せやろがいおじさんインタビュー「まず動いてみること、自分のアンテナの感度を高める。」

大学生の社会問題への向き合い方

社会への関心はあると答える大学生は増えていても、実際に社会について学ぶのはハードルが高いとか、そもそもどう行動すればいいのか分からないという学生が増えていることが私たちの問題意識としてあります。

もっと広く大学生が社会に目を向けて、自分なりの意見を発信し行動するために、意識すべきことを教えてください。

卒業してから学生の最大のアドバンテージだなと思うのが「これってどういうことですか?」と言えること。学生からの問いやアクションは、社会人からしたら嬉しいですよ。教えたがりの人間の本能を絶妙に刺激しますよね。だから学生は、そこが最大の強みだと僕は思っているので、自分なりの意見を発信するとか、学生の立場を逆手にとって質問みたいな形式で意見を発信していけば、そんなに声を発することって怖くないのかなと思いますね。

この間、若者の投票率や選挙全体の投票率が下がってきている印象があります。自分の考えに自信が持てず、自分の持つ問題意識や投票行動について、どう教えを乞うべきか、どう自分なりの情報収集をすべきだと思われますか。

最近よく言われる言葉ですが、結局いま社会が抱えている問題や政治的な課題って「答えのない問い」なんですよね。正解、不正解がないので、投票しに行くにしても、自分の考えや自信が持てないというのは当たり前の話でしょう。だって誰も正解を知らないことだから。だから不安でいる、不安な状態を保っている方がむしろ健全だし、準備完了してから動くのではなくて、動きながら情報を集めたり、アンテナを張ったりしてもいいかなと僕は思いますね。まず動いてみることで、自分のアンテナの感度も高まるし、情報が集まってくるということもあると思うので。

とりあえず動いてみるということがすごく大事だと思うのですが、でもやっぱり目を向けない人ってまだまだいる、そういう人に対してはどうしていくべきか、また自ら聞けない人はどうしたらいいでしょうか。

そもそも全く関心がなく、問題意識もない人を動かすというのは難しくて、その人が人生のどこかのステージで「きっかけ」に出会えたら、きっと動くはずですよ。だから、問題意識を持って動ける人は、「きっかけ」を与えるためのアクションをし続けるしかないし、問題意識を持っているけどどうしたらいいのか分からないという人に対しては、さっき言いましたが、とりあえずSNSでいろんな人をフォローしてみたりとか、新聞を見たりとか、その中で得た疑問をまた聞いてみたりとか。そこでまとまったものを行動に結びつけて、よりこれから情報が集まって感度が高まっていく、ということをしてみたら?としか言えないところはあるかもしれないですね。

確かにきっかけというのはすごく大事だと思いますし、簡単なことから広がっていくのかなと思います。

社会問題や政治というと、とてつもないハードルのように感じますけど、政治なんか我々が生きている中では空気のように当たり前に存在しているものだから、それについて全員が関わっていることに関して話すことなんて、別になんの怖いことでもハードルが高いことでもないっていうこと。フランクな、空気のような感じで、むしろそんな重いことと思っている方がダサいよっていう感じになっていけばいいなと思いますね。

政治はハードルの高いものみたいな印象を持っている学生は多いと思うので、フランクに私たちも伝えていけたらと思います。

参加しやすくなっていると思いますよ。Twitterでもハッシュタグで呟けばいいだけですから。国会議事堂の前でデモに参加してシュプレヒコールをあげる時間とお金を使わなくていいわけですからね。1回呟いてみたら興味を持つだろうし。いろんなツールが出てくることによって、ハードルがどんどん下がってきていると思いますね。

先日アップされている動画の中で、国がコロナ対策で間違った方向に行っているのに「批判するな」と言っている人はおかしいのではないか?という動画を拝見しました。私たちも日頃からいろんな大学生と活動していて、すごく穏やかに生きている学生が多いなと感じます。ただ心の中で「これは訴えたい」「ちゃんと批判した方がいいのでは?」とは思いつつ、今回のコロナ禍での学生への補償や経済的政策の部分でも、なかなか声を出せずにいた学生も多かったという印象を持っています。学生が批判慣れしていく中で意識した方がいいところ、チャレンジしてみようというメッセージがあれば、教えてください。

いま例えば芸能人の方が政治的な発言をした時に、結構ボコボコに叩かれたりするじゃないですか。若い方からしても怖いと思いますよね。政治の話がスラム街みたいな、これは立ち入ったらだめだよ、みたいな感覚になっているところが、ちょっとあると思います。だから、我々がやりたいコミュニケーションはあくまでも会話のキャッチボールであって、ドッジボールじゃないと。批判をしたり相手を倒してやろうとか、意見をぶつけて懲らしめてやろうみたいなトーンになると、どうしても本来やるべき議論とずれて、相手にどうダメージを与えるかというのが優先順位の一番になってしまうので、そうではなくて自分の意見を投げて、相手の意見が返ってきて、新しい発見があったり、違う角度が自分の目線に備わったりとかして、今よりも考えが更新されることがやりたいことだと思います。批判をするときは、できるだけキャッチボールになるような言葉を選んだり、相手に納得がいかない時もドッチボールに発展しないような応答をしていく方がいいのかなと思います。「検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグがあそこまで広まったのも、今まで行われたTwitterデモよりも言葉が尖ってなかったからですよね。「あれ止めろ」だとなかなか参加しづらいところもあると思うので、言葉のトーンをどうしていくのかを調整しくことも大事だと思います。