堀潤さんインタビュー

社会を変えていくには

しかし、実際にデジタル放送が始まると、あまり満足にいかない。テレビのリモコンに4つのボタンが付いただけ。紅白に投票できます。クイズに参加できます。終わってるなと思った。もっと双方向を、と思うと、SNSだった。当時はmixi、次にFacebook、そしてTwitter。
NHKでいち早く、Twitter連動番組を2010年、僕の番組でやった。何故かというと、
「NHKとしてはこう思ってます」ところが、視聴者皆さんから、「堀さん、それ違うんじゃない?」とかが来てます。じゃあ議論しましょう。を狙った。
でも、ある時に気が付いた。仕組みができても、ちゃんと返す人がいないとダメだと。
「なんて言っていいかわからないです」「そもそも何が問題かわかりません」「別にいいじゃないですか」
取材をしてみると、戦争のころもそうだったらしい。
「政府が国民をどん底に陥れることはないでしょう」
「国民のことを思ってくれているでしょ」
「難しいこと考えるよりも自分の夢をどうしようか」
「明日食っていくためにはどうしたらいいか」
日常を維持することで精いっぱいで、中長期的な、この国のことを考えるとか、自分とは全く関係ない人の社会問題を知って動くとかができないのは、時代が変わっても変わらない大衆の性。
政治の話をするよりも、今日の昼ごはん何食べるかの話の方が楽しい。小難しい社会問題、人道支援の話より、誰が好きかの話の方が楽しい。誰かの夢を応援する前に、自分の夢を叶えたい。これって変わらない。
政府とか、メディアとかの前に、僕らの社会が変わらないと、そういうメディアを生かすし、そういう政治を生むし。
だから政治やメディアを、変えようと思ったが、違った。私を変えようと思った。じゃないとこの社会は変わらないと思った。
NHKは組織なのでスピード感が遅い、組織の宿命。良いこともある、いいアイデアが集まるとか、でもスピード感が足りない。最初はすごくとんがってたものが結局丸くったりもする。
だからNHKを飛び出した。8bitNewsは、誰もが参画できる。ワークショップとか技術を学べる一つの機会。誰でも発信できる。
これまではメディアが選んだモノがニュースだった。選ばれなかった現場はニュースじゃないのか。みんなが関心があるものに偏りがち。そうじゃない。
メッセージとしては本当に社会が良くなったらいいなとか、メディアに不満があるなら、まず自分たちから変わりませんか。今は誰もが発信できる時代。そういう場を作りましょう。
一番手ごわいのは大衆社会。無関心、怠惰、目的意識のない。それだと困っている人は困り続ける。変わらない。どっかで、余力のある人が、一緒に発信しようよとか、立ち上がろうとしている人たちの支えになるのが、メディア人が務めかなと思う。
よく、公平・中立とかよく言う。メディアは中立であってほしいとか。市民の意見と議員の意見を出して、中立だという人がいる。でも、圧倒的に政治とか国とか、権力がある。普段の状況が偏っている。思い切って、市民の意見に重きを置かないと、中立は取れない。
よく、メディアに対して「一方的な政治批判ばっかりして、全然中立じゃない」と言うのは間違っている。もっともっと現場の声なき声を出さないと、そんな装置がないと。
でもテレビの人間だから。テレビだと、そうなってしまう。どんな政権も持っている強みにある程度目配りをしながらチェックをするのが役割。
実をいうと、メディアも権力。メディアで言い切れば、それはそれで、プロパガンダ。イスラム勢力は怖いって、ドラマや映画、ニュースでやっていて、弊害が生まれたのはアメリカ。
ハリウッド映画のテロリストってだいたいイスラム過激派。イスラムの人ってちょっと怖いよねとなる。それでいいのか。
メディア側の人間は気を抜くと、プロパガンダ機関になる。市民から見たら権力。最初言った、犯罪を犯してないのに、警察がマスコミに容疑者として取り調べしている、怪しい人としてリークして、メディアが取り上げる。まだ逮捕もされていないのに。芸能人の薬物事案とかもそう。やっぱり、メディアもマスコミを権力。だから対抗できる、市民発信の場を作った。
若者になんで発信してほしいなと思うかというと、理由は2つある。
1つ目は、この国の天井が重たすぎる。いつまでたっても幹部は60、70代の人。大学とかもそう。なぜ、現場で頑張った40、50代、女性にさせないの?
しかも何かやろうとすると、決定権はおじさんが持っている。でもこの国の未来を作っていくのは今の若い人たち。しかもどんどん社会が変わる。平成の間に、メディア1つ取っても発信の仕方はすごく変わった。41の僕も古いのでないかと思う。10代20代のことを聞きたい。リアルタイムを知りたい。今の専門家が発信して教えてほしい。
でも、大人は力がある。上下関係が染みついている。それを壊してほしい。詰まんないとかいわれてもいい。でも社会では色々言われる。 
自分も5年経って東京に来て、当時最年少だった。新人のつもりで頑張りますと言うと、新人でしょと言われた。そういうつぶし方は嫌だ。フラットでいたい。
そのためには、若者がガンガンいってほしいと思った。若者超会議とかも5年前。そして半分叶っている。今は若い世代がいい形で発信している。性暴力被害の問題とか。Meetoの運動から端を発して。最近では性暴力の被害にあったのに、相手側の男性が無罪になったときに、京都大学出身の女性が中心になって、運動を起こした。今までにない形の社会への提言を動画、SNSを使い、感度の高いメディア人を動かして、発信をしているのは素晴らしい。
政治運動でも、賛否あるけれどもSEALDsとか。ロゴ一つとってもデザイン力がある。アート、デザインと政治を掛け合わせた社会運動。
この間の沖縄の県民投票やりますと県知事がいうと、反対する自治体がでた。
すると、本山さんという20代の若者が、ハンガーストライキをした。そこにインフルエンサーたちが注目して、メディアが来て、報道されて、県民投票しないのはおかしいという世論が生まれて、実現した。
海外に目を向けると、紛争地域。ガザとか、パレスチナで、若者がSNSで現状を発信して、世界が注目している。マララさん、ノーベル平和賞を取った。彼女自身、襲撃を受けながら、発信を続けた。
この5年で、希望を感じることはあった。当たり前になった。発信している大人も若者もたくさんいて、世界を変えている。発信してないのは、ただ諦めているのかな。やるかやらないか。もう、若者だからというくくりは、なくなってきた。大人も若者も対等。
逆に技術は、メディアリテラシーを含めて、若者のほうが、高い。一部、ふざけてる人がいるくらい。
それよりも、ネトウヨと言われる人は、40代で程度収入がある人が、匿名で罵詈雑言を言っている。こんな大人たちをどうにかしろよと思う。
若い世代は、危機感もツールも環境もある。いいと思う。これからは今までの発信とは違うスタイルで、もっと直感的に伝えられるようになる。
モノのインターネット、AIスピーカーは浸透したけど、もっと開発されて、人間の脳とインターネットがつなげて、デジタル化して相手に伝えることもできるようになる。
あと10年20年すればマスコミの伝え方も変わる。
「今、現場に来ました、わかりますこの感じ」というと、リアルに感じられるようになる。