佐藤可士和氏インタビュー 物事の構造を見据える「デザインの視点」

大学生協との関わり —学生生活実態調査データを国会で活用—

今年3月15日の参議院予算委員会で、全国大学生協連の実施した「第56回学生生活実態調査」の内容報告から、学生の半年間のアルバイトに関する資料を提示していただきました。私たち自身も、自分たちが関わっている調査をご活用いただけたことが何よりも嬉しく、学生の状況を訴えてくださる大人の方がいらっしゃるということが励みになりました。
吉良さんが学生生活実態調査のデータを国会審議で使ってくださった背景や理由、どのようなところでこの調査自体を知ったのかも含めて教えていただけると嬉しいです。

はい、パネルにして活用させていただきました(笑)。このアルバイト収入も就労率も減っているという全国大学生協連の調査は、報道等でもかなり大々的に言われていましたので、まず原典に当たりました。もっというと、実は私は参議院の文教科学委員を長年やっていますので、そういう立場から学生の動向を調べるという大学生協連の調査は、ほぼ毎年チェックをしています。ですので、実は今回が初めてではなくて、前回2019年春の予算委員会でも、学費の問題を取り上げた際にその調査結果を使わせていただきました。そのように大学生協の調査を審議の中で活用しているのは、やはり今の学生全体の状況が網羅的に分かる調査だと思っているからですね。
今回の調査では、やはりコロナ禍でリモート授業が続いて大学に行けないという話がありましたが、学生の皆さんが大きな影響を受けており、1年前の3月に最初の緊急事態宣言が出された当初から大変だという声は聞いていました。学生団体のFREEや、「一律学費半額を求めるアクション」などでそういう動きがあったのを把握していたので、アルバイトが減って収入が落ち、苦しい状態だというのは声としては拾ってはいたのですが、それが数字、データとして分かるかたちで出てきたのが大学生協連の調査でした。これがマスな調査としては一番大きかったので、分かるかたちでそのパネルを使わせてもらいました。
ところで、これは去年のデータですけれども、問題なのは、今なお緊急事態宣言が延長を繰り返す中でこの事態は続いていることだと私は認識しているのですね。だからやはりこの問題は取り上げざるを得ない。それで、学生に対して必要な支援をやらなければならないということで、学費も下げる必要があるのではないかと思いました。なんだったら緊急支援給付金も第二弾が必要なのではないか。そういう問題意識でこのデータを活用させていただきました。

学生生活実態調査が、2020年だけではなくて、以前から吉良さんにご覧いただけていたということは非常に嬉しかったですし、自分たちのやっている調査は国にもちゃんと届いているということが改めて分かって、そこにやりがいも感じました。次回、第57回実態調査を今年10月に行いますが、担当するのがここにいる木原さんです。なにか一言ありますか。

大学生を対象に実態をつかむには一番大きいデータと言っていただいたのは、本当にその通りで嬉しく思いました。なかなか日常的には上げづらい声も、こうした調査を通してなら発することができるし、それが数字として表れることで、学生の姿をつかんでいただくことになるのだと感じています。私事ですが、また引き続き頑張っていきたいなと思いました。

ぜひ頑張ってください。期待しています(笑)。数字っていうのが非常に大事で、ひとことひとこと定性的な声があるということを知るのは非常に大事なのですが、同時にこういうまとまった数字があるということは、論戦を進めていく上でも必要な政策を検討する上でも非常に重要です。それは与党側であろうと野党側であろうと政府側であろうとみんなの共通な土台になり得るという意味では、とても大事な資料になります。ぜひ今年もよろしくお願いいたします(笑)。