落合陽一さんインタビュー「予測不能な社会の中で、学び続ける、自分の興味を見つける、そして本質を捉えて主張するために。」

社会の変化を捉え、学び続けること・新たな情報に触れ続けること

今の大学生はかなり岐路に立たされていると思いますが、学部や専攻に関わらず、ここは押さえておいたほうがいいというテーマがあれば教えていただきたいです。また、大学生に限らず「人生100年時代」において、生涯学び続けることの重要性について、なぜ学び続けることが大事か、何を学び続けることが大事か、どういう姿勢が大事かということを教えていただければと思います。

専攻に関わらず学ぶべきことは、私が理工系なのでコンピュータープログラミングを推したいところ(笑)。プログラミングくらいはちょっとできてもいいんじゃないかな。あとは、デジタルなものを使いこなす知識に関しては、とりあえず手が早く動くほうがいいので押さえておくとよいと思う。プログラムを書いてみるとか、ソフトをダウンロードしてみるとか。正直な話、専門職でプログラムを書く人以外もITリテラシーは高くないといけないので、ITリテラシーを上げていくための訓練はしたほうがいいと思います。だって、SNSを使いだすといきなり放言をし始める人たちもいるでしょ。そういうところも考えて、ITを使いこなす方法はあったほうがいいと思います。でもそれは2010年代までの世界観かもしれません。

今の学生としては、世界に対してのある種の倫理観とか、この社会の持っている課題というのを、国ごと・地域ごとに理解しておく必要があると思います。自分たちのバックグラウンドにどんな社会課題があるのかっていうのは、専攻を問わず理解していてもいいと思います。例えば少子高齢化だとか、シングルマザーの貧困問題だとか、自分の社会が持つ課題に対して寄り添う感覚を忘れないことでしょうか。

そういった倫理観や、世界の中にあるバックグラウンドを学んだほうがいいというところで、改めてそれは全国の学生にとって共通することだと思います。具体的に、何をどういう風に学べばいいか、例えば本を読むとか、世界に触れるとかいろいろな考えられる方法があると思いますが、どういった方法がよいと思いますか?

学生が比較的にいいと思う点は、放っておいても意外と毎週授業があるし、ゼミもあるし、情報に触れる機会は多いところです。ただ、社会に出て4~5年経つと、あっという間に情報に触れる機会が減ってくる人もいます。それはSNSで新しい人をフォローしなくなったりとか、テレビから流れてくる情報といってもテレビを見ているわけでもなかったりとか。新聞はとってないとか、ニュースもそんなには見てないとか。このように情報源が限られると、意外と新しいことは分からなくなってしまうと思います。学ぶために必要なのは情報源になるべく接しておくということだったりするかもしれないね。

あと定期的に自分で勉強する時間を作ったりとか、情報を取りにいく時間をつくったりとかすることも大切だと思います。それでいうと例えば、紙の新聞である必要はないかもしれないけど新聞を読んだり、本を買ってきたり、そうやって情報を取りにいくのも大切ではないでしょうか。

改めて、新しい情報に触れる意識でいろんな媒体に当たるということが大事なのかなと思いました。

あとは専門家に直接会いに行くっていうのも大切です。専門家に直接会いに行けるのは大学生の特権だと思います。大学の中に専門家いっぱいいるからです。大人になると、専門家に直接会いに行くコストって格段に高くなるんです。私は興味がある人がいれば自分の番組に呼んだりするのですが、ほかの人はそういう機会がないので結構大変だと思います。

専門家に会いに行く、直接お話を聞くっていうのが大学生ならではの特権という話に関連して、大学生ならではの特権だなあということを、もし他にあれば教えていただきたいなと思いました。

大学のリソースを使えるというのは大きいと思います。例えば、今はコロナの影響で論文がフリーダウンロードになっているところも多いので、無料で論文にアクセスできますよね。あとは研究室も大学のリソースにあたるけど、理系だったら実験機材とか使える研究室もたくさんあります。そして、大学はそもそもスペースが広いので、場所には恵まれていたりするし、図書館もフリーアクセスだったりしますよね。

そうですね。確かに大学のリソースにアクセスできるのは便利ですね。

大学は意外に情報に触れるためのアクセシビリティは高いと思いますよ。そういった観点で言うと、学問へのアクセス価値が高いので、大学にいることは非常にいいと思います。

学問へのアクセスのしやすさのところは、改めて学生として実感したいなと思いました。

あとは学割で、美術館や博物館の入館料が安くなったりしますよね。学割で買えるものは、試してみたほうがいいと思いますよ。

大学生のところから先の話にはなるんですが、学び続けることがすごい大事だっていう話をいろんなところでお伺いしています。改めて今の大学生が社会に出たあと、生涯学び続ける重要性について教えていただければと思います。

30年前の大学生が出た社会っていうのは、ここの30年間を振り返っても、歴史的な変化って、日本の中ではバブル崩壊前後・リーマンショック前後くらいかもしれません。地震や災害もの被害もありましたが、そこまで働き方が一気に変わったかと言ったら…まあ少しずつは変わってきたような気もしますね。

今の大学生が社会に出る頃を考えて、社会が変わるかといわれたら、実はそんなには変わらないかもしれない。そうは言ってもじわじわ変わってくると思っています。少なくとも貧富の差はこれまで以上に大きく広がってしまうでしょうし、あと移民の問題を解決しないと、人口の観点から我々の国が回りにくくなる気もします。コロナの影響で都市集中が終われば(個人的には終わらないと思ってますが)、地方都市も成立するかもしれないですね。ただ、それを望み薄かなと想定すると、やっぱり移民とか自動化の問題には対応していかないといけません。ただ、コロナ禍のわずか3か月くらいでデジタルに対応するためのコストは、非常にかけやすくなったのではないでしょうか。人の分断があると「限界費用のやすいデジタルを使わないとどうしようもないよね」ということにみんな気がついたと思います。

そういった観点で言うと、今の大学生が生きていく社会は、社会が変わって何をしないといけないのかを、常に学んでいかないといけない世界にはなったといえるでしょう。そう考えると、社会変化に対して敏感になる必要があると思います。

お話を伺って、今まで以上に社会の変化を捉えて適応していく必要があると実感しました。

「落合さんがいま大学生に戻るとしたら、何をしますか?」

少し難しい質問になるかもしれないですが、今もし落合さんが大学時代に戻るとしたら、何を学び、何を経験するかを教えていただきたいです。併せて、進路選択を控えている大学生もたくさんいると思いますが、進路選択の際に意識することもぜひアドバイスいただければと思います。

今大学生に戻るとしたら?大学生に戻っても相変わらずコンピューターサイエンスをやっているような気もするし…何をやるでしょうね(笑)。大学で何をするかって、意外と高校のときの知識に引っ張られているような気がするので難しいですが、相変わらずコンピューターを勉強して相変わらず研究しているんだろうなという気がしています。


6年前・13年前に撮影した写真を、
Googleフォトから紹介していただいている様子

学生時代に大学生がどんな経験をすべきか…実は、19歳くらいから今まで生活があまり変わっていないんですよね。だいたいモノを作って、研究して、みたいなことばっかりやっています…。例えば、Googleの機能で何年か前の写真が一気に検索できるのですが、6年前にやっていたことも、大学1年生である13年前にやっていたこともあまり変わっていないですね。なので、やっていることは一緒ですね、昔も今も。ほぼほぼ変わらない気がします。

そうなんですね。

何年経ってもそんなに変わらなくて、何年前かの写真で、過去同じ日何をしていたかなーって見ても、やっぱり実験しているし、変わっていませんね。

そういう意味で言うと、大学に入る前とか、入って直後くらいの考え方が結構人生に影響するってことですか?

最初から最後までやってることが同じ人は強いのではないでしょうか?「それが得意だ」ということだから。個人的に見ても大学生のころから写真を撮っているのは変わらないし、そういう意味では本当に特に何も変わっていません。規模が大きい仕事が多くはなりましたが、やっていることはあまり変わっていないから、もし他に得意なことがあったのならば、すでにやっていると思います。得意なことでなければ、やっていないはずなんですよ。そこは見極めたほうがいいと思います。つまり、改めて何かを始めるっていうよりかは、自分が今すでにやっていることの中から発見していくのがいいかもしれませんね。

自分が今やっている中で得意だと思ったことを、進路選択の時にも意識することが大事ですね。