2024年07月04日(木) | 《特別TOPICS》
高校から大学受験、入学、大学生活、そして社会人になる流れの中で、学生の自立支援のために家計を支えるお金の話を伝えておくというのは、とても重要な事です。
今回は現役大学生、現役高校生の保護者、貸与型奨学金を受給した社会人、そして家政学教員の4名に参加頂き、各立場からの現状〜経験談を踏まえ意見交換を行いました。
全国大学生協連
東海ブロック学生事務局・
名城大学4年
吉田 宇宏さん
吉田:『お金の知識 しっかり養う!』座談会を始めて行きたいと思います。今回司会を務めさせて頂きます、大学生協連東海ブロック学生事務局の吉田宇宏申します。本日はとても緊張しておりますが、宜しくお願いいたします。
大薮:皆さんこんにちは、岐阜大学の教育学部の家政教育講座で家庭経済学や家庭経営学等を教えています、大薮千穂と申します。宜しくお願いします。
加藤:名古屋工業大学・工学部情報工学科4年生の加藤拓弥と言います。よろしくお願いします。
宮永:愛知大学生協 豊橋キャンパスの店長をしております、宮永聡太と申します。社会人としては、卒業してから8年経って30歳になりました。宜しくお願い致します。
赤井:赤井礼子と申します。前年度になりますが大阪府立高等学校でPTA会長を務めておりました。大学生二人、中学生一人と三人の子供がおります。色々とお話し宜しくお願い致します。
吉田:まず大藪先生から、実際の大学生活と家計とはどういうものかを紹介していただきます。それを踏まえまして、実際の学生の声や、保護者の声、社会人の声を伺いたいと思います。
家政学教員
岐阜大学
副学長・教育学部 教授
大薮 千穂 教授
大薮: 現在、岐阜大学で全学共通教育を1年生に対して、『生活の経済』という授業で、毎年100人ぐらいに教えています。あと消費者教育を1年生全員に対する「初年次セミナー」の講義でオンデマンド視聴できるようにしています。
18歳に成年年齢が引き下げられたので、クレジットカードを18歳から自分で契約できるようになりました。クレジットカードの使い方を銀行と一緒に作成しています。それと消費者被害は「こういう例があるから気をつけてね!」みたいな話もしています。
学生に、「自分のスマホ代、知っていますか?」と聞きますが、ほとんどが知らなくて、打出の小槌のようにお金が出てくると思っている学生もいます。「自宅生は家の仕事ちゃんとやっていますか?」「自分でご飯食べられて、トイレも行けて洋服も着られるのだったら、洋服ぐらい畳めるでしょう?」と話します。
親がやるのは当たり前だと思っている学生がすごく多くて…どうしてそれを親がやらないといけないか?と私は思うので、それをまず1時間目に話をするとみんな「はっ!」と気付くのですよね。どれくらい家のことをできているか?ということを考えてくださいと話します。
また下宿生は最初の頃はとても頑張ってご飯を作っていますが、途中で挫折するみたいなので、講義の中で料理の作り方のポイント、例えば「ほうれん草は茹でて使うのでガス代かかるけど、小松菜だとそのままいけるよ!」だったり、「茹で卵は思ったより時間かかるので、その上にザルを置いて野菜蒸したらいいよ」など、そういった話をしながら生活をちゃんとできるように話しますが、これは本来は親の責任だと思いますよ。
勉強さえしていればいいと思っているのか、家のことをさせないというか、家の事をさせるのはかわいそうだと思っている風潮があります。日本の母親って世界の中でも一番睡眠時間短いことを知っていますか?
何で親が大きな子供に、お弁当を作るため朝5時とか6時に起きて、身を削って時間を削ってやっていて、それが当たり前だと思っているのはどうかと。本当は自分で食べる分ぐらい自分で作ってと思います。
だけど、その辺が甘やかしなのか、優しすぎるというか、もっと学生本人が家のことをやっていないといけませんね。学生は私に「お風呂の洗い方はどうしたらいいですか?」とかを聞いてくる。
それだけ生活の仕方を知らないのが現状としてある。まず授業でそういう話をしてから、家に帰ってちゃんとできることやってくださいと伝えています。
それともう一つは、受験生にこのぐらいの費用が実はかかっていますよ!ということを話して、自身の教育費用を計算してもらいます。
これは大学生協の『全国の大学生の自宅生と下宿生の生活比較』という調査ですが、全国版なのでやはり東京と地方では金額は違います。同僚は、東京で暮らしている大学生のお子さんに10万円仕送りして、プラス10万円が家賃。だから20万円仕送りしているって話していました。キャンパスから下宿が遠いところになるとそれだけ不便になるし、女子学生でしたら、安全面とかから駅から近くてセキュリティーが良いとかってなると、値段も上がってしまう。その方は20万円仕送りして、自分の洋服を買う余裕はないと言っていました。
仕送り金が平均6万7千円ってなっていますけど、東京の大学となると大体10万円ぐらい払って、住居費も平均より高くなりますね。
自宅生はお小遣いを貰っているみたいですがアルバイトもして、あとは奨学金とかで暮らしているという実態が見えます。
生活費で見ると、下宿生は住居費の割合が結構高い!全体の5割ぐらいが住居費にかかっている事になります。
その中で学生さんも結構気にしながら、節約できるところはやっていかないといけないと思っているみたいですね。
以前私が行なった調査では、下宿生は4〜6月は大体5〜6万円の収入で暮らしている事がわかりました。
食費は1〜2万円弱です。これ1カ月ですよ!大人になったら一回の食事代で1万円くらいいってしまうかもしれませんけれども、学生って今でも1ヶ月2万円弱です。
主食が多いですが、外食の金額は5千円くらい。一回分では無く 1ヶ月の外食費です。つましく暮らしているのがわかります。
収入の4〜6月の平均値ですが、大体4万円弱で暮らしていて、自宅生は食費も少ないですけれども、外食費は下宿生と同じくらいですね。
支出は下宿生の方が多く、男女ではそれほど差がありませんが、食費平均は男子がおよそ1万2千円、女子がおよそ9千7百円で男子の方が多くなっています。
食費の内訳は、主食はやはり下宿生の男子が多い、嗜好品は女子の方が多い。性別によって違いがあり、男子の方が少し外食多めというのが見えてきています。
でも、なるべくご飯とか、そういったものをたくさん食べるようにして、腹持ちを良くしようとしているように見えますね。
自宅生は、交通通信費が高くなっている。あと教養娯楽が割合的には多くなります。
男子は食費が多く、女子は被服とか保健衛生の美容代・お化粧代とかが多くなります。
それと奨学金を貰っている学生が半数ぐらいいます。後で話しますけど、その奨学金の額が怖いですね。
全国の仕送り金は0円で生活している学生が8%ぐらいですけれども、62%からクッと下がっているのが10万円以上ということで、やはり95年以降からガクンと2000年代に入ってくると少なくなってきて4分の1ぐらいですね。一番多いのが5万円から10万円です。
奨学金ですが、国立大学では受給している学生が32.4%います。
奨学金は一種と二種があって、最近は給付型がありますので、給付だったら返還が不要になるけれども、受給できる人数は少ないですよね。
次の貸与型・無利息で見ますと、第一種奨学金は大学で4万5千~6万4千円借りています。
利息付きの第二種の返済例では、皆さん20歳〜40歳ぐらいまで払っています。あまり貸与額が高いと、自分の子供の教育費と重なりますよね。けれど、学生さんによっては10万円ぐらい貸与を受けている学生もいて、月10万円だと年120万円なので、4年間で500万円近いですね。
岐阜大学では多く借りている学生には「大丈夫ですか?」と聞き取りをしています。
ただこれがないと暮らせない学生も結構いますので、どうやってサポートしていくかが課題と思っています。
第二種奨学金返済額は、12万円借りて、もしも利息が3%だったら、返済総額にプラス200万円ぐらい利息を払わなくてはいけないことになります。卒業して約20年返済だとしたら、おおよそ40代半ばですよね。毎月3万2千円が払えるかどうか?払えそうな気がするけれど、子供がいたら毎月3万円返済というのは本当に大変で、夫婦両者ともが奨学金を返済、併せて約6万円払わなくちゃいけなくなってきて、とてもじゃないけど払えないっていう人もいます。
卒業したら収入がどのぐらいかを学生に教えて、給料明細の見方も教え、返済が大変だったら、専門機関に相談をと伝えています。
あと奨学金を借りる事は、高校生の時にどれだけ話を聞いているのかなって思います。
高校で大学受験の時に奨学金の話聞きますよね。本当にこれだけ借りて大丈夫ですか?という計算までさせているかというと、していないと思います。
また、学生バイトの注意点で、子供が稼ぎ過ぎると親の扶養家族から外れてしまうこともあるので注意しないといけないと話します。
コロナの頃はバイトがなかったので、学生は大変でした。
今でも大変な学生が多いので、大学に入った時から生活の仕方をしっかり教えていくのが大事だと思っています。
大薮:いつも学生には『自分にかかった教育費を計算してみましょう』と伝えています。そしてアルバイトの時給1,000円として週5日・1日8時間働いたとして、自分の教育費を払うためには何年間ぐらい働かなくちゃいけないのか?を計算してもらいます。そうするとみんな「親に感謝‼︎」みたいな感じで、「頑張って勉強します!」と感想を書いてきます。授業で寝ている場合ではないですよね。
それともう一つ『自分の家計を見直そう!』というのがありますけども、左側に全国平均が書いてあるので、生活費がどのぐらいかを計算してもらっています。
お金の知識を正しく身に着けよう! 「お金の知識 しっかり養う!」座談会(後編)に続く