ミルクボーイ インタビュー 壁にはぶち当たったほうがいい。僕らは「失敗を笑いに変換するマインドで夢を叶えた」。

なぜお笑い芸人であり続けるのか

子どもの頃から好きだった

お二人がお笑い芸人=人を楽しませる仕事に就きたいと思ったきっかけをお聞かせください。

僕はNSCに行こうと思っていましたが、結局大学在学中にオーディションに受かったので、NSCには行かずにそのままお笑いの世界に入りました。人を笑わせるのは好きでしたね。僕、お祖母ちゃん子で、お祖母ちゃんを笑わせるのが好きでした。子どもの頃、自転車で塾から帰る時に、お祖母ちゃんが家の前の道路まで出てきて待っていてくれたんです。僕、そのお祖母ちゃんをどう笑わせられるか、毎回考えていました。そのまま無視して通り過ぎるとか、お祖母ちゃんに突き当たりそうになるとか。今思ったら、お祖母ちゃんは結構ツッコミうまかったな。「こっちや」とか「わー」とかつっこんでくれていたから。
高校のときに「M-1甲子園」(現在は「ハイスクールマンザイ」)というのがあって、それの第1回目に出てみたいなあと思って、中学校の時の友達と出たんです。でもそこで全然ウケなかったので、悔しいという気持ちを抱えながら、大学に入学してから落研に入りました。

NSC……吉本総合芸能学院。吉本興業が1982年に創立した、主に新人タレントを育成する目的で作られた養成所。通称はNSC(New Star Creation)。

僕は小学生の時から新喜劇がめっちゃ好きでした。新喜劇の役者にずっとなりたかったんです。辻本茂雄さんや内場勝則さんの新喜劇がめっちゃかっこいいって思っていました。すごく面白いし、すごくかっこいい。だから喜劇役者になりたかったんですけれど、結局その難しさも芸人になって分かりました。途中で漫才を見て、漫才のかっこよさも分かったので漫才やりたいと思ったんですけれども、最初は新喜劇の辻本さん、千葉公平さんを見て憧れたのがきっかけですね。

M-1チャンピオンとしてこれからも「面白い」と言われたい

M-1チャンピオンになられ、お笑い芸人になりたいという夢は叶えられましたが、今後のミルクボーイさんの夢や想いがあれば教えてください。お笑い関係でもそれ以外でも結構です。

チャンピオンになって、漫才に対して責任もあるので、ずっと面白いと言われる漫才をしたいなと思いますね。「なんか最近面白くなくなったな」と言われないようにしたい、というのが一つ。あとは、大阪には「なんばグランド花月」というすごい劇場があり、そこに師匠の方々も毎日出られているので、そういう師匠方に近付けるようになりたいです。師匠は最後のトリとかに出ていらっしゃるのですが、僕たちも出られるようになりたいと思っています。

僕たちが最初にコンビを組んだ時は、「M-1取りたい」、「決勝に行きたい」ぐらいのイメージでした。だんだん盛り上がって来て、「決勝に行きたい」という、その最大の目標は達成しました。けれど、「めでたしめでたし」という感じではありません。桃太郎でいうと、「M-1取りましたとさ、めでたし めでたし。その後、楽しく暮らしましたとさ」。桃太郎もあの後いろいろあったと思いますが、それは書かれていない。僕らはM-1チャンピオンとして恥ずかしくない、ずっと面白いのがいいですね。

夢を叶えるのはなかなか難しいと思う学生も多いと思いますが、ぜひお二人のように鬼ヶ島から無事帰ってこられるような感じで頑張ってほしいと思います。

お二人のお話を伺って、夢を声に出して伝えていたり、挑戦する勇気を持っていれば、道は開けるし大学生活も楽しくなるのだと思いました。

若者に向けたメッセージ 

読者の大半を占める今の若者世代、大学生に向けて、お二人からメッセージをお願いします。

僕らも大学に4年間行きましたが、今思ったら、在学中にあれもやったら良かったな、これもやっといたら良かったな、ということがめっちゃいっぱいあります。行ける時に海外に行ったり、そういう時しか体験できないことがいろいろとできる4年間だと思うので、時間を貴重に使っていただきたいなと思います。

大学生になってから夢を語れなくなったという声もありましたけれど、まだまだ可能性はいっぱいあるし、それこそこっちの夢が叶ったなと思ったら、思い切って次の目標に切り替えることも。この先の未来は広がっていると思うので、何歳からでも大丈夫です。だって僕らも、もう一回M-1をちゃんとやろうと決心して自分たちを追い込んだのは32歳ぐらいですから。その間、漫才に向き合えずどん底だった時期もあったのですが、もう一回やるぞっていう気持ちさえあれば、何歳からでも頑張れると思います。

僕もほとんど落研の人といたので、大学の中では友達も多い方ではなくて、「あいつ、お笑いやってるらしいな」って特に言われることもなかったですね。でも「お笑いやってるんだろう?」って言ってくれる先生が1人いて、その先生の授業の時にはオーディションがあっても行きやすかったです。支えになりました。やりたいことって必ず誰かに伝わっています。やりたいことをずっと思い続ければ、きっと誰かに響いていくので、恥ずかしがらずにやりたいことやったらいいと思いますよ。

私も学生時代にいろいろと活動してきたから、今があると思っています。この記事を読んだ大学生一人ひとりに刺さるところがあると思いますが、前向きに頑張ってみようと思えることをお伝えできばと思います。本日は本当にありがとうございました。

(2023年5月10日 リモートインタビュー)

PROFILE

ミルクボーイ


ミルクボーイ / ⓒ吉本興業

吉本興業(大阪)に所属する内海崇と駒場孝のお笑いコンビ。2007年7月結成。「大阪市24区住みます芸人(天王寺区担当)」。

  • 内海 崇(うつみ たかし)1985年12月9日生まれ。兵庫県姫路市出身、大阪芸術大学映像学科卒業。ツッコミ担当、立ち位置は向かって右。
  • 駒場 孝(こまば たかし)1986年2月5日生まれ。大阪府大阪市出身、大阪芸術大学放送学科卒業。ボケ担当、立ち位置は向かって左。

2004年6月、大阪芸術大学の落語研究会で出会ってコンビを組み、7月に大学祭の漫才大会で初舞台を踏む。2006年、「M-1グランプリ」に出場し、2回戦進出。同年、「大学生M-1グランプリ」にて優勝。2007年7月、「ミルクボーイ」としてbaseよしもとのオーディションに合格し、大学卒業後に本格的にコンビ活動を始め、ラジオ番組などでも活躍する。2010年から5年間の停滞期を経て再び漫才に対するモチベーションを高め、試行錯誤の末、2017年に後輩3組との合同ライブイベント「漫才ブーム」を立ち上げ、切磋琢磨する。2019年、M-1グランプリに通算6回目の出場を果たす。ファーストラウンドでは『コーンフレーク』のネタで、歴代最高得点で首位通過し、決勝では審査員7人中6票を得て優勝した。2021年、第6回上方漫才協会大賞受賞。2022年、第57回上方漫才大賞受賞。

baseよしもと……1999年~2010年に大阪・難波で吉本興業が運営していたお笑いの劇場。若手芸人の拠点であった。

「2030年を笑顔であふれる世界に」

吉本興業

笑顔はコミュニティを豊かにする。そして人々が明日に向かって頑張ろうという気持ちを生み出す原動力を作り出してくれる。今生きている人間を笑わせられなくて、次の時代の人間を笑わせられるはずがありません。2030年に向けて吉本興業では、笑顔があふれる社会を目指し、持続可能な世界の実現のために、エンターテインメントが少しでもそれを伝えるお手伝いができないかと考えています。

今年4、5月の連休には大阪の万博記念公園で、笑いと音楽でSDGsを伝えるPRイベント『Warai Mirai Fes 2022』を開催しました。事前にSNSで呼び掛けたのはマイ食器の携帯。会場内のフードコートでは使い捨て容器を採用せず、各自の持参した食器に飲食物を提供しました。呼びかけに応じて食器を持参した人、そして食器を忘れた人にはオリジナル食器を販売し、それぞれ持ち帰ってもらったことで、イベント終了時にはごみが激減しました。運営に対するクレームはありませんでした。このイベントは、参加者がリユースを考えるきっかけになり、そしてSDGsのゴールの一つにある「つくる責任、つかう責任」の気付きにつながり、これからの世界を考える上で一石を投じられたのではないかと思われました。

詳細は下のサイトから↓
吉本興業 SDGsの取り組み https://www.yoshimoto.co.jp/sdgs/
全国大学生協連×SDGs https://www.univcoop.or.jp/sdgs/index.html