最初は「そんなに折り曲がらなくても」という気持ちがあるかもしれない。それが2年目に入った時には「あのお辞儀ちゃんとする子ね」と覚えてもらえる。そうすると、2年目に入った時に、今度はそれが自分の「やるか、やらないか」という意思表示になってくるわけですよね。さらにそれが2年以上になってくると「できるか、できないか」という自然な振る舞い、つまり癖になるというわけです。そういうことが一番大事だと思っていて、私はそれを自分でやってきたので。人に対して興味がなくなってきている世の中だからこそ、余計に価値があるのではないかと思っているんですよね。
 

学生委員会が拠点となって
復興支援をけん引

笹森 穂花
笹森
私は埼玉県の出身ということもあり、大きく被災したという経験がありません。どこかで大きな地震が起きて、被災された方々がたくさんいることをニュース上で知っても、なかなかそこから自分の行動に移せないというジレンマを感じていました。私のような大学生も少なからずいると思うのですが、被災された方々のために何かをしたいと思った時に、まず一歩を踏み出すにはどうしたらいいのかコロッケさんのお考えをお聞かせいただければと思います。
 
コロッケさん
コロッケ
何かをしたいと思ってもただ話をしているだけではそれで終わってしまうので、やはり誰かがリーダーとして動かなくてはいけないと思うんですね。大学の中でも、近所のコミュニティーでもいいですから、普段から何かをお手伝いするグループというものを作っておくのも一つの手かなと思います。

例えば、大学生協の学生委員会が拠点となって、普段から学内の整備とか課題解決のために声をかけて、組合員の協力を得ることができれば、何かあった時にも希望者を募りやすくなりますよね。そういうことをやっておけば、こういう時にはこうした方がいい、こういう時には何が必要とか、そういうことが自ずと分かるようになります。また、そういうグループがあれば、私も含めて、大人たちも、「じゃ、一緒に何かやりましょう」と声をかけやすくなります。

初めて復興支援に行った阪神・淡路大震災の時は、私自身もどうしたらいいのか分かりませんでした。何かできることはないかと思っていた時に声をかけてくれたのが、歌手の桑名正博さんだったんですね。彼が私にとっての拠点となってくれたことで、ボランティアをやっている人たちの心のあたたかさや強さを、身をもって知ることができたわけです。その経験があったからこそ、東日本大震災の時は、自ら先陣を切って被災地に駆け付けることができました。もちろん、1年や2年ですぐにできることではありませんが、あきらめることなく続けていくことが肝要だと思います。それができれば、大学生協の学生委員会の、未来に向けた新たな可能性が見えてくるのではありませんか。
 
笹森 穂花
笹森
なるほど、大学生協、学生委員会の価値を改めて考えるいい機会をいただけたと思います。コロッケさんはこれまでの復興支援を通じて多くの被災された方々と触れ合ってこられたと思いますが、印象に残っていることがあればお聞かせください。
 
コロッケさん
コロッケ
被災地でものまねは、やはりだめだろう。ものまねなんかやったら、被災された方々に失礼だろう。正直、最初はそう思っていたんです。ある時、炊き出しを配る列に並んだご婦人が私に「最近、笑ってないのよ。何かやってよ」と声をかけてきたんです。その一言が私には大きくて、何かやらなきゃという気持ちになって、やりましたよ、ものまね。年配の方だったので、森進一さんと五木ひろしさんのものまねを拡声器でやったのですが、すぐに大きな笑い声が返ってきて。震災以降久しく聞こえなかった笑い声が、少しずつ、やがて大きな波になって避難所に広がっていきました。以来、復興支援にうかがわせていただくたびにものまねを披露してきたわけですが、「ものまねってこんなふうに人の役に立てるんだ」ということを感じることができた貴重な出来事でした。

これは余談ですけど、「コロッケが来た!」と言って多くの方が期待してくださると同時に、中には食べ物のコロッケが来たと勘違いされる方もいて。そうした方々には、本当に申し訳ないなと思って、ある時からちゃんと揚げたてのコロッケも持っていくようになりました(笑)。本当にややこしい名前ですよね。この名前でよかったことももちろんありましたが、この時ばかりは改名した方がいいのかと思いましたね。
 

経験したことがないことを学ぶには
経験した人の話を聞くこと

笹森 穂花
笹森
何かあった時の支援もですが、何か起こらないための防災も大切だと思います。前述した通り、私は埼玉県さいたま市の出身で、大きく被災したこともなく、なかなか災害を自分ごととして考えるのが難しいという面があります。私たち大学生協としても大学生の防災への意識を高める取り組みを進めていますが、そういう意識を広げていくためにできること、必要なことについて、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
 
コロッケさん
コロッケ
経験したことがないことをどうやったら学ぶことができるかというと、まずは経験した人の話を聞くのがいいんじゃないでしょうか。例えば、警察署や消防署、役所に行って、「そういうことがあった時はどうするんですか」、「自分に何か手伝えることありませんか」と聞いてみる。例えば、町内会でもいい。そういうところにまず聞いて、何かあった時に「こうやって動きましょうよ。自分たちも動きますから」と話を持ち掛けてみる。本当に身近なところからでいいと思うんですよ。まず地域、それから自分たちの大学、そこから始めて、何かあった時にはここに頼もう、何かあった時にはこうしようという目星をつけておいて、話に行ける体制を作る。いろいろなやり方はあるんだけれど、身近なところから形を固めていくというが大事なのかなと思いますね。そういう防災の取り組みの現場は年配の人ばかりなので、若い人、大学生が一緒にやってくれれば、やがて彼らが後進に教えることができるようになるでしょうし、大きな力になると思います。

これをやるにはいろいろな責任が出てくるし、大変だと思うんですね。でも、それをやり続けることが、これから先の大学生協につながっていくし、そういう若い人が増えて、一人でも社会に出てくれれば自分たちも心強く思います。
 
笹森 穂花
笹森
私も含めて、何か一緒にやりたいと思っているけれども、やり方が分からないという人はとても多いと思っているので、学生委員会をまずは推進しながら、各地でできることから取り組んでいきたいと思いました。
 
コロッケさん
コロッケ
拠点員が1万人、組合員が150万人という学生委員会のスケールを生かすには、やはり各地域のリーダーの存在が重要ですよね。そのリーダーが動くことができれば、隣の県から手伝いに行くこともできるだろうし、本当に可能性を感じますよね。何よりもそういう気持ちを持った学生がいるということが私たち大人にとってはうれしいし、ありがたいことです。もし、本格的に活動できるようになったら、芸能界やスポーツ界に積極的に声掛けをしていってもいいんじゃないですかね。おもしろい化学反応が起きるような気がしますよ。
 

仕事も、人間関係も
あきらめないこと、やめないこと

浦田 行紘
浦田
では、最後に今の若者や大学生に向けて、メッセージをお願いしたいと思います。
 
コロッケさん
コロッケ
皆さんはまだまだ学生で、いずれ社会に出なくてはいけないですし、大変なことや困難なことなど、これからいろいろなことがあると思います。でも、重要なのは、どんなことがあっても、あきらめないこと、やめないこと。それは仕事においても、人間関係においても同じです。

ただ一方で、どうしても今の若い世代には優しい子が多いから、その優しさにつけ込む人たちに用心してほしいですね。大人の意見ですけど。信じることは美しいかもしれませんが、同時に甘い言葉や正論を疑ってみることも大事だと思います。話をして本当にそうなのか、どうなのか。信じられるか、信じられないか。これから社会に出て行くのであれば、そういうことも考えてほしいな。いい意味で疑うことをしなきゃいけない時代になっていますよ、っていうことを皆さんに申し上げておきたいです。
 
浦田 行紘
浦田
復興支援だけでなく、人間関係においても、心のボランティアを持って、あきらめることなく向き合っていくことが重要であることを学ばせていただきました。
 
コロッケさん
コロッケ
とりあえず、いろいろな防災をやる前に、自分の防災に気をつけてください(笑)。
 
一同
本日はお時間いただきありがとうございました。
 

2026年7月10日リモートインタビューにて

 

PROFILE

ものまねタレント コロッケ さん
ものまねタレント コロッケさん
1980年8月 『お笑いスター誕生』でデビュー
1985年 『ものまね王座決定戦』で注目を集め、ものまね四天王の一人として活躍。岩崎宏美、五木ひろし、森進一、野口五郎、美川憲一や、ロボットバージョン、ヒップホップダンスとの融合などものまねレパートリーは300種類以上
2013年 『松尾芸能賞』で演劇優秀賞を受賞
2014年 『文化庁長官表彰』を受賞
2016年 『第16回日本芸能大賞』を受賞
2018年 映画『ゆずりは』で、本名の滝川広志として映画初主演
2019年5月 『第28回日本映画批評家大賞』特別新人賞を受賞
 

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