未来と向き合い平和について考える -大学生協の平和活動特設サイト-

講演録「私の平和活動」

講演概要

Action! for Peace は、広島市出身の大学生3人でつくる平和活動グループです。広島の原子爆弾について知り、考えるきっかけを提供することを目的としています。メンバーはそれぞれ全国各地の大学に進学していますが「被爆ピアノ」を使ってコンサートを企画することで、平和について考えるきっかけを作っています。大学生ができる行動について考えてみましょう。

講師

中村園実 (Action! for Peace /早稲田大学4年生)

とき

2020年9月25日(金)
大学生協連主催「第4回オンラインミーティング」にてゲストスピーカーとして講演

(記録:四方遼祐/全国学生委員)

自己紹介

photo

中村園実(なかむら・そのみ)

  • 所属:早稲田大学 法学部4年
    国際人道法を専攻。法を介した、平和的解決について学んでいる。
  • 広島県出身・被爆3世
  • 中学1年生~高校3年生
    広島市主催「中・高校生ピースクラブ」参加
  • 大学1年~現在
    ピースクラブの卒業生でAction! for Peaceを結成
    被爆ピアノコンサート等、平和や原爆について考えるきっかけとなるようなイベントの企画

中・高生のころの活動から ~原爆の本当の恐ろしさ~

  • 広島市と平和記念資料館主催の「中・高校生ピースクラブ」で活動していた。
    • 広島市在住or在学の中・高校生を対象にメンバーを募集しています。
  • 今日は、取り組みの一部を紹介。

広島青少年平和の集い

  • 8月5日に全国から小・中・高校生を集めて、被爆体験を聞いたり、ワークショップをしたりする。
  • 「ピースクラブ」のメンバーは運営の面でサポートをしていた。
  • 1年を通して広島の原爆についてばかり学んでいたが、全国から集まった人とともに東京大空襲や沖縄線などの話も聞くことができた。
  • いろんな角度から自分たちの活動を見直せた。

サダコと折り鶴ポスター展

  • 8月6日に実施していた。
  • 広島の平和記念式典のときに、多くの人が来るので…
    • 佐々木貞子さんの生涯をポスターで紹介
    • 折り鶴の折り方を説明して一緒に平和について考える
  • 海外の人が多く訪れる
    • 文化の違いを超えた交流の経験にもなった。

長崎研修旅行

  • 8月8日~10日まで長崎に滞在して現地の学生や全国から集まった学生と交流する企画。
  • 田上長崎市長と会う機会も設けていただき、意見交流の機会も。
  • 普段は広島のことを中心に学んでいるがほかの地域のことを学んだ。

中・高校生ピースクラブで学んだこと

  • 小学生の頃は、平和学習はあるがそういったことに全く興味はなかった。
  • ただ幼馴染から誘われて入った「ピースクラブ」の活動を通して、衝撃を受けた。
    • 小学生のころの平和学習はなんだったんだろうと思うほど、自分がいかに無知だったか、ということを思い知らされた。
  • 例えば、広島の原爆では14万人±1万人の人が亡くなったと言われているが…
    • 数字だけでは分からないことがある。
    • その1人1人に生活があった。未来があった。
    • それが一瞬で奪われたことを知った。
  • 若者が伝えていくことの大切さも学んだ。
    • 被爆者の方との交流は年々できる機会が減っている。
    • 全く聞けない世代が必然的にあらわれてくる。
    • 聞ける最後の世代の私たちがきちんと伝えていかないといけないと思っている。
    • それが、今の活動に繋がっている。

大学生になってからの活動

平和首長会議(長崎市)

  • 大学入学を機に上京して何かしたいと思ったが、活動母体もなく何から始めていいかわからなかった。
    • 「伝えたい」という思いだけをもって悶々と過ごしていた。
    • 平和活動をしている知り合いもいない。
  • まずは、何をしている人がいるのかを聞こうと思う。
  • 大学1年生の夏に長崎で行われた平和首長会議の総会に参加をし、ブースを設置した。
  • 自分たちが学んだことをどうやって伝えたらいいか?というアイデアを集めました。
    • 上の写真の後ろ側がその展示。
    • 下の写真はそれを見た全国各地で平和活動をされている方々私たちへの激励メッセージ。
  • そこで全国各地で平和活動をされている方々に出会った。
    • 被爆証言を英語に起こしている方。
    • 全国の中学・高校での平和活動をされている方。
  • 全国のやっぱり自分たちは何かしないといけない。
  • 「被爆ピアノコンサート」へ

被爆ピアノコンサート

なんで被爆ピアノコンサートか

  • 写真にあるピアノは中学2年生のときに出会った被爆ピアノ。
  • 河本明子さんという方が所持していたピアノ。
    • 当時19歳の女
    • 1945年8月6日に勤労作業中に被爆して翌日急性放射能障害で亡くなられました。
  • ピアノも被害を受けた。
    • 多くのガラス片を受け、傷ついた。
    • このピアノは2005年に修復されて弾けるようになった。
  • なぜこのピアノを使うのか。
    • 19歳という若さ自分たちと同年代で亡くなった衝撃
    • 自分も中高6年間に合唱をやっていて音楽が好きという部分で共通点を感じた。
    • 残っている彼女日記を読んでも私たちと変わらない若者。
    • その命が一瞬でなくなったことは、中2の私には大きな衝撃で思い入れがあった。

  • クラウドファンディングに挑戦。
    • 市の助成金ではなくクラウドファンディング。
    • クラウドファンディングは広報をしないとお金が集まらない。
    • その広報の過程でたまたま目にした人に活動や被爆ピアノの存在を知ってもらうことができると思った。
  • 過去2回行ったが、合計で50万円以上の支援金が集まった。
  • 弾き手は、広島市内の中・高校生たちにこだわっている。
    • 弾いた人にも考えてほしい。
    • 音楽にしか興味がない若い人たちも、この被爆ピアノを演奏することで平和を考えるきっかけにしてほしい。
    • 実際になっているという感想もある。
  • 8月6日にこんなことがあって、ということをいきなり説明することよりも、興味があるところを切り口にする方がいいと考えている。

1日平和学習ツアー

  • 広島県外から来る大学生に向けてツアーを組んだ。
  • インプットの機会とアウトプットの機会を同じ日にやることで学んだことを伝えられるようになると思って行っている。
  • ワークショップでは、「小学生に向けて学んだことを伝えるためには?」というテーマでプレゼンをしてもらったりしている。
  • 若者を対象にしているので、柔軟な発想をしてほしいし、平和学習を難しく考えないユニすることが狙い。

動画の作成

  • 今年は新型コロナウイルス感染症の影響で「被爆ピアノコンサート」は開催できない。
  • 広島を訪れることができない人に伝えることを目的に作成。
  • 平和学習の導入として誰でも見られるようなものにしようと思ってつくった。
  • 選曲は、「花は咲く」。
    • 災復興ソングだが、歌詞に悲しい事や辛い事を乗り越えて未来に向かっていこうというメッセージがある。
    • そういう意味で、今の私たちに通ずる部分があると思ってこの曲を選んだ。

私の想いや考え

「できるだけ活動の中で、私の想いや考えを伝えないようにしていますが、今日は特別に笑」(理由は後述)

私が活動を続ける理由

  • 被爆者の方から、若者が記憶を受け継ぐことの大切さを学んだ。
    • 被爆者の方は、証言の最後に「みなさんのような若い人がこの体験を引き継いでくれることを願っています」とおっしゃる。
    • そういうことを自分が伝えていかないという使命感。
  • 高校まで広島で大学の進学を機に上京した。広島を離れてから8月6日への温度差を感じる。
    • 「来週8月6日だから広島に帰るね」と友達に言うと「8月6日って何かの祝日だっけ?」って言われたこともある。
    • 塾の講師をアルバイトにしているが、生徒と話していて歴史の一幕としかみられていないのだと感じる。
    • 広島の人は、被爆者が親戚というのが当たり前の中で育ってきて身近だったが、他県の人にとっては、教科書の1ページでしかない。
    • ここは自分がアプローチして変えていきたい。

イベントや講演の際に心掛けていること

  • 「怖い」という導入を作らないこと。
    • 中学生のころまで、怖くて原爆資料館を見ることができなかった。
    • それを思い返したときに自分でも残念に思う部分があるからこそ、「怖い」だけで終わってほしくない。
    • 「怖い」からどうするべきか、を考える機会を与えたい。
  • 無関心の人に興味を持ってもらうような内容に。
    • 講義チックなことではない切り口がいろいろある(ピアノもその1つ)。
    • 参加者・聞き手の特徴やバックグラウンドを生かしてテーマ設定をする。
    • 動画のときも、歌うのが得意な人やアナウンスが得意な人に声を掛けてつくった。
    • いろんなことに興味があるみんなで1つのものをつくるというのが大切だと思う。
  • 自分の「考え」まで伝えない。
    • エゴかもしれないが、ここはこだわっているポイント。
    • 例えば、理想的な未来に対して核兵器の廃絶は大きな一歩だが、核兵器を廃絶することを伝えるのではなく、核兵器廃絶の動きがなぜあるのかを伝え、参加者や聞き手自身が考えるようにしている。
    • 知らない事を考えることはできないので、考えるための材料・知識を自分が提供できるようになりたい。
    • ゴールだけ伝えてしまうと前提の情報を知らないまま終わってしまう。だからこそ、その過程を伝えることを私は頑張りたいと思っている。
    • 自分ができるのは被爆の実相を伝えて考える一助にしてもらうことだと思うから。

講演参加者の声(一部)

「中村さんの活動に、周りの人はどんな反応をしているんですか?」(京都府・院生)

───広島の人はこういう活動に対して寛容というか、慣れているので特に目立った反応はありません。 東京の友達にはすごいね、って言われます。なので、すごいねと言われることに最初は抵抗がありました。でも最近は、それ(私の活動)をきっかけにこういう問題を知ってくれるのはいい事だと思うようになって、最近は抵抗感がなくなりました。

「行動の原動力は何ですか?」(大阪府・学部生)

───人とのつながりはかなり重要視していて、自分の話に興味を持ってくださる方には、できるだけ伝えるようにしています。いろんな意見の人がいるのは当たり前のことなので、こういう風につながって話していくことがみんなで平和を作っていくことの1歩だと思っています。自分1人じゃできないことはたくさんあるし、そういうところで繋がって頑張っていくことが大事だなと思っています。

「自分の考えを伝えるのではなく、考えてもらうきっかけを作るというのはなるほど!と思いました」(広島県・学部生)

「卒業後、がんばりたいことはありますか?」(広島県・学部生)

───今4年生で東京に就職をするんですよ。だから、まずは広島と離れていても活動する母体をつくれればいいと思っています。コンサートも広島拠点にやっていたので、体力的にもしんどい部分もあったし、広島県外の人に伝えていきたいと思っているので。

Action! for Peace

広島で生まれ育った大学生によるグループ。今まで学んできた原爆の恐ろしさを伝え、たくさんの人に、平和について考えてもらうきっかけづくりをしていきます!

ページの先頭へ