光城 悠人氏インタビュー 世間のルールを疑って、新しいルールをつくるほうが楽しそうだと思いません?~みんな「就活しんどい」と思いすぎている説~

内から湧き上がる欲求、感情、動機に身を委ねよう

実体験に勝るものはない

主にこの記事を読む大学生に対して、何かメッセージを頂けたらと思います。

やっぱり、「まずやってみる」をやってみてほしいです。
その際に大切なことが、「変に情報を仕入れて、“上”を見すぎないこと」です。
たとえば先程の話で、僕が学生時代に平安神宮借り切って2日間で3万人呼ぶというイベントをやったこと、今聞いたら「ふうん、すごいね。そういうイベントってあるある」という程度の気がしませんか?
でも、僕らがそれをやっていたときは、「こんなことやっている学生は、ほかにいないだろう」というくらいの思いを込めていました。逆に言うと今の学生たちは、同世代どころか下の世代のすごい人たちでさえも、全部ネットで見えちゃうじゃないですか。そうすると、「所詮 こんなことやっていたって……」と思ってしまう。
例えば、チョコで2週間すごしてみたり、紅茶を直輸入していろいろ試してみたりしたのも、世の中にはそこまで はまっている人はいなさそうという面白さがあったから、楽しかった。今だったら、ツイッターやインスタでちょっと発信したからといって、そんなにバズらない。それくらい普通になってしまっているという感覚があって、頭の中で想像しただけで分かっている気になってしまう。

そんなにすごい発想やアイデアなんて出ないと思ってしまうかもしれないのですが、それこそ僕は肌感覚とか実体験が大事だと思う。珍しくて特殊で独自性があることよりも、単純であっても自分が実際にやったことを話せるほうが面白い。だから、紅茶の話もチョコの話もゼミを乗っ取る話も、ネットに載っていたら別に大した情報じゃないように思うかもしれません。でも、直に話したらネタになる程度には面白がってもらえることもある。自分でいろいろやってみていくことが大事だし、面白い。それが、どんどん頭でっかちになっていくことによって、「やる」というところまでもいかないというのはすごくもったいないなと思います。

なるほど、ありがとうございます。

メントスコーラもそうですよね。みんな、「古い、もう見た」と言うじゃないですか。メントスコーラ、やった人います? ここにいる学生4人のうち1人ですよね。あれだって、やってみないと分からないじゃないですか。コーラじゃなくて普通の炭酸水だったらどうなのだろう、ファンタとかだったらどうだろう、ってやってみた方が面白くないですか? 「じゃやってみよう」というのが大事で、その肌感覚が、うまくいくかいかないかというものも自分の経験値になっていくのかなと思います。

ネットで見る情報や入ってくる情報って、ただの受動で済みます。それこそ情報の矢印が自分側にただ入ってくるだけ。でも、「やってみた」は主体として矢印が外側に向かう経験じゃないですか。ですので、自分にとって「面白い」で終わるのか、「やってみたらネタになるかも」って外側に向かうのかというのは全然意味が違います。例えばメントスコーラの動画を100本見た人と1回やったことのある人とでは、絶対に話せるものが違いますよね。

「いいところ探し」が尊い

メントスコーラ100回見た人と1回やってみた人を比べると、1回やってみて良かったなというのは、なかなか感じにくいと思います。ネットを見れば、ほかにもっとすごい人がいるなあという感覚になりがちかなと思うのですが、そこをプラスに考えるにはどうすればよいのでしょう?

すごく単純な話ですが、やはり根本は「欲求」「感情」「動機」です。
就活や仕事をしていく上でもそうですし、人生の中でも一番大事なのは、自分の「欲求・感情・動機」を知っていくことだと思います。
だって、やっぱり自分でやってみたら単純に楽しくないですか? それを他者と比較し、どう評価されるかは、そのあとに派生的に生まれるものだと思います。自分が面白いと思ったことをやることこそが本来は純粋に楽しいはずなのに、その後から来るものを目的にしてしまうと、人からの評価や、人との比較を考えることになってしまう。自分よりできる人が目に見えてしまうと、しんどくはなりやすくなりますよね。
自分が楽しいと思ったことをやればいいんです。世の中には、河原で小石を拾って楽しむ人もいれば、電車の時刻表を見ているだけで楽しめる人もいます。ヘビやカエルを好んで食べる人もいる。そして、たぶんその人たちは「周りにどう見られてるんだろう……?」とは考えていないと思います。それでいいでしょう? 本当に自分が面白いと思ったことをやればいいじゃないですか。

世の中にいろいろな価値や意見があって、何を面白がるのかは人それぞれです。そんなのあり得ないという人たちも世の中の8,9割いたとする。でも、1割の人はそれをビジネスにする。その人たちは人生を無茶苦茶楽しんでいる。それだったら、知識を入れて全部頭で知っていることよりも、自分が面白いと思えることに没頭して経験を重ねている人の方が楽しそうな気がしませんか?

確かにそうですね。そういう気持ちで働いている人の方が、生き生きとして見えると思います。

すごい人と比較するのはあまりよくないと思いますが、例えば情熱大陸に出ているような人だとか、ホリエモンだろうがイーロン・マスクだろうがザッカーバーグだろうが、あの人たちは自分が楽しく働いているじゃないですか。嫌々やってなんかいないですよ。楽しんで没頭している人の方が僕は絶対いいと思います。
それこそ僕はエン・ジャパン時代に、残業は普通に月間100時間なんか当たり前で、入社4年目くらいまでは終電前に帰ったことなんて20回ぐらいしかなかったくらい働いていました。でも充分に楽しく働いていて、会社が上場したあとに残業制限ができたときは、残念に思うくらいでした。

就活や仕事も、しんどい前提で入ったら嫌なことはいくらでも見つけられます。嫌なこと探しは誰でもできるもので、「これ嫌だ」「ここが良くない」は小学生でも幼稚園児でも言えます。政府に対しても、ウクライナとロシアに関しても、小学生ですらここが良くないという点はいくらでも言えるけれども、じゃあ、「それの良い側面ってなんだろう?」となると、小学生や幼稚園児では言えないと思います。「いいところ探し」ができる人は世の中に少ないけれど、そういう人は希少価値で、貴重な存在だと思います。

既成概念に縛られない

就活で悩んでいる学生がまだ多くいると思います。好奇心があってもなかなか踏み出せない学生もいる中で、そんな学生に向けてメッセージを頂けたらと思います。

シンプルに伝えたいのは、「ルールを軽視してみませんか?」ということ。
就活はこれをやらなければならない、社会はこういうものだ、と日常生活の中でも「ルールだと思われている」ことが多くて、それに縛られている人も少なくないと感じます。でも僕は、明文化されているルール以外はルールじゃないと思っています。だって例えば、「空気を読もう」、それってどこにも法律でルール化されていないじゃないですか。それどころか明文化されているルールですら、本当にルールなのかどうかは怪しいですよね。

就活はこうするものだというのも、ルールのように見えるけれど、そんなことはありません。それって誰が言っているのでしょう? 企業の人はルールを設定していないのに、就活のアドバイスをする人たちが勝手にルールっぽいものにしているだけです。黒スーツじゃなきゃだめ、黒髪じゃなきゃだめ、それって企業の人たち言っていますか? その企業の人たちは黒スーツしか着ていないですか? 髪の毛が真っ黒の人しかいないですか?

そう考えていくと、学生にとっての就活はそもそも社会人になるための活動で、企業にとっての採用活動は、社会人として活躍する人を採用する活動です。企業側はそんなに細かいルールを提示していないのに、就活としてはルールがあるかのように見えてしまって、それに縛られるのって、僕はすごくナンセンスであり、もったいないし、むしろすごく損だと思います。そこで言われているルールって本当にルールですか? 誰が定めたルール? まずはそれを疑うこと。要は社会に出て活躍すればいいだけの話です。他者に価値を与えられたら、それだけで社会人である、と僕は考えています。

社会人って別に黒スーツだけ着ているわけじゃない、黒髪だらけじゃない。白ワイシャツだらけじゃない。だから、ルールっぽいものを疑ってこそ、自分自身の人生の生き方を考えるきっかけになるだろうと思います。ぜひそれを意識してみてはどうでしょうか。
何よりルールに従うだけよりも、ルールを作る人の方が楽しいじゃないですか。世の中のルールを疑って、新しいルールを作っている人の方が楽しそうな気がしませんか。ウーバーとかエアビー(民泊)とか、アイチューンズとかも、世の中でいいものを生み出す人たちっていうのは、既存のルールを疑って、新しいルールを考えている人たちです。ぜひ、縛られずにやっていってほしいと思います。

これを読んだ就活生が前向きになれるお話だと思います。本日は大変貴重なお話を頂きまして、どうもありがとうございました。

2022年6月8日 リモートインタビュー

PROFILE

光城 悠人氏(みつしろ ゆうと) Twitter

1977年、北海道生まれ。東京、大阪、秋田、栃木、京都育ち。立命館大学卒業。就職氷河期に人材採用・教育サービスを行うエン・ジャパン㈱に入社。営業・ライター・クリエイティブディレクターとして7年間勤務し、新卒求人サイトの立ち上げや500社以上の新卒採用コンサルティング等に従事。エン・ジャパン退職後、学生が新しい価値観に出会えるコミュニティの実現を目指し、2008年に京都で飲み屋『猿基地』を開業。就活に対する悩み相談や、新しい価値観の提供を担う。地方就活生のための就活イベントセミナー講師。企業の相談係やセミナーを行う。就活ブログを執筆し、著書に『内定力』、『内定メンタル』(共にすばる舎)等。

『猿基地』:立命館大学近くにある、たまり場的飲み屋。光城さんや常連と語り合えるカウンター席、ゆっくりくつろげるソファ席、友達と盛り上がれるテーブル席、パソコン作業ができるロフト席、コタツ席など、まさに「基地」的な遊び心あふれる内装。就活・恋愛など、ここを訪れて熱く語り合う学生は多い。