たすけあい情報室 (大学関係者向け健康・安全情報)

学生のこころとからだの健康・安全を守るために

新型コロナ感染拡大の今だからこそ、学生生活を妨げるリスクを考える。

新型コロナ感染拡大の今だからこそ、学生生活を妨げるリスクを考える。

“リスク”を連想させる“もしも”には、事前と事後の2つがあります。
大学生協共済が備えとして重視しているのは、どちらかというと前者(予防)といえるでしょう。どんなトラブルも基本的に遭わないのが一番だ、と考えるからです。
大学生協共済が民間の保険と決定的に違うのは、「こころとからだは切り離せない」という発想のもとに、学生特有のあらゆる事前・事後の生活リスクに対応している点です。
現在、我が国では新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な状況であり、こうした未曽有の事態に大学がいかに対応していくかが大きな課題となっています。そこで今回は、元全国大学メンタルヘルス研究会会長(現学会)の杉田義郎先生より、大学の新型コロナ対策についてのお話をいただきました。

〜新型コロナウイルスの世界的大流行下で大学はどのように対処するべきか〜


大阪大学名誉教授
杉田 義郎

大学・高等教育機関(以下、大学等)において、2020年度の新学期は前代未聞の形でスタートしました。多くの大学等では、キャンパスへの学生の立ち入りは禁止となり、当面は対面の講義を中止して、遠隔講義で対応しようとしています。もし完璧な遠隔講義が実施できたとしても、講義の受講者同士が密に接し、友人・知人を作る機会やクラブ・サークル活動をする機会が奪われています。特に、新入生にとっては、学部、研究科や研究室との現実のつながりがない状態がいつまで続くか分からない現状では、この時期にただでさえ少なからず存在する「不安感・孤立感」を増幅させてしまうリスクがあると考えられます。
また、「安全・安心」を感じにくい高ストレス下では、自身を取り巻く環境への適応や学習への意欲が阻害されるリスクが高くなります。現在のような状況は、学生全体、特に新入生の心身の健康度の低下=健康リスクが高くなると考えておかなくてはなりません。
新入生を例に心身の健康リスクを高めるストレス要因に関しては、

  1. 個々の学生の不安・悩みはさまざまであるが共通するものも多いので、学生同士がつながらずに孤立するとそれらは持続・深刻化する傾向があります。
  2. 悩みを相談したいと思っても、学内には入れず、どの相談窓口に連絡したらよいのか分からないうちにだんだんと深刻化することが予測されます。
  3. 社会全体として屋外に出ることを抑制するメッセージが繰り返し発信されているので、自宅や下宿の屋内で長く過ごしがちとなり、そこから生活(睡眠覚醒)リズムが極端に夜型になったり、不規則な生活リズムになりがちになります。
  4. 孤食になりがちで、食事が不規則になる。ジャンクフードや菓子類で空腹を満たすなど栄養状態が次第に悪化する(特に下宿生・寮生)などが考えられます。

これを放置して良いことは一つもありません。大学等においては、本来、開催されるはずだった入学式や入学オリエンテーションで新入生に伝えたかったメッセージ、さらに新型コロナウイルス感染症への大学の対処方針を分かりやすく大学HPのトップに掲示し、そして学内通信網で学生に周知徹底していただきたいと思います。
さらに、学生が少しでも安心して学生生活を送れるように大学生協からもきめ細かいサポートが届けられることに期待しています。特に、こんなときだからこそ新入生や保護者には24時間の安全・安心を提供する“ もしも” のときに有効に機能するサービスの意味や意義を再度通知して、是非、多くの人に利用をしてもらえると、大学の健康支援部門のOBとしても安心です。
最後に、上記のような心身の健康を脅かすストレス要因が今年は例年以上に多く存在すると考えられます。前例がないなどと言わずに、大学内外の英知を結集して適切な基本的対処法を作成して、次に各大学の実態に応じてアレンジし、早急に実施すべきでしょう。それに注がれた努力は、きっと新型コロナウイルス感染リスクの低下のみならず、感染後の重症化リスクをも低下させ、学生および教職員の健康を守ることにつながると思っています。

(大阪大学名誉教授 杉田 義郎)


※杉田義郎先生には「健康&安全のための特別連載コラム」にもご寄稿いただいています。
 ぜひ「大学生協共済連ホームページ」より、あわせてご覧ください。

https://kyosai.univcoop.or.jp/useful/column/index.html

『Campus Life vol.63』より転載

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