第11回全国院生生活実態調査 概要報告

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2021年6月15日
全国大学生活協同組合連合会 全国院生委員会
※データの無断転載はお断りします

全国大学生活協同組合連合会(以下全国大学生協連)は、2020年秋に第11回全国院生生活実態調査を実施いたしました。

全国院生生活実態調査は、大学院生の生活実態を調査し、院生生活を向上させるための調査で、2016年からは2年に1度実施しています。全国規模で大学院生の生活について調べた調査は希少で、「普段どんな生活をしているかわからない」と言われることが多い大学院生の生活の実態を知る上で貴重な調査となっています。

この概要報告は、全国大学生協連・院生委員会の現役大学院生が分析・執筆を担当しました。

今回の調査結果の特徴は、大学院生の経済生活、大学生活、日常生活に新型コロナウイルス感染症拡大の影響(コロナ禍)が様々な影響を及ぼしていることがデータに現われていることで、以下の点があげられます。

1
経済生活では、コロナ禍の影響で収入、支出ともに減少。
  • 収入は、「小遣い」「仕送り」減少。世帯収入減少が背景にあると思われる。
  • 「アルバイト収入」「奨学金」も大きく減少。
  • 支出は「食費」「趣味・娯楽費」が減少しており、コロナ禍での行動制約による影響が見える。
2
大学生活では、登校日数・研究時間は若干の減少にとどまっているが、研究活動への影響は小さくない。
  • 登校日数は前回調査(18年)よりも1日減少しているが、学部生よりかなり多い。オンライン授業は逆に大学院生が学部生より多いが、登校日数は多いのでキャンパス内での研究はある程度できたものと思われる。
  • しかし、「院生同士の日常の意見交流がなかった」「教授とのコミュニケーションがとりにくかった」との回答が目立っており、研究が十分に深められないと感じている人が多いことがうかがえる。
  • 実験や、文献を読むことができても、その結果のアウトプットを学会発表や同僚・教員などとのディスカッションなどで深めることをやりきれなかったという影響がある。
3
日常生活では、次の特徴があげられる。
  • 「将来の進路」についての悩みが増加。
  • よく利用するメディアは「テレビ」よりも「ニュースサイト・まとめサイト」や「Twitter」。
  • 読書時間は研究のための読書時間が長い。
  • 就職活動の開始時期が早まっている。

調査概要

調査の目的

大学院生の経済的生活、日常生活、研究生活、進路、生協事業のとらえ方などを明らかにし、結果を大学生協の諸活動や事業活動、大学院生の研究生活向上にいかす

調査方法

Web調査(郵送またはメールで調査依頼し、Web上の画面から回答)

調査実施時期

2020年10月〜11月

調査対象

全国の国公立および私立大学に在籍する修士課程(博士課程前期)・博士課程(博士課程後期)・専門職学位課程の大学院生

回答数

3,244名(回答率35.3%)

調査項目の概要

収入・支出、奨学金受給、アルバイト、登校日数、研究時間・場所、悩み・ストレス、就職活動、読書時間、大学生協利用状況など

<サンプル特性>

  • 25大学生協が参加、3,244名から回答を得た。
  • 前回(18年)調査の構成と比較し、設置者で国公立大、住居形態で自宅外生比率が増加した。

1.大学院生の経済生活

コロナ禍の影響を受けて、収入・支出ともに減少した。
アルバイトの雇止めやシフトの減少などの状況が生じている。アルバイト収入は自宅生よりも下宿生の減少が大きい。
支出において、「食費」「交通費」「趣味娯楽費」の減少など、コロナ禍の行動制約による影響が見られる。
奨学金受給額は引き続き減少。 貸与奨学金を学部生時代より長期にわたり受給している院生は、将来的な返済の不安が大きい。

(1)1ヶ月の生活費(図表1)

※1ヶ月の生活費はサンプルによるデータのばらつきが少ない修士課程についての報告とする。

1)自宅生の生活費

  1. 収入
    • 収入合計の平均額は73,400円となり、前回(18年)調査と比較して7,900円減少している。
    • 減少が著しい項目は「小遣い」で、前回調査と比較して5,600円減少し、13,400円となっている。コロナ禍で世帯収入に影響があり、「小遣い」の減少の背景になっていると推測される。
    • 一方で、「アルバイト収入」については前回調査とほぼ変化がない(18年+100円)。
    • 「奨学金」が18年20,900円→20年18,600円と大きく減少。
  2. 支出
    • 支出合計の平均額は72,100円となり、前回(18年)調査と比較して8,600円減少している。
    • 減少が著しい項目は、「食費」13,700円(18年▲4,700円)、「趣味・娯楽費」12,200円(同▲1,800円)となった。コロナ禍での様々な活動制限や、支出の節約などが背景にあると推測される。

2)下宿生の生活費

  1. 収入
    • 収入合計の平均額は128,000円となり、前回(18年)調査と比較して11,700円減少している。
    • 減少が著しい項目は「仕送り」で、前回調査と比較して6,200円減少し、62,500円となっている。コロナ禍で世帯収入に影響があり、「仕送り」減少の背景になっていると推測される。
    • また、「アルバイト収入」が前回調査と比較して2,700円減少し、「奨学金」も18年36,300円→20年30,700円と大きく減少。下宿生の経済生活が厳しくなっている。
  2. 支出
    • 支出合計の平均額は127,800円となり、前回(18年)調査と比較して11,100円減少している。
    • 減少が著しい項目は、「住居費」48,200円(18年▲4,700円)、「趣味・娯楽費」12,900円(同▲1,700円)、「食費」29,200円(同▲2,100円)となっており、コロナ禍での様々な活動制限や、支出の節約などが背景にあると推測される。

(2)奨学金・学費(図表2~4)

  1. 日本学生支援機構の奨学金の「貸与を受けている」は33.0%、「申請したが受給していない」1.9%、「申請しなかった」65.1%となっている。日本学生支援機構の奨学金の「貸与を受けている」は13年44.7%、16年39.5%、18年34.1%と減少が続いている。また住まい別では自宅生26.4%、下宿生36.4%と下宿生が多く貸与奨学金を受給している。専攻別では文科系20.5%、理工系36.5%と理工系院生の貸与奨学金受給が多い。
  2. 日本学生支援機構やその他の貸与奨学金を「受給している」33.7%(自宅生27.0%・下宿生37.0%)を100として、65.0%(自宅生61.9%・下宿生66.2%)が将来の奨学金返済について不安(「大いに不安」+「多少不安」)を感じている。学部生73.4%と比べて不安感が薄らいでいるように見えるが、学部生時代から引き続き貸与奨学金を受給している院生(20.1%)は、学部生時代から貸与奨学金を受給しているを100として、「大いに不安」+「多少不安」76.1%と不安が大きい。
  3. いずれかの奨学金(貸与・給付)を「受給している」41.6%のうち、奨学金の使途として、「生活費(食費や住居費)」は24.8%(16年33.5%・18年25.7%)と減少傾向が続いている一方で、「大学納付金」は15.4%(16年16.0%・18年14.3%)と横ばい状況が続いている。
  4. 学費免除については、「全額免除」9.3%(自宅生6.3%・下宿生10.3%)、「一部免除」14.1%(自宅生11.2%・下宿生15.4%)と免除の程度に関わらず、生活費が高い下宿生に多い。
  5. 研究機関や財団などから個人研究費の補助を受けている割合は、自宅生が10.5%、下宿生が12.9%となっており、下宿生が若干多い。
  6. この半年間に個人で負担している平均金額については「学会費・学会参加費・学会参加のための旅費や宿泊費」が13,300円(18年▲24,100円)、「フィールドワークなどの調査費用」が21,900円(同▲19,600円)と大幅に減少している。コロナ禍によって、研究活動のオンライン化や在宅研究などが広がっていることを裏付ける。また、研究活動にかかる費用を院生の個人負担にさせないように配慮・ルール化している研究室が多いことも一因と推測する。
  7. 学費の負担は、複数回答で「親」66.2%が最も多く、それに次いで「本人(奨学金)」14.7%、「本人(貯金・アルバイトの賃金など)」11.0%(文科系19.3%・理工系7.6%・医歯薬系24.4%)となっている。
  8. 現在の暮らし向きの感じ方については、18年比で「大変楽である」+「まあ楽である」が1.0ポイント減、「やや苦しい」+「大変苦しい」が0.3ポイント減となった。院生の「大変楽である」+「まあ楽である」が40.8%に対し学部生は61.9%、一方「やや苦しい」+「大変苦しい」は院生21.7%、学部生7.2%で院生の「苦しい」が多い。

(3)アルバイト(図表5~6)

  1. 「現在アルバイト(教育・研究目的に大学内で雇用されるティーチング・アシスタント、リサーチ・アシスタントを含む)を行っている」は65.1%で、過去の調査(13年42.8%・16年60.0%・18年65.7%)から続いてきたアルバイト就労の増加傾向は止まっている。また1ヶ月のアルバイトの収入額が自宅生・下宿生とも減少していることから、一人当たりの勤務日数・時間が減っていると考えられる。
  2. 1ヶ月のアルバイト収入が収入全体に占める構成比は、修士下宿生20.9%(18年+5.1ポイント)、修士自宅生40.6%(同+4.1ポイント)と修士自宅生が高くなっている。生活費の支出額が大きい下宿生は、自宅生と比較して収入に占めるアルバイトの構成比が低い。
  3. この半年間(20年4月~10月)でアルバイト収入が「減少した」+「大きく減少した」は42.4%となっており、コロナ禍の影響を大きく受けている。特に留学生は、「減少した」+「大きく減少した」が54.7%で半数以上となっており、生活への影響が大きいと懸念される。
  4. この半年間(20年4月~10月)でのアルバイトの状況について、「アルバイト先の休業で勤務できなかった」(9.8%)、「アルバイト勤務・シフトを勤務先から減らされた」(10.5%)と、感染症の影響によってアルバイトがいつも通りできないという状況に直面したことが分かった。

2.大学生活

登校日数は減少しているものの、学部生に比べると登校日数はかなり多い。
コロナ禍が研究に及ぼした影響として、実験が行えなかった、学会がなかった等とともに、院生同士や教授とのコミュニケーションがとりにくかったと指摘されている。

(1)研究生活(図表7~11)

  1. 院生の1週間あたりの登校日数は平均3.8日と、学部生の2.0日と比較して多く、また文科系院生の2.3日に対し,理工系院生は4.0日と多い。前回(18年)調査と比較して登校日数は減少(18年平均4.8日)しており、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策として大学構内立ち入り制限があった影響と考えられる。
  2. 授業形態は「すべてオンラインで行われている」が院生44.6%、学部生26.5%となっている。また「対面とオンラインがあるがオンラインが多い」は、院生22.2%、学部生46.3%となっている。
  3. 主な研究場所についても大学構内立ち入り制限の影響が結果に出ている。18年から20年の変化は、「所属研究室」が85.1%→74.9%と減少し、「自宅」が9.1%→20.6%と増加している。
  4. コアタイム(研究室にいなければならない時間)の有無については、コアタイムが「ある」は24.0%となっており、専攻別では、文科系4.8%・理工系 27.9%・医歯薬系29.8%と大きな差がある。
  5. コアタイムのある人のコアタイム平均時間は7.4時間(18年▲0.3時間)、コアタイムのない院生の平均研究時間7.9時間(同▲0.6時間)と若干短くなっている。
    コアタイム時間は、「7時間未満」が4.3%と、前回(18年)調査の3.7%より増加。コアタイムが「7時間以上」は減少しており、「8~10時間」は0.8ポイント減、「10時間以上」は1.2ポイント減となっている。
    コアタイムのない院生の研究時間も同様に、「7時間未満」が増え、「8時間以上」が減っている。

(2)新型コロナウイルス感染症拡大の影響(コロナ禍)により変化した研究生活(図表12)

  1. 研究活動にコロナ禍がどのような影響を及ぼしたかを、緊急事態宣言発令された20年4月~5月と、現在(20年10月~11月)について質問した。その結果、「影響なし」の回答は、20年4月~5月の緊急事態宣言発令中では5.6%、現在(20年10月~11月)では25.1%であった。緊急事態宣言中は大学構内立ち入り制限が多数あり、ほとんどの院生の研究活動に影響した。緊急事態宣言が解除されて以降も、大多数の院生に研究活動への影響が出ている。
  2. 緊急事態宣言発令中の20年4月~5月は、「学会」「実験」「データ解析」「調査」など在宅ではどうにもできないところで影響が出ている。
    また、現在(20年10月~11月)では、大学構内立ち入り制限が緩和されたとはいえ、「学会がなかった、形式が変わった」41.0%や「院生同士の日常の意見交流がなかった」31.6%、「ゼミが通常通りできなかった」24.5%など、かなりの影響が続いていると言える。
  3. 十分な研究が行われないことによる二次的な影響では、「学会発表ができなくなった」23.8%、「就職への影響が考えられる」29.0%など、6割の院生が影響ありと捉えている。

3.日常生活

コロナ禍の影響か、「将来の進路」についての悩みが増加。
よく利用するメディアは「テレビ」よりも「ニュースサイト・まとめサイト」や「Twitter」。
読書時間は研究のための読書時間が長い。
政府の新型コロナウイルス感染症拡大防止対策への評価は学部生よりも高い。

(1)大学院生の悩み・ストレス(図表13~15)

  1. 悩みやストレスが「ある」は61.8%。前回(18年)調査と並んで07年以降最低値(07年81.5%・10年75.3%・13年68.7%・16年72.3%・18年61.8%)。男性57.4%・女性73.0%、専攻別では、文科系74.9%・理工系58.3%・医歯薬系65.8%となっている。
  2. 悩み・ストレスの原因としては、「研究活動」46.6%、「将来の進路」37.8%、「自分の性格や能力」27.8%と続き、前回(18年)調査と比べて上位の項目は大きく変化していない。一方で、「将来の進路」を悩み・ストレスの原因としてあげる人は、10年調査以降の減少傾向から一転して、今回は37.8%と増加(18年+4.6ポイント)した。
  3. 今回の調査では、悩み・ストレスの原因として「新型コロナウイルス感染症対策に関すること」の選択肢を追加した。これを悩み・ストレスの原因とした人は10.6%。理工系(8.8%)や医歯薬系(8.7%)と比較して、文科系(19.3%)に不安を抱えている人が多い。また、留学生は22.0%で、留学生以外10.0%の倍以上となっている。
  4. ストレスが「あり」、リフレッシュの手段を「持っている」は44.1%(文科系50.2%・理工系42.5%・歯薬系46.2%)。
  5. 意識的に週1回以上の運動を「行っている」は69.7%と、前回(18年)調査(44.2%)と比較して25.5ポイント増加した。男女差や専攻分野による差は、ほとんど見られない。
  6. 運動の内容で多いのは、「筋力トレーニング」27.6%、「ウォーキング」25.5%、「サイクリング」17.1%と、前回(18年)調査と比べ、個人でできる運動に取り組む人が増えている。
  7. 1週間の運動時間は「1時間以上2時間未満」16.3%、「2時間以上3時間未満」11.2%で、運動をしている人の平均運動時間は1時間52分となっている。

(2)メディアの利用(図表16~17)

  1. 政治や社会の情報を入手する際によく利用するメディア(複数回答)として、「ニュースサイト・まとめサイト」が61.2%、「Twitter」が55.8%、「テレビ」が48.0%となっており、「ニュースサイト・まとめサイト」や「Twitter」が「テレビ」を上回る結果となった。
  2. 最も信頼がおけるメディア(単一回答)として挙げたのは、「ニュースサイト・まとめサイト」が26.9%、「テレビ」が19.0%、「Twitter」が13.9%となった。

(3)英語学習と読書時間(図表18~20)

  1. 院生が英語学習で最重視している能力は「スピーキング」が35.4%、「リーディング」が32.7%と続く。専攻別では、理工系(スピーキング36.5%・リーディング31.7%)や医歯薬系(スピーキング38.2%・リーディング30.9%)でスピーキングを重視しているのに対し、文科系(スピーキング29.2%・リーディング37.8%)は比較的リーディングを重視している。
  2. 英語力向上のために日常的に行っていることが「ある」は21.7%と、前回(18年)調査(26.0%)と比較して減少した。医歯薬系が、文科系や理工系より高い結果となった(文科系23.7%・理工系20.6%・医歯薬系27.3%)。英語学習をしている人の費やす平均時間は1週間に5.8時間と、前回調査(5.9時間)とほぼ変わらない。文科系7.1時間(18年▲0.4時間)、理工系5.6時間(同+0.2時間)、医歯薬系5.1時間(同+0.5時間)と、英語学習時間はどの専攻でも大きな変化は出ていない。
  3. 研究や講義関係を含む1日の平均読書時間を「0分」と答えた院生は修士課程で19.8%(18年▲19.3ポイント)、博士課程は10.9%(同▲11.7ポイント)、専攻別では文科系5.1%(同▲6.6ポイント)、理工系21.1%(同▲22.2ポイント)、医歯薬系23.6%(同▲17.7ポイント)となった。今回調査では設問に「読書には研究や講義関係を含む」と明記したため、「0分」の回答が減少したと考えられるが、コロナ禍による入構制限等で、主な研究活動が文献・論文の調査となり読書時間が増えたと考えられる。
  4. 1日に90分以上読書(研究や講義関係を含む)をする人は、理工系で19.0%だが、文科系では53.4%となっている。読書をした人の平均時間で比較しても、理工系が平均57.9分/日である一方、文科系では135.4分/日と二倍近くの差がある。専攻分野の特性と考えられる。
  5. 毎日30分以上を読書(研究や講義関係を含む)に充てる人の割合は、留学生70.9%、留学生以外63.1%で、留学生のほうが毎日読書をする人が多い。
  6. 院生は学部生よりも書物や文献に触れている時間が長い。1日の読書時間「0分」が、院生18.6%に対して学部生47.2%と大きな差がある。特に文科系は1日の読書時間「0分」が、院生の5.1%に対して学部生の44.8%と顕著であり、読書をする人の1日の平均時間でも、院生89.9分/日、学部生63.0分/日となっている。

(4)社会・政治への関心(図表21)

  1. 「日本の未来は明るいと思うか」という質問に対して、「とても思う」+「まあ思う」は36.8%となった。学部生が31.7%であることと比較して、院生の方が未来を前向きにとらえている。なお、専攻による差はほとんどない。また留学生は「とても思う」+「まあ思う」が76.8%となっており、日本人の院生よりも前向きに未来をとらえている。
  2. 「政府の新型コロナウイルス感染症対策についてどう考えるか」という質問に対しては「大いに評価できる」+「評価できる」49.7%、「あまり評価できない」+「全く評価できない」38.1%となっている。評価は専攻、性別、課程によって差が大きい。また、学部生全体の「大いに評価できる」+「評価できる」38.3%と比較しても差が大きい。
  3. 「政府の新型コロナウイルス感染症対策についてどう考えるか」という質問に対して、「わからない」が院生11.9%に対して、学部生18.9%となっていることから、政治の動向に注目し自分なりに意見を持ち表明できたり、社会全体の状況を判断したうえで政策の是非を検討する院生が学部生よりも多いと考えられる。
  4. 「SDGsを知っているか」という質問に対して、「名称も内容も知っている」は71.1%、「聞いたことがある」は20.4%と、認知している合計は91.5%となった。学部生87.2%と比較して院生の認知度が高い。認知度が9割を超える背景は、社会全体で認知が広がっていることはもちろんだが、大学のビジョン・中期計画に取り入れて、講義などが行われているためと考えられる。また学部生よりも認知度が高い理由は、各人の研究活動が社会に貢献する点について、授業などで考える機会が院生にあるためと推測する。
  5. 「SDGsの中で関心のある目標(複数回答可)」については、「質の高い教育をみんなに」38.4%、「すべての人に健康と福祉を」33.0%、「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」28.9%、「働きがいも経済成長も」28.7%と続いている。

4.進路

大学院への進学を決めたのは学部3年生時代が最も多い。
大学院進学後の就職活動は早期化傾向。

(1)修士課程や博士課程への進学 (図表22)

  1. 大学3年生の時に進学を決めた院生が37.6%と最も多い。大学院へ進学した理由としては「高度な専門知識や技能を身につけたかった」63.3%(文科系62.4%・理工系64.2%・医歯薬系57.8%)、「自分の興味をより深めたかった」53.3%(文科系64.3%・理工系51.1%・医歯薬系49.5%)という理由が多く、理工系ではさらに「就職に有利だと思った」が 56.3%(文科系16.1%・医歯薬系33.8%)、「進学するのが当たり前だと思っていた」も35.9%(文科系6.7%・医歯薬系 25.8%)と多い。
  2. また学部と同じ大学の大学院への進学は80.9%(文科系 50.5%・理工系89.8%・医歯薬系65.8%)で、この理由としては「今までの研究を続けたかった」が43.3%、「他の大学院に行くより楽だから」17.0%が多い。一方学部とは違う大学の大学院に進学した(15.2%)理由としては、「同じ研究でも先進的だった」5.1%、「別の分野の研究をしたかった」4.7%が多い。
  3. 修士課程修了後、博士課程進学者(予定含む)8.3%を100とした進学理由は「研究を続けたい」が半数を占めている。
  4. 一方、修士課程修了後に就職予定75.4%の理由は、「社会に出たい」61.0%が最も多く、「経済的事情」19.0%と「研究に満足」13.7%が続いている。

(2)大学院進学後の就職(図表23~26)

  1. 社会人を除いた院生のうち大学院進学後に就職活動を「した」は63.7%(18年50.5%)。学年別では修士1年生が52.4%(18年+30.5ポイント)、そのうち31.0%(18年+20.4ポイント)が4~6月に就職活動を開始しており、就職活動が早まっている。
  2. 修士2年生の就職活動の終了時期は修士2年生の4~6月が4割に減少し、1~3月が18年+7.4ポイント、7~9月が18年+3.6ポイントと分散化している。また、就職活動を継続している修士2年生が5.9%(18年+2.6ポイント)と長期化している。
  3. 大学院進学が就職活動に有利だったこと(修士2年生)は専攻によって違いが見られる。文科系では、有利だったことは「特にない」が32.7%と突出して多く、大学院進学が就職に有利と思わない人が多い。理工系では「特にない」も19.0%いるが、「給料が高い」21.3%、「希望の職種に就ける」26.0%と就職に有利な点をあげている。医歯薬系は「特にない」が32.5%と多く、有利な点として「希望の職種に就ける」は26.0%だが、「給料が高い」は13.0%と比較的低い。
  4. 就職活動の際の情報源としては「インターネットの就職情報サイト」45.0%や「企業のホームページ」33.6%、「先輩」31.1%が多くあげられている。
  5. 就職活動の進め方としては「自由応募のみ」43.0%、「自由応募と推薦の両方」16.9%が全体では多くを占める。「学校(教授)推薦のみ」は2.6%。しかし文科系と医歯薬系の就職活動経験者(それぞれ39.9%と48.3%)を100として9割程度(それぞれ93.5%と92.1%)が「自由応募のみ」であるのに対し、理工系は就職活動経験者(70.1%)を100として「自由応募のみ」が62.9%、「自由応募と推薦の両方」が30.7%と専攻による違いも見られる。