「RICE MEDIA」トム 氏 インタビュー 社会課題の「未認知打破」に取り組む ~まず「知る」、そして「知り続ける」ためのアプローチ~

『知り、知り続けてもらうこと、それが社会課題に関心を持ってもらうための第一歩です』。「RICE MEDIA」トムさんは視聴者に訴える企画を練り、さまざまな場所に取材し、SNSを通じてそれらを発信し続けています。根底にあるのは、高校時代に自分の「やりたい」の原型に気付いたことでした。社会の役に立ちたい、困っている人を助けたい。その想いは、それから先のトムさんの人生を貫き、今に至っています。
全国学生委員会は、社会問題を魅力的に伝えることで大きな反響を呼んでいるメディアクリエーターのトムさんにインタビューし、同じように全国の仲間に情報を発信する立場として、さまざまな教示を頂きました。

インタビュイー

起業家・メディアクリエーター 
「RICE MEDIA」トム 氏

プロフィール

聞き手

全国大学生協連
全国学生委員会 副委員長

加藤 有希(司会・進行)

全国大学生協連
全国学生委員会

上木 太陽

全国大学生協連
全国学生委員会

杉山 直輝

(以下、敬称を省略させていただきます)

はじめに 自己紹介とこのインタビューの趣旨

本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます。私は全国学生委員会の加藤有希と申します。今年3月に広島県の福山市立大学を卒業しました。

同じく全国学生委員会の上木太陽と申します。兵庫県の関西学院大学をこの春卒業しました。いつもYouTubeを拝見しております。今回トムさんにインタビューを申し出たのは僕なので、それがかなってとてもうれしく思っています。

同じく杉山直輝と申します。2022年に東京農業大学を卒業しました。本日はよろしくお願いいたします。

大学生協ではリサイクル容器を使ったお弁当を販売し、その容器を回収する取り組みをしており、プラスチック削減など環境問題について学生が理解し考える機会となっています。
トムさんの動画『1ヶ月使い捨てプラスチックを使わずに生活してみた』や『フードロスだけで10日間生活してみた』などで、ご自身で体を張って環境問題を発信されている姿を拝見しました。環境問題に対して取り組んでこられたトムさんの視点から、大学生にぜひアドバイスを頂ければと思います。

動画を見てくださり、ありがとうございます。RICE MEDIAのトムこと広瀬智之と申します。
僕は今、RICE MEDIAという社会課題に特化した動画メディアを中心に事業運営しています。僕らが取り組んでいるのは、一言で言うと「社会課題の未認知の打破」です。今の世の中、良くも悪くもSNSを中心に情報が溢れています。その中でどういうコンテンツが選ばれるかというと、やはり何も考えずにも楽しめるようなエンタメや、分かりやすい情報です。一方で社会課題というのはエンタメ性に乏しく難しい印象があり、人々に選ばれづらい傾向がある情報なのではないかと思います。

社会ではいろいろな問題が次々に起こっていますが、それを「知る」ことはすごく難しくなってきていると感じます。僕らは、旧来的な情報の伝え方では届きにくい人たちが多いということに課題意識を持ち、それを解決したいという思いで、ただ発信するのではなくアイデアや企画を乗せて、皆さんが社会課題に興味を持つきっかけとなるようなコンテンツを世の中に広げていくことを目的に活動しています。

社会的課題に取り組むようになったきっかけ

高校時代に受けた衝撃

トムさんが社会的課題に取り組もうと思ったきっかけを教えてください。

社会に対して自分にもできることがあるのだと気付いたのが、高校時代でした。当時の僕はすごく自己肯定感が低く、どうせ自分なんて、とか、自分にできることなんて何もないとずっと思っていました。
僕の高校では土曜日に「国際協力」という授業があり、いろいろな企業代表の方や社会活動家の人たちが講演に来てくれました。ある時、認定NPO法人「e-Education」という国際教育支援団体を作られた税所さいしょ 篤快あつよしさんのお話を聴く機会がありました。税所さんは大学生の時、バングラデシュで活動を始めましたが、現地の貧困層の子どもはお金がなくて塾に行けず、大学受験を諦めている状態でした。税所さんはバングラデシュで一番有名な先生の授業を撮影させてもらい、それをDVDに焼いて農村部に届け、最貧の村から国内最高峰ダッカ大学に連続して合格者を出すという快挙を遂げたのです。

僕が関心を持ったのは、高校時代に「自称落ちこぼれ」であった税所さんが、大学入学後に国を超えた活動をされたということです。高校生だった僕は、大学生がこんなに大きく世界を変えることができるなんて毛ほども思っていなかったのですごく衝撃を受け、自分もやる気があれば、社会の役に立つことや困っている人を助けるようなことができるんじゃないかと思いました。その時に初めて問題が自分事化され、自分でもできることがあればぜひやってみたいと思い、社会活動や社会貢献に興味を持ったのが一番のきっかけだったと思います。

特別な活動をされていたというわけではなく、それが積み重なって現在の活動に至ったのですね。

初めは別に大きなことができたわけじゃなかったんです。税所さんの話に強いインスパイアを受けて、自分も社会を変える活動をやるぞと頭をフル回転させ、それでできたのがエコキャップ回収器(笑)。本当に誰でもできそうなことから入り、まあそれでいいや、でもなんか違うと思っていました。
大学入学後はカンボジアに行き、物作りを通した支援活動を始めていろいろと関わっていく中で、自分の場合は得意なことや好きなことを通して社会課題の解決に関わっていかないと、それを仕事にしてもメンタルが続かないと思いました。僕は発信することが好きだったので、大学時代はジャーナリストになりたいという思いでずっと活動していました。