たすけあい情報室 (大学関係者向け健康・安全情報)

特集座談会 Campus Life Symposium スポーツと連携した健康・安全活動 生涯の健康づくりを考え、身に付ける4年間に。特集座談会 Campus Life Symposium スポーツと連携した健康・安全活動 生涯の健康づくりを考え、身に付ける4年間に。

コロナ禍を経て、健康に関する人々の意識の高まり、これから迎えるであろう未曾有の長寿社会における健康問題など、健康や体力の維持・増進への社会的なニーズはますます高まっています。
大阪公立大学都市健康・スポーツ研究センターでは、こうした時代にあって、運動やスポーツについて多角的な視点から人が心身共に健康で活動的に過ごすためのさまざまな研究・教育・地域貢献を行っています。
今回は、センター長の岡崎 和伸先生を中心に、法学部4年の飯山 瑠海さん、大阪公立大学生協の藤井 貴浩専務理事にお話を伺いました。

Symposium Member


岡崎 和伸 先生

大阪公立大学
都市健康・スポーツ研究センター所長
(大阪公立大学 健康科学イノベーションセンター所長)
(大阪公立大学大学院 医学研究科 運動環境生理学 教授)


藤井 貴浩

大阪公立大学生協
専務理事


飯山 瑠海 さん

大阪市立大学・法学部4年
(バレーボール部)


司会進行 中野 駿

全国大学生協連
全国学生委員会
(2023年度)
 

スポーツ・運動をいかに継続的に行うか、カギは幼少期の経験にあり。

中野:まず、大阪公立大学の都市健康・スポーツ研究センターの取り組みについて教えていただきたいと思います。

岡崎:都市健康・スポーツ研究センターでは、都市に住んでいるわれわれがいかに健康を維持していくかという、その仕組みや取り組みに関わる研究を行っています。学生や教職員はもちろん、地域の皆さんの実践的な健康づくりのための基礎的研究から応用研究まで、それぞれの研究者、教員の専門性を生かしてこの問題と向き合っています。また、大学の中では、学生の健康スポーツ教育、生涯にわたって健康づくりを継続的に行うための教育に携わっています。

中野:飯山さんは、大学でこうした講義や実習を受けてこられたと思いますが、実際に受けてみていかがでしたか?

飯山:1年生の時なのでちょっとおぼろげですが、生活習慣病について学んだ記憶があります。生活習慣病といってもさまざま病気があり、その原因や予防方法なども分からないことばかりで…。受けてみるとすごく楽しくて、もっと深く知りたいと思うようになりました。

岡崎:私の講義を受けた学生も、最初は「必修だから仕方がない」という感覚ですが、学んでいくうちに「運動・スポーツが、いかにわれわれの健康を維持する上で重要かということが分かりました」とか「具体的な健康を維持するための取り組みがよく分かりました」という声が多く聞かれるようになります。

中野:飯山さんの場合、普段スポーツ等に触れる機会って、実際どのくらいありますか?

飯山:私はバレーボールサークルに所属しているので、基本的に週1~2回は継続して運動しています。もともと幼い頃から体を動かすことが大好きでした。おそらく最初に運動・スポーツに触れたのは、幼稚園ぐらいに始めた子どものための体操教室のようなものだったと思います。やはり幼いので、先生がたくさん褒めてくれるんですよね。前転が成功しただけで「あ、すごいね」みたいに。何回も練習していくうちにできなかったことができるようになって、それが褒められた時のうれしさというのが鮮烈に残っています。その結果「体を動かすことって楽しい」という刷り込みが成され、今に続いているのだと思います。

岡崎:幼少期のスポーツ経験は、成人になってからのスポーツの実施率にかなり大きな影響を及ぼすことは多くの研究結果からも明らかになっています。したがって、幼少期の運動・スポーツ経験をいかに地域あるいは家庭の中で実践してもらえるかが健康づくりの面でも大きなカギ。ただ、大学生の場合は既に完了していることなので、大学に入ってからいかに運動するとか、健康づくりに取り組む姿勢を醸成するかが課題といえるでしょう。

食への意識向上を図る、いろいろな工夫が盛りだくさん。

中野:大学生協の方では、その運動や健康づくりに関わるところで何か取り組まれていることはありますか?

藤井:どちらかといえば、運動の機会を提供するのではなく、万が一のケガへのサポートに重点を置いています。大学生協にはCO・OP学生総合共済という、ケガや病気の際の保障制度があり、特にケガでの入通院については、クラブ活動でケガをしたり、スキーに行って骨折したり、といった場合にも幅広く対応してくれる安心の保障となっています。また、予防に関する提案活動ということで、健康チェックを実施しています。少しでも興味を持って受けてもらえるように「握力比べで1番になったらプレゼント」など、少しゲーム的なところも交えながら促進を図っています。

中野:大学生協の学生組織である組織部(学生委員会)のメンバーとして、飯山さんご自身も健康に関するさまざまな活動に関わってこられたと思うのですが…

飯山:私が入学した時はコロナ禍ということもあって、学内にいる人自体が少ない状況でしたが、この1年、2年ですごく人が増えてきて、運動する機会も増えた分、ケガをする危険性も高まったのかなと感じています。

中野:ところで、大学生協といえば食堂というイメージの学生も少なくないと思いますが…

藤井:大学生協の取り組みとしては、まず3食しっかり食べてもらうことが前提です。ただ、経済的にひっ迫している学生もいますから、あらゆるサービスを通じて、全ての学生にしっかりと食べてもらえるよう努力をしています。「食の定期券」的な機能を持ったミールカードをはじめ、大阪公立大学生協で提供している回数券方式でお得に食事をしてもらえるミールクーポンなどさまざまなプランを用意しています。

中野:大学生の飯山さんは、実際に食の面で意識していることなどはありますか?

飯山:大学生協の食堂で食事をするようになって、初めて自らの食事のあり様を意識するようになりました。一方で大学生になって、やはり外食が増えたのを実感しています。サークルやゼミの仲間とランチをしたり、夕食であればお酒が入ることもあります。大学にいる間はある程度意識できていても、学外ではちょっとした油断がそういう意識を途切れさせてしまうこともありますよね。

中野:確かに、特に一人暮らしをしている学生などは特に意識して取り組まなくてはいけないことですよね。

正しい健康情報を正しく入手する、ヘルスリテラシーの向上が必須。

岡崎:今は情報社会なのでPCやスマホで調べ物をすることも多いと思うのですが、健康に関していえば膨大な情報の中から誤ったものを捨てて正しいものを取り出せるような能力を養うためのヘルスリテラシー(情報リテラシーのヘルス版)の向上を図ることにも取り組んでいます。健康についても、食についても、必要な情報を正しく手に入れる能力が、これからの時代には大変重要になってくると思います。

中野:都市健康・スポーツ研究センターのサイトを拝見させていただいた折に、ちょうどヘルスリテラシーに関するアンケート結果が掲載されていましたが、残念なことにヘルスリテラシーレベルが低いという結果が出ていました。このアンケートの結果についてはどのように思われますか?

岡崎:予想していた以上に、学生がネットにあふれる情報をうのみにしていることが分かりました。そういう意味では、より一層ヘルスリテラシーを向上させる取り組みに注力していかなくてはならないことを実感しましたね。正しいというのは本当に難しいのですが、少なくとも科学的根拠がある程度認められているものをちゃんと選択できる能力を養う教育が必要かなと。そのためにWebコンテンツをつくり、それを教育ツールの一つとして利用しています。いずれにしても、これからも継続的な取り組みが必要ですね。あと、センターのホームページだけでなく、ここ数年、TwitterやInstagram、FacebookなどのSNSを活用して、これまで以上に積極的な情報発信を定期的にしているところです。もちろん科学的に裏付けられた正しい情報ですよ(笑)。

中野:正しい情報をどう取り入れていくか、学生の意識やスキルが問われるということですね。

連携を一層強化することで、地域をも巻き込んだヘルシーキャンパスへ。

中野:コロナ禍を経て、改めて学生生活や卒業した後の社会人生活も含めて、継続的な健康づくりをしていくことが重要になってくると思いますが、センターとしてこれからどのような展望を描いているかお聞かせください。

岡崎:健康づくりにつながる取り組みは講義の中でもしていきますが、その後の継続的な取り組みをいかに在学中に身に付けさせていくかがセンターとしても問われています。大学に来たらいつの間にか活動量が増えているというような、そんな取り組みができるようなキャンパスにしていったり。あまり具体的なお話はできませんが森之宮にも新キャンパスができますから、そこでも新たな取り組みにチャレンジしていきたいと思っています。「大阪公立大学ビジョン2030」を構想していく上でも学生や教職員、地域の皆さんの健康づくりは必須。健康づくりを考える学生とわれわれが連携したり、大学生協とわれわれが連携したり、さまざまな可能性が考えられるのではないでしょうか。

飯山:大学生になって、中学や高校の時以上に、いろいろなスポーツ・運動と触れる機会が増えたと感じています。もう4年生なのであまり時間は残されていませんが、できる限りいろいろなスポーツに触れ、運動を楽しんでいきたいと思います。
それと岡崎先生にお伺いしたいのですが、ヘルシーキャンパスというワードがけっこうメジャーになりつつあると思います。大阪公立大としては、ヘルシーキャンパスに関して何か取り組まれていることはありますか?

岡崎:大阪府と連携して、ヘルスリテラシーの向上や健康キャンパスプロジェクト、健康セミナー、健康測定体験会などさまざまな取り組みを実施してきました。そういう意味ではヘルシーキャンパスを推進していくための活動や情報発信はできていると考えています。ただ、ベースになるのが大学での健康・スポーツ教育だと思っていますので、それらのより一層の充実を図っていきます。地域に関しては、幼少期から高齢者、健康な方、あるいはちょっとフレイルな方との健康づくりにつながる取り組みというのをそれぞれの専門を生かして継続的にやっていきたいと思います。

中野:大学生協はこれからもキャンパスの中でご一緒させていただきますので、活躍する学生たちを毎日の食や安心の保障でバックアップしていきたいと思います。本日はありがとうございました。

『Campus Life vol.74』より転載

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