坂本 達さんインタビュー「まず行動しよう 君の『夢の力』が周りを動かしていくから」

興味の一歩先を心がけて行動したら、自然と国際理解が進むのではないかな・・・

今伺ったギニアでの話以外にも、自分を変えたような印象に残った出会いや経験があれば教えてください。。

最初は自分が「やりたい」ばかりでしたが、途中から自分一人ではできない経験をさせてもらっていると強く思うようになりました。それこそ無償で受け入れてくれたギニアのお医者さんを含めて、現地での出会い、スポンサーが提供してくれる商品、自転車が走る道路を作ってくれる人とか、その日に出会うたくさんの人の支えがあって初めてできたと感じられました。ミキハウスからも有給休暇を頂いて、出社はしてないですけど同じ組織として繋がっている一体感はすごくありました。

それで、このみんなに支えられて実現したという経験を伝えなくてはいけないと思うようになりました。日本がよりよくなるようなヒントを伝えることによって、日本がもっと明るく豊かになる。そういう文化がたくさん入って、いろいろな価値観やダイバーシティが感じられようになったらいいな、そのために偏見かもしれないけれど僕が経験を伝えなきゃ、と思うようになったのが心境の変化ですね。

大学生にもできる国際交流、大学生がやっていくべきことを教えていただけたらと思います。

大学生の皆さんって、好奇心もあるし、行動力もあって、すごいポテンシャルを感じますよね。そこに具体的なきっかけやチャンスがあると、より行動力を発揮できると思います。ただそのきっかけがつかみにくいかなと思っています。

僕の参加した内閣府の青年国際交流事業や、安全でお勧めのスタディツアーもありますが、一番手っ取り早いのは友達をつくることじゃないかな。身近なところでは、例えば大学に留学生がいたら友達になるとか、外国の人が観光に来ていたら、ちょっと声をかけてガイドを行いました。我が家ではホームステイを引き受けていますが、友達をつくることでもっとその人のことを知ろうと思うし、向こうも興味を持ってくれる。その人の国に行ってみたいと思うし、向こうも日本人を呼んであげたいと思うようになる。そういう体験が必要だと思います。

2年前に3冊目の著書『100万回のありがとう』を出し、その中で僕の帰国後の国際協力と国際貢献について書いています。ぜひ読んでください。母校の大学で講師を務め、ブータンで学生とフィールドワークをして「JICA地球ひろば」などでプレゼンを企画するなど、実際経験を伴った授業のことも書きました。学生は自分たちで役割を決めて運営するスタイルだったので、負担は大きかったですが学びも大きかったと思います。

難しいのは、本を読んでもイベントに行っても、分かったつもりになって行動が伴わないということ。行動しないと自分に入ってこないので、読んでその国に行ってみるとか、その国の友達を作ってみるとか、料理を食べた後にお店の人と話をしてみるとか。行動するという、興味の一歩先を心がけるようにしたら、自然と国際理解・協力というのは進んでいくのでは・・・と思いますね。

マイナスな意見は聞かなくていい 心を開いて仲間をつくることが大切

最後に、これは多分全国の大学生が一番伺いたいことと思いますが、4年間の過ごし方や進路選択の場において大切にすべきことを教えてください。また、夢にチャレンジするために大切なマインドも教えていただければと思います。

思うようにいかないことの連続で、失敗して終わりではなく、とにかく行動することだと思います。行動しないと人間は考えすぎるので、どうしてもマイナスにシフトしていくのだと思います。

それから、マイナスなことを言う人って、絶対いますよね。「そんなの無理だ」「もうちょっと考えた方がいいのでは」って。その人は親身になって言ってくれているのでしょうが、日本の社会ってとにかく失敗させないようにとか、子育てをしていても子どもに失敗させないようにとか、そういう風潮がある。動いていない人ってネガティブなことを言うんですよ、僕の経験から言うとね。だからそういう人の話はあまり聞かない(笑)。
本当にチャレンジしている人って、僕らの世界を家族で8年かけて回るとかいうのも、ほぼほぼみんな応援してくれますね。やることの意味も、やることの大変さも知っているので。
いろいろな進路の選択においても、とにかくチャレンジしようと思ったら、自分自身が納得するまでチャレンジしたらいいと思います。失敗してもその中で学びがあるわけですから。

もう一つ、夢を追いかけていると孤独な状況になることがあります。そんな時に大事なのは仲間です。家族でも恋人でも友達でも、理解者を持つことって、精神的にすごく大事です。その夢を長く持ち続けられるのですよ。一人だと限界があって、もういいやって思ってしまいがちですが、それを長続きさせるためには仲間が絶対必要で、僕の場合もずっとそういう人がいてくれたのです。

でも、ありのままの自分を伝えないと、仲間って来てくれない。自己開示するのって恥ずかしいし、苦手っていう人が多いですけど、自己開示したらみんなが好きになってくれると思います。僕の経験からいうと、自分からオープンにしないと、人って来てくれません。ガードしている限りは、なかなかなお互いガードが外れません。自分から心を開いて仲間と進んでいく、チャレンジしていくということが大事かなと思いますね。

できる・できないではなく、「やる」

職場にしても仕事内容にしても、とにかく新しい環境は誰でも怖いし、失敗したくないという気持ちはあります。でも、尻込みしても、とにかくやってみると意外にでき、全部は無理でも半分くらいできたら「こうやったらできる!」って分かるし、次にやるべきことも失敗して分かってきます。
とにかく最初の1、2年目は、失敗しても許されると思ってやってみる。行っているうちに、これが好きだという自分に出会ったり、自分はこれが得意だって人が言ってくれたりするので、がむしゃらにやってみるといい。この仕事をできる・できないじゃなくて「やる」、好き嫌いじゃなくて「やる」。恥かくのって一瞬、一生ってすごく長くて、その時の経験が後々生きてきますから。

僕は帰国子女で、帰国した時にちょっと学校でうまくいかなくてしばらく悩んでいた時期がありました。それ以来、人前で話すのがすごく苦手だったのですが、入社して人事部に配属されてから、マイクを持って人前で話すという一番避けたいことをしなければならなくなった。
ところが不思議なことに、3年目ぐらいで人前で話をすることが楽しくなってきました。経験が以前の僕を変えてくれたのです。原稿がないと喋れなかったし、手や紙が震えて「やべえ」と思うからもっと頭が白くなって、喉が渇いて、呼吸が浅くなってという自分が、原稿なしで1,000人以上の前でも1時間半話ができるようになったのです。
そう思うと、今できないからって、それが一生できないわけじゃない。以前は講演に呼んでもらって、感謝されて、それが収入になるなんてことは考えもしませんでした。だから、いろいろな経験によって自分はどんどん成長するし、得意なことにも出会えると思いますね。

若かりし頃は「石の上にも三年」という言葉はあまり信じていませんでしたが、振り返ってみたらやっぱり3年はやっていたなと思います。だからできない自分を過小評価するのではなく、自分の可能性を信じてあげるというのも、今の時期にはとても大事なことだと思います。「自分はダメ」って言う人に、「じゃあ、どこまでやったの?」って聞くと「やってない」って言う。僕もかつてそうでしたけど、経験が自分を変えていったという経験があるので、「やってみなきゃ分からない!」「まずやってみる!」ということを、皆さんに伝えられたらと思います。

まず行動し、自分の夢を維持しながら周りに仲間を広げていくこと、自分を過小評価せず、自分を信じるというところはぜひ多くの人に届いてほしいなと思いました。ありがとうございました。

PROFILE

坂本 達さん

1968年生まれ、東京都出身。7歳から11歳までを父親の仕事の関係でパリに暮らす。
1992年早稲田大学政経学部経済学科卒業、同年株式会社ミキハウスに入社。社長を説得し、1995年9月26日~1999年12月28日まで異例の4年3ヶ月の有給休暇を取得し、単独自転車世界一周で5万5千キロ走破。帰国後、旅の様子をまとめた書籍『やった。』や『ほった。』などの印税で、世界一周中にお世話になったギニアの村で井戸掘りや診療所を設立。ブータンでの教育支援プロジェクト実施。会社勤務の傍ら、国内外で講演活動を続ける。著作物の印税を東日本大震災の被災遺児や被災孤児への育英金・奨学金等として全額寄付するなど、多くの社会貢献活動に力を注ぐ。一家4人で自転車による「世界6大陸大冒険」に8年計画でチャレンジ中。