大学生協共済連では、全国大学生協連ならびに株式会社三菱総合研究所と協同で、2017年2月に『最新情報版 大学生が狙われる50の危険』(以下、『50の危険』)を発行しました。
同書は、【初代】『大学生がダマされる50の危険』(2011年2月発行)、【二代目】『最新対応版 大学生が狙われる50の危険』(2014年2月発行)に続く、【三代目】です。
【初代(2011)】の内容は、タイトルの「ダマされる」が示す通り、主に消費者被害につながる危険への備えに関するものでした。その発行直後に東日本大震災が発生しました。私たちは「ダマされる危険に備えるだけでは不十分。巨大災害や心の不調等も加え、学生生活24時間365日の危険に総合的に備える内容に新訂が必要」との判断のもとで、【二代目(2014)】を発行しました。新たに加わった項目は、「SNSのトラブル」「ネット依存症」「地震・津波」「食生活の乱れ」「こころの不調」「妊娠・性のトラブル」「就職活動」等です。そして、今年の【三代目(2017)】の発行につながります。今回新たに加わった項目は、「18歳からの選挙権」「ブラックバイト」「マルウェア※」「キャンパスハラスメント」「身のまわりの人たちへの配慮」等です。〝新たに加わった項目〟には、〝今どき〟の学生を取り巻く新たな危険が隠されています。
昨今は、急激なスマートフォンの普及等によるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の環境変化により、利便性とともにリスクも多様化・複雑化し続けています。その結果、「マルウェア」による被害等も登場してきました。また、「ブラックバイト」等の新たなリスクも出てきました。さらには、自転車による高額賠償事故、東日本大震災以降の揺れの継続等々…。
私たちは、こうした変化しつづける学生生活を取り巻くリスクにも迅速に対応するために“新訂"にこだわりつづけています。
※不正かつ有害な動作を行う意図で作成された悪意のあるソフトウェアや悪質なコードの総称
学生の親の立場より、【初代】を第一子(長男)、【二代目】を第二子(次男)、【三代目】を第三子(三男)に置き換えてイメージしてみます。長男は、東日本大震災直後の2011年に入学、今春、大学院を卒業して今年4月から新社会人です。次男は、消費税の増税や格安スマホが登場した2014年に入学して、現在は学部の3年生です。そして、三男は、今年(2017年)4月に入学したばかりの新入生です。現在、大学生である次男と三男の在学中に起こった社会の出来事を整理すると[図表1]のイメージです。
私たちは、その時々の新入生の卒業までの数年間の学生生活を取り巻くリスクに着目しています。『50の危険』は、それへの備えをわかりやすく整理して〝見える化〟した一冊といえます。
また、「携帯電話(スマートフォン)」や「アルバイト」等のイメージは、保護者と学生の間で相当なギャップがあると考えられます。私たちは、『50の危険』がその差を埋めて「いざというときに役立つコミュニケーションツール」として機能することも期待しています。『50の危険』は、保護者の方々にも読んでほしい一冊でもあります。
「学生の生活リスク講座」は、全国大学生協連と大学生協共済連が共催する大学生協内の部内企画で、『50の危険』の礎となる存在です。
これまでの講座のテーマは[図表2]の通りです。各回とも、テーマに精通された大学関係者や専門家を講師にお招きして前半に講義を受け、後半は現役の学生や大学関係者の皆さまを交えたディスカッションを行っています。同講座での〝気づき〟や〝学び〟は、『50の危険』にも色濃く反映されています。
[図表2]
≪「学生の生活リスク講座」のテーマ≫
私たちが大切にしている視点は、現役の学生の声と参加による「予防」活動です。『50の危険』も、現役の学生の声を参考に、イラストや漫画を随所に盛り込んで、読みやすく仕上げています。「第1章」には「新入生は要注意! 大学生が特に気をつけたい8つの危険」としてまとめています。また、奈良由美子先生(放送大学)による「特別寄稿:自分でリスクを管理するための基本」を最後に盛り込みました。奈良先生は、「学生の生活リスク講座」にも、総合的なコーディネーターとして積極的に関わっていただいているリスク研究の第一人者です。『50の危険』は、現役学生やリスクの専門家の声も反映している一冊といえます。
私たちは『50の危険』が、すべての学生・保護者に届くことを願っています。すでに、いくつかの大学では、新入生への配布、講義の副教材、学生相談室(待合室)の閲覧用等にご活用いただいております。ぜひとも、大学生協の書籍部や一般書店等で『50の危険』をご覧いただいた上で、大学内での有効活用をご検討いただけましたら幸いです。
(大学生協共済連 藤本 昌)
『Campus Life vol.51』より転載