CASE 9

大学生の学びのパターンはさまざま。
この学びの多様化に大学生協の力を!

宮城大学
出貝 裕子准教授

出貝 裕子准教授


 

 

聞き手:大学生協東京事業連合 森川佳則
 

──出貝先生の大学と授業の様子を少しご紹介ください。
出貝:
宮城大学の看護学群の二年生を対象にした授業です。二年生は昨年一度後期に電子書籍を使った授業をした経験がある人たちです。 二年生でやる科目は高齢者に対する看護を学ぶ科目になりますが、高齢者が加齢とともにどんなふうに体に変化が起きてそれに伴って生活にどんな支障があるのかというのを学んでいきます。 しかし最近の学生さんは高齢者と一緒に過ごした経験があまりないことも多いので、いろいろ画像を使いDVDを一緒に配信したりとかしてなるべく具体的にイメージできるようにということで今回電子書籍を使って学んでもらっていますがDVDなどは非常に効果的だったかなと思っています。


──授業に慣れた学生様だからこそいろいろな機能を使って授業を行ったというふうにお聞きしているのですが、先生のところで何か授業の作りで工夫をお教えください。
出貝:
授業のつくりとして、基本的に学生はマーカーをつけ、付箋を書くということは一度経験しているのでそれらをグループワークの中で実際に活用できることを想定して組み立てをしています。 実際に今まで紙で書いていたものを付箋にしてそれを共有するということをしていました。


──書かれたワークの中に、また先生の方から講評を返されるようなことでしたね。
出貝:
そうですね。はい。学生が書いてくれた付箋に対してそれが方向性として合っているのかどうか、追加することがないかということを返しています。


──紙とのワークではそこで終わってしまいますが、家に持って帰って他のグループの話であるとか、先生のポイントが見られるというのが今回の狙いだったわけですよね。
出貝:
そうですね。2年生なのでまだ自分の見方がまだまだ狭いので、他の多くの人たちの意見を知るということが大事なポイントになってくるので、そういった意味で他のグループや他の人たちの意見を自分のものにしていくプロセスを踏めるのではないかと思います。


──授業の前に資料を配ることでなるべく授業ではワークをする時間が確保できて反転的に学習が進められたという事でしょうか?
出貝:
本来は学生に自己学習をしてきてもらって、授業に臨んでもらいたいということで前々日に資料の配信をしていますが実際のところそこまでちゃんと見てきてくれているかどうかは何とも言えないところがありますが、作りとしてはなるべく授業は発展的というか、知識を使って何かを考えるというようなことに使いたいと思っています。


──動画をコンテンツとして学生さんに見てもらうというところも重要視されていたと伺っています。そこの部分も少しお教えください。
出貝:
動画は、最近の学生さんが高齢者と一緒に住んだ経験があまりなかったりするので、実際に高齢者の人が日常生活でどんなふうに生活の仕方をしているのかというのを、動画を見て確かめることができますし、これまでですと授業中に一度見せてそれで考えてもらうということだったんですけれども、配信してあるのでいつでも好きな時に自分の空き時間でそれを確認できることになって配信しています。


──患者さんの許諾の関係で学生様にしか配れないものを電子書籍の中に組み込 むことで学生さんだけに配布できるということですね。
出貝:
そうですよね。高齢者の日常生活、普段の生活、おうちでの様子を映したものになりますのでその撮影にあたっては看護教育に活かすために撮影させてもらっているということもありましたので、他の一般の人に見てもらうということではなく、ごく限られた集団の中で授業のためにというか学習のために使うという目的があるので、実習して→履修している学生にだけ見れるようなシステムにしてもらっています。


──逆に、学生さんがどのように学んでいたか、先生のところで見える部分で昨年と変わったとか、良くなったという部分があればお教えください。
出貝:
学生がどこにマーカーを引いたとか、どういうコメントを付箋に書いているかというのは、ログを見ればわかるのでそこで本当にこっちが重要ですよと言ったことが伝わっているのかを確認することはできるのですけれども、そこのすり合わせというか、こちらでもっと強調した方がよかったかな…というようなすり合わせができたりとかしますので、学生にどれだけ伝わったかを確認しながらできるようになったのではないかと思います。


──私が授業にお伺いした時は紙の教科書を追加購入している学生さんもいますし、タブレットとパソコン2個を使っている学生さんもいます。 自分の学習スタイルというのがいろいろみなさんあるようで、画一的ではない中で授業をするというのはたいへんご苦労があったと思うのですが、そのあたり、学生さんを見ていて思う事含めてお教えください。
出貝:
学生は最初から教科書を買う段階で、私は紙にしますという学生もいました。 ですので、いろんな教科書…電子のものを持っている人もいるし教科書を紙で買った人もいます。 授業の中でも実際にプリントアウトしたものにメモをしたりする学生もいますし、やり方としては様々でパソコン上で見ながらスマホやタブレット両方使ったりとかして、一方は教科書、一方は配布資料とか様々な工夫をしてやっていたように思います。


──そうですね。大学生の学びというのは画一的じゃなくて多様性があり、その子のやりたいという形を重視するというところでしょうか?
出貝:
大学生なので自分なりのスタイルがだんだん確立されていると思いますし、学び方は様々だと思いますので、その人がやりたいように自分で組み立ててやってくれれば多様な方法でいいのかなと思います。


──老年看護のグループでは先生方で集まってこの電子の取り組みであるとかそういうところを皆さんで学び合ってきたと思います。 そのあたりで話されたことや考えたこと、前に一年生の時にやられた大塚先生から聞いたこととかで何か話し合われたことで印象に残るところなどはございますか?
出貝:
一年生で使った時にはまだ学生が慣れていなくて、授業の展開というか、次どのページを見たらいいのかとか、どこの図を見たらいいのかということが、「ついていけなかった」という意見が、一年生の授業を担当した教員から出たので、そういう事があまりないように、次どこのページへ行くのか、みんな行ったのかを確認したりとか、あとはあまり行ったり来たりしない様に、ある程度まとまったところでできることを、教科書なら教科書、配布資料なら配布資料でまとまるように構成はしています。


──まさに先生同士の学び合いですね。
出貝:
そうですね。経験した教員のいろんなアドバイスなり、困ったことや時間がかかった事などを聞いて、そこがなるべくスムーズになるように工夫しています。


──最後の質問ですが今後大学生協に期待することがございましたらお教えください。
出貝:
電子書籍を使っている教員でも、私なんかもPCの操作はすごく苦手なところもありますし、そもそも仕組みがよくわかっていないで、使っているところもあるので、そういった面でサポートをお願いし、「こうしたい」というのを技術的にそれが可能なのかどうかというのを、一緒に考え教えてもらったらいいのかなと思います。


──是非一緒に考えていきたいと思います。本日はありがとうございました。

 
出貝 裕子(でがい ゆうこ)
2006年3月 東京都立保健科学大学大学院博士前期課程修了
2012年3月 首都大学東京人間健康科学研究科博士後期課程単位取得満期退学
【担当科目】スタートアップセミナー、アカデミックセミナー、老年看護援助論Ⅰ、老年看護援助論Ⅱ、老年看護学実習、総合実習、卒業研究、老年健康看護援助論Ⅰ、老年健康看護援助特論演習、老年健康看護援助論演習
【専門分野】老年看護
【所属学会等】日本看護科学学会、日本老年看護学会、日本看護研究学会、日本認知症ケア学会、日本看護管理学会、日本看護技術学会、日本保健科学学会、日本ヒューマンケア科学学会
 
 

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