佐藤可士和氏インタビュー 物事の構造を見据える「デザインの視点」

現場やSNSから一人ひとりの声を拾い上げる

現場の声やつぶやきを国会に

大学生協は組合員が各々出資して利用する組織で、組合員一人ひとりの声を反映させることをとても大事にしています。一例として「一声カード」という取り組みがあり、お店の商品に対するお問い合わせなどを書いていただいています。
吉良さんも、共通に大切にされてきたのは、「一人ひとりの現場の声を大切に国会に届けること」とおっしゃっていました。コロナ禍も含めて、普段先生は一人ひとりの現場の声をどのように聞かれ、どのように国会に届けて社会・政治を変えるアクションを取られているのか、そういったことをぜひ伺いたいと思います。届けるという意味でいうと先ほど申し上げたように国会で討論することになると思うのですが。

まさにこの「一人ひとりの声を聞いてちゃんと届ける」ということが政治家の仕事だと思っているのですね。先ほど政治家になった経緯を話しました。それは“私自身の一人の声を”、というところから始まりましたが、いざ政治家になったら、今度は“現場の声”を届けることを一番大切にしています。ですので、やはり何と言ってもまずは現場に足を運ぶということを必ずやっています。
このコロナ禍の問題でいうと、例えば文化分野でイベント中止が相次ぎました。私は文教科学委員ということもあり、その時に文化団体の皆さんを訪ねていきました。例えばライブハウスも当初からクラスターの名指しをされて非常に苦しい事態が続いているというので、すぐさま都内のライブハウスに行き、店長さんからお話を聞きました。そして、本当に事態は風雲急を告げており、お客さんが8割減っているのでなんとか継続するために支援をしてほしいと、その生の声をそのまま直接国会で取り上げました。
現場ということで言いますと、結構さまざまな方が声を上げて、いろいろなところで集会やデモをやっている。そういう現場にも、必ずできる範囲で行くようにしています。例えばちょっと前では入試の問題。共通テストで英語民間テストを使うのか使わないのかというのが大問題になった際に、文科省前で高校生や大学生がデモをして声を上げていました。私はすぐさま現場に行ってその声を聞き、彼らの共通テストについての訴えを、記述式の問題を含めて論戦で紹介したことがあります。そうしたら、声を上げていた高校生が国会中継を見てくれていて、「僕の声をそのまま国会で取り上げてくれていた。感動した」とTwitterでつぶやいてくれた。それに私が逆に感動したりするのですけれどもね。
今、Twitterと言いましたが、Twitterも声を拾う大事なツールなのです。コロナに関してつぶやいている方もいらっしゃいますし、例えば大学生の問題で言いますと、「#大学生の日常も大切だ」ということで、昨年の夏ぐらいにそれこそ「オンラインばかりで本当にしんどいんです」という皆さんの声がTwitter上にあふれている。それを拾って質問したこともありますし、対面授業を実施すると同時にちゃんと感染対策もしなくてはいけない、そこに予算も投入しなくてはいけない、ということを論戦で言いました。
さらには学生支援緊急給付金、あれはできたことは良かったし、救われた学生もいるのですが、大変使い勝手が悪かったと聞きます。周知が行き届いていていなくて、申請したけれどもなかなか受け付けてもらえなかったというさまざまな声が、Twitter上で私のところに寄せられてきました。私が「こう質問しましたよ」と言うと、リプライで「実はこうやって持っていったが、だめだと言われた。どうしましょう」というような声が上がってきたので、それについては国会でも「こういう声が来ていますが、もっと柔軟に対応すべきではないでしょうか」という質問を論戦上でも投げました。個別に文科省の人を呼んで「こういう事例があるから、丁寧に対応してください」と改善を求める対応もしています。
このように、Twitterから現場に足を運ぶところから、さまざまなツールを駆使して声を聞いて届け、そして返していくというのを重視して活動しています。

その声は人生を左右する重大な一言かもしれない

国会議員の方はTwitterを日々盛んにやられていますが、主軸はリアルに話を聞きに行くということなのかなと思っていました。でも、SNSで問題意識を投げかけたこともちゃんと先生方に届くのだと分かり、SNSでツイートしたりインスタグラムにアップしたりということは、学生にとっては結構得意分野なので、そういうことを中心に何か始めていけるといいのかなと改めて思いました。

すごくいいと思いますね。最近は#で法案が動くこともあります。この間でいうと検察庁法改正案を廃案にとか、LGBT法案を通してという声が出されていますが、検察庁法改正案は実際に廃案になりました。そうやって個別のリプライも含めて、見ている政治家というのは私を含めてかなりいると思います。
黙っていると何も動かない。けれど、そういうさまざまなツールを使い、いろいろなかたちで皆さんが声を上げる、「おかしいな」と思ったことを声に出していただくと、動くことがあるのです。私も出来る限りそういう一人ひとりの声を拾うべく頑張りたいと思っています。

今日インタビューに参加させていただいている藤井さんは、大学生協で組合員の声を集め、参加を促すという活動を担当しています。藤井さんからもお話を伺った感想や、改めて聞きたいことがあればお願いします。

今、全国的に大学生協の店舗も新型コロナウイルス感染対策のために席数を減らしたり、短縮営業したり、閉店したりしなければならないという状況になっています。そのような中では生協を利用する機会がなかなかないので、あまり生協のことを知らないという学生も出てきています。
今まで私たちは組合員とつながるために対面を重視して活動してきたのですが、コロナ禍でそれができなくなりました。そういう状況の中で、SNSはかなり重要なツールであると思い、SNSを活用して組合員とつながり続けようとこの間提案して、全国の大学生協と共に頑張っています。特に最近は、Twitterやインスタグラムというツールは強いです。全国では、新入生が大学入学にあたってどんな不安があるのかという声をSNSで拾って、そこから新入生歓迎の取り組みにつなげたというような事例もかなりあります。Twitterは声を届けるツールとして非常に有用であるということは、吉良さんのお話を伺って改めて実感したので、私もこれを利用して活動の推進に力を入れていこうと思った次第です。

本当にTwitterは、声を届けていただくだけではなく、返すツールとしても使えるなと思っています。その事例の一つに、コロナ禍の持続化給付金という制度があります。それは2019年の年収と2020年の状況と比べて、その差額についての補助を求めるというシステムなのですが、「2019年に産休・育休で仕事ができなかったフリーランスの方がいる。だからその前の年の2018年でも比較ができるようにしてくれないかしら」というつぶやきが届いたのです。それで、中小企業庁に対応できないかと問い合わせをしたら、「できます」という回答を頂きました。それをツイートに乗せて「育休・産休の場合は特別な措置で、2018年の確定申告でも対応できますよ」ということを私が流したら、結構これがそれなりに拡散されて、しかもその声を上げてくださった方がリツイートを拡散してくれたことで、当事者の方に届いたのですよ。
で、結果、当事者の方から「吉良さんのツイートを見て、あきらめないで吉良さんのツイートも書類に添付して出してみたら、全額補助金が出ました。本当にありがとうございました」という声が届いたのですね。「私だけだと思ってあきらめようとしている人たちに、ぜひあきらめないで大丈夫だということを伝えていただきたいと思います」とも言われて、本当に役に立って良かったなと思った瞬間でしたし、そういう一つひとつのことは小さいのかもしれないけれど、でもその人にとっては持続化給付金一つとっても人生を左右する重大な問題だったりします。そういう一人ひとりのつぶやき、声を見逃さない政治家でありたいと常々思うし、皆さんにもぜひそういう意味でもあきらめないで、つぶやくところからでもいいから声を上げてほしいなと思います。

本当にあきらめないというのはおっしゃる通りだと思いました。「いいね」が1個や2個しかつかないからつぶやくのをやめようかとか、ここで言っても変わらなさそうだから声を上げないでもいいかなとかということではなく、誰かが見ているかもしれないからあきらめずにつぶやいてみよう、言葉にし続けようというのは私自身も大切にしていきたいと思いましたし、周りの人たちにも伝えていきたいなと思いました。

ぜひ頑張りましょう。