西園寺さん インタビュー

動画制作の裏側

分析→考察→面白さに個性を

西園寺さんは旅をテーマにマニアックな企画を立案されていますが、その企画はどのように思いつくのですか。

YouTubeを始めた動機は、「あ、これ僕が動画作ったら面白いんじゃない?」みたいな勘違いから始まったんです(笑)。それで動画を出していくのですが、YouTubeって登録者1000人いかないと収益化されないんですね。そこにいくまで2年弱かかり、自信をへし折られてもう全然ダメだったんですよ。

それで、面白いというのは人それぞれ違うけれど、やはり何がウケるのかを分析して考えてやらないといけないなと思いました。「自分の面白い」と「不特定多数の面白い」は全然違う。人に受け入れられ、かつ自分の個性を出せるようにするにはどうしたらいいのかと考えました。

そこから分析がすごく好きになり、交通系や旅行系の動画をピックアップして、それのどこがなぜ伸びているのか見ていくと共通点が見つかって、その要素を分析してみたんです。動画があったとしたら、花を見るんじゃなくて茎を見ると言うんですかね? 面白い動画に共通するウケる要素を抽出して、それを自分なりに解釈して、そこに自分ならではの個性を入れられるように考えながら動画を作っていきました。

具体的に動画の企画を思いつくのは意外と日常生活の中で、歩いている時なんかにふっと目に入ってきた情報とかに「あ、これおもろいかも」と感じることが多いです。ずっとアンテナを張っているというか、もう街を歩いていたら面白い動画の原石が転がっているなという感じですね。

日本が大好きな西園寺さんだからこそ思いつくテーマもあるのかなと、今のお話を聞いて思いました。

旅の知識で差別化を

動画の中で旅先の歴史や文化など、旅行が楽しくなるような様々な知識を紹介されていますが、どのようにして知識や関心の幅を広げられていますか。

一つは好きなことの範疇で、「これって何なんだろう?」と情報を収集することです。もう一つは実体験ですね。大学1年生の夏休みにやった『日本一周最長片道切符の旅』。これがYouTube西園寺チャンネルで初めてのシリーズだったのですが、その時に気付いたことは、「旅の楽しみ方っていうのは、その街が決めることじゃなくて自分が決めること」でした。魅力がないところってないし、つまらないと思うのは、場所がつまらないわけではくて知識がなくて楽しもうとできない自分がつまらないんですよね。

例えばトンネル一つとっても、「何の景色も見えないし耳がツーンとしてうるさいな」と思うのか、そうではなく「以前は迂回していたけれどこのトンネルができたことで短絡化されてかなり便利になった」という歴史を知っていれば、トンネル一つで感動できるでしょ?

それはもう47都道府県どこに行っても同じで、「あれ、なんでここ、道こんな急カーブしてんの?」みたいに、「なんで?」って思ったところにちゃんと理由がある。背景を知りながら旅行するのとそうでないのとでは、そこに感じる魅力が全然違ってくるんですね。

その知識を得るというのはお金がかかるわけでもないし、旅の深みや充実感を増すのにすごく役立つと思うんです。旅を楽しむ姿勢の一環としていろいろな知識を知っていたらもっと旅が面白くなるというのが、その最初の旅で思ったことでした。このバックグラウンドがあれば動画により深みが出て、他の動画と差別化できると思っているので、動画を見る皆さんにもそれを味わってもらえれば嬉しいなと思います。

私自身も元々交通には関心がなかったのですが、学生委員の活動の中で移動が多くて、この移動をもっと楽しめたらいいなと思ってYouTubeで調べたら西園寺さんの動画にたどり着きました。自分の知識と体験をつなげられる西園寺さんの動画はすごく魅力的で、地域の魅力について知るようになり、はまってしまいました。

いや、嬉しいですもう。ありがとうございます。

小さな成功体験の積み重ね

西園寺さんは日本全国を舞台に活動されていらっしゃいますが、様々な企画や取り組みに挑戦できる、その活動の“源泉”となるものを教えてください。

やはりエネルギーが有り余っているというのは大きいかもしれません。その源泉というと、YouTubeを始めて2年間はもう全然誰も見てくれなかったので、「なんで見てもらえないんだろう」と、自分に対する怒りはありましたね。それでムキになって頑張ったみたいなところはあります。それはやっぱり動画を作るのも好きだったし、旅行も好きだったから。

自分が「これは勝てるだろう」と思っていたことがうまくいかなかったことに対して、どうやったらうまくいくのかを考えるのが結構楽しくて、何回もチャレンジしました。YouTubeの場合、すぐに数字で結果が出てきます。そういう意味で一つの動画をショートプロジェクトと見立てれば何回でも失敗できるし、それで面白くないと数字が言ってくれれば、じゃあそれを変えていく。どんどん変えていって、何回も何回もチャレンジして。そうしたことで小さいマーケティングの勉強みたいなのができたかなというのはありました。

その小さい成功体験の積み重ねがうまくいってからは、別に僕も大金持ちになりたいわけでもないので、ただ自分がやりたいことができたらいいな、そのできることを少しずつ増やしていけたら楽しいだろうなと思っていました。それで昔はできなかったことが今はできるようになり、今やりたいことがどんどん変わっていった。でも、それって今できることをちゃんと一つずつやり続けていったからなのだと思います。

今では、昔は考えられなかったような、例えばJRさんと一緒にツアーを企画させてもらったり、鉄道博物館を貸し切ってイベントやらせてもらったりというのは思ってもみなかったことなのだけれど、一つ一つの動画がなかったら絶対できなかったことなので、自分でも想像しなかった大きなところに行けたのは、やはり地道にできることを続けてきたからかなと思います。

自分は今まで結構挫折してやりたいことが叶わなくて、うまくいかなかったなと思うことがすごく多かったんですけど、これから挑戦して一つ一つ積み重ねていこうと思いました。

いや、僕も10本動画を出したら7本は失敗なんですよね。やっぱり数字ランキングみたいなものが出るんですよ。制作側からしか見られないんですけど、自分が出した過去の動画と比較して、どれくらい再生されてるかとか。10本出して思い通りになるのって3本ぐらい。7本は全然ダメ。でもそれが失敗かというとそうじゃなくて、それのどこが悪かったのかというのも数字で出てくるので、間違ったものはもう二度とやらなかったらいい。それを見つけたというのは一つ成功なのかなと考えると、やめない限りは失敗しないなという感じはあります。

ありがとうございます。ちょっとこんなことで折れちゃダメだなと思いました。

いやいやいや、YouTubeしかやっていない僕ですが(笑)。

CONTENTS

自己紹介とこのインタビューの趣旨

動画制作の裏側

学生が旅行をより楽しむために

日本全国を旅して思うこと

若者世代へのメッセージ