前田 高志 氏インタビュー 子どもの頃からの「好き」の延長線上に今の仕事があった!~自分の才能を探し当て、極めていこう~

好きなこと、やりたいことに突き動かされてきた

人生最大の失敗は、それからの先の経験値になった

僕も漫画が大好きなんです。『スラムダンク』を読んで中学でバスケがしたいと夢見てバスケ部に入ったのですが、いざ入部すると「めっちゃ身長必要やん」「ミニバスの経験者の方がうまいな」と失望したことがありました。そういう挑戦をする際に、前田さんなりに失敗を乗り越えることで大切だと感じていることや、あるいは失敗をどう乗り越えたのかという経験談をお聞かせください。

そうですね、失敗はまあちょくちょくあります。一番大きな失敗は大学受験でした。高3の夏からデッサンの勉強を始めたというのも、今考えたら無謀でしたね。でも半年くらい勉強しただけで通る人がごくまれにいるのですよ。自分もそこまで頑張れると才能を信じていたのですが全然ダメで、全部落ちました。
その時はやっぱり悔しくて仕方なかった。僕は普段ヌボーっとしていて、鈍感です。でも、悔しいときって目が覚めたみたいに血が騒ぐっていうか、奮い立つじゃないですか。だから生きている感じがあって、楽しかったですよね。人生で一番楽しいときって、振り返ると失敗した後だと思います。もちろん、その時は苦しいですよ。苦しくて、何とかしないといけないと思うのですが、振り返ってみると、「あれ、めっちゃ楽しかったな、生きているんだな」と感じられるんです。それを一回体験すると、次も「あ、来た来た……」と分かるので、一回大きな失敗をしても「もう人生で一番頑張る!」という経験をすると、後は何でも乗り越えられると思います。

僕のオンラインサロン「前田デザイン室」では、「やりたい!」と意思表示さえすれば、年齢や経歴関係なく雑誌の編集長やプロジェクトリーダーを経験します。すごい失敗を当然するし、悔しい思いもするし、そもそもしんどい。そういう若いときから失敗を経験できる場所を作っています。会社だと、会社内で実績を認められないと、当然新人には大きな仕事は回ってこないですよね。だから早めに挫折を味わうとか大変な目に合うという機会を作っています。

会社の仕組みとか組織として、ですか?

組織で何か作るというときにリーダーをやるのは、無茶苦茶大変なんですよ。でも「前田デザイン室」は、オンラインコミュニティで仕事じゃないので、失敗してもOKです。

思い返すと、自分も確かに就活の面接で、「挫折体験がありますか? 苦しかったことありますか?」って聞かれました。そうしたときに、夢見てバスケ部に入部した後、部長になり挫折を経験したことを語ったので、今のお話とすごくつながった感覚がありました。

バスケで挫折をいち早く経験しているのが、斉藤さんの強みですね。

ありがとうございます。

学校の昼休み的なことをやるのが好きだった

僕はデザインのことは何も分からないのですが、ホームページやブログを拝見したときに、「ふざけようよ」「ばかになろうよ」という言葉を見て、単純にいいなと思いました。今実際にコロナのために「遊ぼう、騒ごう」と言ってもそうはできない空気感があり、対面で人とつながれない現状がある中で、僕も遊びから得られる体験は必要だと思います。前田さんが何かに挑戦する際に、遊びがこういうふうにエネルギーになっているという経験があれば、伺いたいです。

僕は、遊びが大事だと思って遊んでいないんですよね(笑)。後付けで、遊びが大事だとは言っているとは思いますが、僕にとっては遊ぶことが自然で、何か思いついたことを「すぐやろう!」と言って、やっちゃっているというだけで、頑張ってやっているわけでも、気を付けてやっているわけでもないのです。

人生の喜びは皆さんそれぞれにあるでしょう? 僕の場合は「思いついた何かをみんなとやること」。これは別のインタビューでも話していますが、“小学校の昼休みみたいなことをやるのが好き”だということに気付いたんです。それをやっているだけで、いろいろな喜びがあるんですよ。鈴木さんも齋藤さんも林さんもそれぞれに人生の喜びは違うと思います。ただ僕はそれを開放しているだけ。

会社員だったときも、みんなでゴルフに行くとか、合宿やるとか、『ドラゴンクエストⅩ』というオンラインゲームのリーダーみたいなこともやっていたし、「こういうのやろうぜ!」って言って、みんなと何か学校の昼休み的にワイワイするのが、僕は好きだった。そのことに気づいたのが、39歳くらいで、そこまでかかってもいいと思うんですよ。もちろん犯罪とか社会に迷惑をかけることとかはNGですが、それまで自然体でやっていたことが自分の好きなこと、人生の喜びなんです。「遊びが大事だ」とはいろいろな人が言っていますが、それは、「自分の“喜び”をやりなさい」ということなんじゃないでしょうかね。人によっては勉強するのが喜びかもしれないですしね。

“やりたいことを探さないといけない地獄”から抜け出そう

今のお話は、就活の軸に関わってくるようなお話だなと思いました。自分のしたいことが自然に仕事につながったらいいなあと期待する学生は多いでしょうが、自分のしたいことと仕事を結び付けるのは難しいと思います。進路とか、自分の未来を考える際に、前田さんが軸にされていることは何かありますか?

若い人からはそういう話をよく聞きますが、今は“やりたいことを探さないといけない地獄”じゃないですか。それはよくないですよ。やりたいことなんかあり過ぎるじゃないですか、まだ何にもやってないのに。体力もあるし、好奇心もいっぱいだから、人生が追いつかないくらいやりたいことは多いんです。だから、やりたいことでも、人生の喜びでもどんどん見つけたらいいと思います。

それには時間がかかるんですよね、いろいろなことをやった上で相対的に決めるものなので。でも、すぐには分からなくても、確実に分かっていることは一つあります。これは僕がお世話になった任天堂の元社長の岩田聡さんの言葉ですが、「人より楽にできて、人から褒められること、これが才能だ」。「あれ? 自分たいして頑張ってないのに人より簡単にできてんな」ということ、誰しも昔から何かがあるじゃないですか。それを探して仕事にした方がいいです。やりたいことで仕事を見つけると絶対に失敗します。だって、僕が本当にやりたいことは漫画家ですからね(笑)。

「人より楽にできることが才能だ」。なるほど、そういうマインドは確かに必要なのかなと思いました。

何か過去に褒められたことってあると思うんですよね。林さんは何か思い当たりますか?

僕は人の話を聞くのはすごく好きで、「林君はすごく話しやすいんだよね」と言われることがあるので、それは何かしら生かせるのかなと思います。

たいして努力しないでできていることですからね、それは才能だと思います。

私は多分デザインが結構得意なことと、知らないうちに周りの人たちの状況や悩みを把握して、ちょうどいい落としどころを探して調整するということを自然にやっていました。それを褒められ、「いてくれて助かったよ」「いなきゃダメなんだ」と言われることが多かったです。

汲み取り力みたいなことですね。

僕はチームスポーツをいくつかやっていたので、挫折とか苦しいことを早いうちに体験しています。サッカーは11人でやるスポーツなのに、キャプテンをやっているときに部員が2人になったという経験もありました。結果が全てではないということが早めに分かったうえで、『その競技をどう自分が楽しむか』という視点は子どもの頃からあったと思います。前田さんは自分の思う才能の部分、ストレスがかからずできる部分はどのへんだと考えていらっしゃいますか?

企画とアイデア。企画するのは多分すごく得意だろうなと思います。企画の部分では「もっとこうしたらいいのに」「こんなのすぐできるでしょ」と思うことが多いので、そこかなと思いますね。

学生委員会でもたくさんの店舗活動や、学生に参加してもらうイベントの企画を考えることがあるので、もしも機会があったら、そうした企画に対するコメントをいただければうれしいです(笑)。