全国大学生サミットを振り返って

全国大学生サミットを振り返って〜コロナ禍の向こうに見えてきた新たな希望〜全国大学生サミットを振り返って〜コロナ禍の向こうに見えてきた新たな希望〜

大学関係者はもとより、各方面から熱い注目を集め、1,100人ものエントリーを得て、盛況のうちに幕を閉じた全国大学生サミット。
コロナ禍によって受けたダメージが率直に語られる一方、積極的なチャレンジを通じて明日への希望を見いだし始めている学生もいました。
しかし、大切なのは、むしろこれから。キーパーソンとして開催に関わったメンバーは、今、どのような思いを抱いているのでしょうか。有識者の皆さまも交えて、お話を伺いました。

サミットを終えて、今、思うこと

元田:各方面から熱い注目を集めた全国大学生サミットですが、皆さんには無事に終えた今の感想をお聞かせいただきましょう。

大前:それぞれの不安や悩みなど、一学生として共感する部分が多かったですね。就活をテーマとした分科会Dでは、就活中の今だけでなく、就職後を見据えて考えられた点も大きな収穫だったと感じています。

白井:分科会Bでは、オンライン授業の問題点だけでなく、さまざまな改善アイデアが寄せられました。また、参加者の中には大学生以外でも一緒になって大学生の生活について考えてくれる社会人の方などが数多くいらして、なんだかうれしくなりました。

松井:自分なりに趣味を見いだしたり、専攻とは違う資格の勉強をしたり、オンライン授業だけでは解放し切れないエネルギーを違うところに活用しているケースが、キャンパスライフをテーマとした分科会Aでも数多く寄せられました。みんな頑張っているんだなぁと、自分の中にも新たなモチベーションが湧き上がってきましたね。

角田:私も昨年就活を経験して、一人で立ち向かっていくことのつらさを感じていました。しかし、振り返ってみると、ここはもっとできたとか、もっと楽しめばよかったという思いもあって…。当日はいろんな立場の人が参加してくださって、就活だけにとらわれず、未来を見据えた話ができたのではないかなと、とてもいい時間を提供できたと思います。

原:個人的な目標は、参加した人に「あなたは一人じゃないんだよ」というメッセージを伝えることでした。特に2年生は、コロナ禍で人と話をする機会が少なかった。その結果、他人から共感されたり、共感したりという経験ができなかったと思います。サミットを通して、全国には自分と同じ思いを持っている学生がいること、自分のことを支援してくれる大人がいることなどを実感できたのではないでしょうか。
今回、チャットなどで大学生のバッシングが話題になり、SNSを見るのがつらかったという意見も寄せられていました。この意見に私自身もすごく共感し、「私だけではない」と思えたことから、目標は達成できたと考えます。

あの時、悪者になった大学生たち

増谷:皆さんにお聞きしたいことがあります。原さんのお話の中にも出てきましたが、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった頃、ちょうど関西の大学でクラスターが発生したこともあり、大学生が感染拡大の元凶のような風潮がつくられてしまいました。皆さんは、そうした状況に対してどのような思いを抱いていましたか。

松井:確かに「大学生がほっつき歩いている」とか「大学生は勉強だけすればいいんだ」とか、厳しい誹謗ひぼう中傷めいた書き込みや報道が結構あったんですよね。大多数の学生はちゃんと自粛していたと思うんです。「大学生が」とひとくくりにされてしまうと、「いや自分は違うのに」「自分はちゃんとやっているのに」と、私自身、どんどん気がふさいでしまったのを覚えています。

原:立命館大学の京都のキャンパスに通っているのですが、同じ関西の大学ということで、どこか過剰に「自粛」というものを意識していました。
例えば、飲み会に誘われても行かなかったり、行っている人のSNSにアップされている写真を見て「いいのかな?」と思ったり、いわゆる「ちゃんと自粛していない人たち」に対して敵意を持ってしまった自分がいたりして、それがすごく嫌だったですね。

角田:私の場合は卒業して1年目ですけれども、大学4年生の時、ちょうど卒業旅行シーズンに新型コロナウイルスが流行し始めて…。大学生の卒業旅行に関しては、SNS上でいろんな意見が交わされていましたよね。目くじらを立てて「もっと大変な思いをしている人たちがいるのが分からないのか」みたいな反論が寄せられているのを見て、とても胸が苦しくなったのを覚えています。誰もがつらい思いを抱えていた時期だったと思うので、そこで攻撃的になってしまうのは何か悲しいなと思って。

大学や社会にお願いしたいこと

元田:そういった状況もありましたが、改めて大学や社会に対して、具体的な要望があれば教えてください。

白井:授業に関していえば、もっと互いに話をしたり、意見を言い合える場があるといいですね。
オンライン授業だと先生が一方的に話をしていることが多く、ただ聞いているだけで終わってしまう。できたらもう少し言葉のキャッチボールのできる環境があったらうれしいですね。

松井:オンラインをベースに授業が行われると、人間関係もやっぱりオンラインになってしまうんですね。実際、そういう学生は少なくないと思います。なので、僕的にはもうちょっと対面授業が増えてくれることを望んでいます。

原:学生のことは、今のコロナ禍で学生活を送っている学生にしか分からなくて。ちょっと矛盾するような言い方ですが、大人が思っているより学生は困っているし、大人が思っているより学生は困っていないんですよ。そういった学生の生の声というのをしっかり伝えていきたいです。そのためにも大学に対して、意見を言ったり、話し合える場や機会があればいいと思います。

大前:大学生サミットも学生と社会人が協力してつくることができたので、これからの大学生活も教職員の方々と共につくり上げる環境が整ってくれれば、と思っています。そのためにも、学生はしっかり自分たちの声を社会や大学に届ける努力をしなければいけないですよね。

安井:大学生は大学生、教員は教員、それぞれ立場があるので、まずは互いを知ることからだと思うんですよね。大切なのは、それぞれの今の状況を同じテーブル上に乗せていくこと。互いを知ればどう協力し合えるかの道筋も見えてくるのではないでしょうか。

元田:大学に対する要望として述べてくれた彼らのコメントをお聞きになって、齋藤先生にもお話を伺いたいのですが…。

齋藤:大学はもっと皆さんの声を聞くべきですよね。ただ、悲しいかな聞く方法が分からない。実は、教職員も困っているんですね。なので、一つの方法に限定するのではなく、授業はもちろん、学内アンケート、相談室、ウェビナーなどなど、あらゆるチャネルを通じて、それぞれがそれぞれの思いを積極的に届けてほしいですね。互いが歩み寄っていくことのできる環境をいかに構築できるかが重要ということに尽きると思います。

きっと、できる。これからへの期待

元田:いろいろお話を伺ってきましたが、今後への期待と可能性について増谷さんと齋藤先生にご意見をいただきましょう。

増谷:朝日新聞社と河合塾の全国の大学を対象としたアンケートでは、70% 以上の大学が「学生の声を大学の運営などに反映させたい」と答えています。つまり、4分の3ぐらいの大学が、今、学生たちの正直な声を必要としている。コロナ禍のような事態は大学も初めてですし、臆することなく思いの丈をぶつけてほしいと思います。いずれにしても、大人はもっと大学生を信用しなきゃいけないですよね。

齋藤:バランスの取れた学生生活を皆さんが取り戻す、またはつくり直していく、新たに発見していくことがこれから必要だと思うし、その際にはいろんな方たちとの関係性も深めていってもらえたらと思います。いうなれば心の復興というか、再生のプロセスを進む中で、ひょっとしたら大学というコミュニティの中での人間関係も相互的なものに変えていけるかもしれませんね。

元田:では、最後に大学生サミットを主導した学生の皆さんから、全国の大学生たちにメッセージをお願いします。

安井:やっぱり誰かとつながってみることです。人とつながったときに、会話が生まれ、その会話がその人を変えるきっかけになるかなと。後は、自分がどうしたいかとか、自分がどうしてほしいのかを、ちゃんと伝えることが大事だと思います。
大変だと叫ぶことはすぐにでもできる。ただ、それだけでは何をしてあげたらいいのか分からない。何が大変なのかを伝えることでより良い方向に進むことができるのではないでしょうか。

松井:やりたいことができる大学生活を共につくりましょう。これを機に新たなチャレンジをしてみるのも手かもしれません。

白井:今のこの状況を、プラスと捉える発想が必要かもしれません。普通だったら体験できなかったことが、むしろ体験できていると思えば、また違った景色が見えてくるような気がします。

原:誰よりも自分の気持ちを大切にしてほしいですし、その上でどんどん人を頼ってほしいと思います。自分がやりたいことはやろうと思ったら実践できるし、もし一人じゃ難しかったら、サポートしてくれる人が全国にいっぱいいることを覚えていてください。

角田:今の生活とか状況は、もしかしたら自分で変えられるかもしれないということ。孤独を感じることがあっても、どこか近くに絶対に共感し合える人、寄り添ってくれる人が必ずいると思います。だから、諦めずに一歩踏み出してほしいです。

大前:とにかく前向きにやっていきましょう。物事の捉え方次第で結構気持ちも変わるものです。

元田:これからきっと良い方向に進んでいく。そんな期待を抱かせてくれるサミットであり、振り返りだったと思います。ぜひみんなで、大学を、社会を、変えていきましょう。本日はありがとうございました。

Symposium Member


元田 謙太郎さん
三菱総合研究所


増谷 文生さん
朝日新聞社論説委員


齋藤 憲司先生
東京工業大学
カウンセラー/教授


松井 貴哉さん
東京学芸大学
教育学部2年


白井 花音さん
茨城大学
教育学部2年


大前 真悠さん
龍谷大学
経営学部3年


原 いこいさん
立命館大学
法学部2年


安井 大幸さん
2021年度全国大学生協連
全国学生委員会委員長


角田 咲桜さん
2022年度全国大学生協連
全国学生委員会委員長