大学生協でつながる

2024年12月17日(火) | 《特別TOPICS》 

東大生協主催のTALK EVENT「これからの大学と生協のあり方について考えよう」

これからの大学と生協のあり方について、“いま”根本から考え直す企画


東大生協(本郷)書籍店内にて
 

去る11/18(月)、標記企画がスタートしました。第1回は「大学と東京大学の未来」テーマに吉見俊哉先生(東大名誉教授)を登壇者(スピーカー)に迎えて、聞き手である玄田有史先生(東大生協理事長)が、数多くの有益なメッセージを引き出された画期的な内容でした。

今回のお話のベースとなる吉見俊哉先生のご著書『さらば東大』(p.178)には「旅する教師と学生の協同組合として発展した大学」という記載があります。東大生協が誕生した背景(歴史)を知ることは、「これからの大学と生協のあり方」を考える上で極めて重要な視点あると思われます。また、吉見先生が言われる「旅する教師と学生の共同体(コミュニティ)としての『横』の組織が原形」というご指摘は、産業革命期のイギリス、ロッヂデールに起源がある『協同組合』とも通じるものがあります。

吉見先生の「大学と学生のコミュニケーション回路をどうつくっていくか」、という問いに生協はどのように応えていけるのでしょうか。

そうしたことにも想いを馳せながら、主催された東大生協の玄田有史理事長、中島達弥専務理事に、同企画の背景や第1回目の印象、今後へ向けての想い等についてお伺いしました。
 
 

企画の紹介

 
2024年11月18日、東京大学生協は本郷書籍部でトークイベント「大学と東京大学の未来」を開催しました。第1回目のスピーカーとして、吉見俊哉名誉教授(現、國學院大学教授)を招き、玄田有史理事長との対談形式で進行。リアル参加24名、オンライン30名と、50名以上の参加がありました。本イベントは「東京大学の学費値上げ問題」を契機に、「大学の現状や将来の課題を多角的に理解し、組合員がともに考える場」を提供する目的で企画されました。

吉見教授は「大学とは何か?」という問いを軸に、「日本の大学の概念は律令国家の官僚養成機関としての『縦』の組織に由来し、一方でヨーロッパ起源の『University』は、旅する教師と学生の協同組合としての『横』の組織が原形」という歴史的背景を解説。また、東京大学の成り立ちに触れ、「南原繁総長による教養学部設立と生協創設が、大学を都市的コミュニティとして機能させる試みだった」と述べました。

さらに、大学の発展には「教育や研究の基盤となる生活機能の連携」が不可欠とし、「大学は、共通の目的を分かち合い協働できるコミュニティであるべき」という視点を提起しました。吉見教授はまた、大学を「社会での『いい演じ方』を学ぶ場」とし、「教養とは知識ではなく、演じる能力やそれを感じ取る能力である」と説きました。吉見教授の講演後、会場およびオンラインから多数の質問が出され、予定時間を超過する活発な討議が行われました。

今後、このトークイベントは連続開催され、第2回では「現在と未来の大学」に焦点を当てた議論を深める予定です。
 
 

玄田理事長からのコメント

 
吉見先生をお招きした第一回のトークイベントは、当日生協書籍部にお集りいただいた方々、オンラインで参加いただいた方々、どなたにとっても印象深い内容だったと思います。

社会に生きるとは、すべて演じることでもあるという吉見先生のお話は、東京大学および東大生協にかかわる誰もにとって、この大学という空間のなかで、自分の演じるべき真の役割とは何かを考えるきっかけをいただきました。

東大紛争の内実についてお話をうかがいながら、東京大学は、権威の象徴としてつねに批判の対象となる宿命にあることを改めて認識しました。それを謙虚に自覚しながら、自分たちのやるべきことを、横展開のつながりを大事にしながら、考えてはどうかというご示唆は、東大生協のこれからにも確実に通じるものでした。

大学や生協のこれからを考えるためのすばらしいヒントの数々をいただいた吉見先生にあらためて感謝申しあげます。次回以降もすばらしいゲストスピーカーにお越しいただく予定ですので、楽しみにお待ちください。
 

吉見先生と玄田先生による対談

吉見俊哉先生による講演のようす
 
 

中島専務理事からのコメント

 
本企画は今年の総代会において「学費問題について生協として主体的に取り組むべきだ」という総代からの修正動議が端緒です。「学費の値上げ」問題は「社会の中で大学はどうあるべきか」という問いにつながっており、学内外で注目を集める問題です。総代会では最終的に修正動議自体は否決されましたが、生協がこの問題とどう向き合っていくかということは問われ続けます。理事会では、生協の態度表明が議論の焦点になったことがありましたが、理事長をはじめとした学生理事・教職員理事の皆さんと協議を重ねる中で、賛否を明らかにすることが直ちに問題の解決にはつながらない、という当然と言えば当然の結論に至りました。批判をしても賛同をしても、結局問われるのは、所与の環境の中で「では、生協は何ができるのか?」「生協だからこそ取り組んでいけることは何なのか?」ということだと思います。

このような経緯から、大学の現状や将来の課題をさまざまな観点から理解し、今後の大学のあり方、東京大学のあり方について、組合員がともに考える場として本企画を開催することになりました。

大学のあり方を問いながら、その問いが、そのコミュニティへの貢献をミッションとする生協のあり方にまでつながっていくことが大切だと考えました。「大学のあり方」問題が、組織としての「生協」にとってはどこか他人事のようになってしまわないために大切な視点だと思っています。
 

企画に参加した現役東大生の声

 
当日、参加された現役東大生からも感想コメントを寄せていただきました。
 
  • 吉見先生のお話の中で、東大紛争を上演として見る方法により、外部の視点と内部の視点の両方が同時に可能になるという点が特に印象に残りました。(匿名)
  • 東大闘争について知ることができた。(匿名)
 
参加者は、外野から東大を他人事で眺めるのではなく、自分事で自身を取り巻く諸課題と向き合う良い機会になったのではないでしょうか。
第2回目以降の予定は、東大生協ホームページにて案内されますので、ぜひご注目ください。
これからの大学と生協のあり方について考えよう 第1回「大学と東京大学の未来」開催報告 – 東京大学消費生活協同組合
 
第2回開催報告はこちら
《特別TOPICS》東大生協主催トークイベント第2回開催「これからの大学と生協のあり方について考えよう」
 

PROFILE

吉見俊哉(よしみ・しゅんや)

東京大学名誉教授、國學院大学観光まちづくり学部教授。
東京大学大学院情報学環長、同大学副学長などを歴任。
社会学、都市論、メディア論、文化研究を主な専門としつつ、日本におけるカルチュラル・スタディーズの発展で中心的な役割を果たす。
著書に『都市のドラマトゥルギー』『東京裏返し』『敗者としての東京』など。

 
 

吉見俊哉先生の書籍紹介 4冊

 
 
 

PROFILE

玄田 有史(げんだ・ゆうじ)

東京大学社会科学研究所教授
東京大学消費生活協同組合理事長
【プロフィール】
1988年東京大学経済学部卒業、92年同大学院経済学研究科
第II種博士課程退学。学習院大学経済学部教授を経て現職。
専門は労働経済学。
著書に「希望学」(共著)、「希望のつくり方」、「危機対応の社会科学」(共著)、「地域の危機・釜石の対応」(共著)ほか。

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