立田 真文 准教授

インタビュイー

立田 真文 たてだ まさふみ 准教授(富山県立大学)
プロフィール

聞き手

  • 安井 大幸 やすい まさゆき
    (全国大学生協連 学生委員長)
  • 千葉 樹 ちば いつき
    (全国大学生協連 学生委員)
  • 木原 悠駿 きはら ゆたか
    (全国大学生協連 学生委員)
  • 山口 朝香 やまぐち あさか
    (全国大学生協連 学生委員)

はじめに――自己紹介

先生、初めまして。全国学生委員会のメンバーが今日、参加させていただいております。よろしくお願いいたします。

お願いいたします。

私は全国大学生協連学生委員会で学生委員長をしております安井大幸と申します。現在、琉球大学教育学部の4年生になります。よろしくお願いいたします。本日参加している千葉さんと木原さんと山口さんは、学生委員会で環境活動を担当している3人になります。また、千葉さんは全国環境セミナー2021の企画責任者をになります。今回は特に千葉さんから立田先生にどうしてもお話を伺いたいということで、このような機会を設けさせていただきました。本日は千葉さん中心にインタビューを進めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

お願いします。

よろしくお願いいたします。先ほど安井さんからご紹介に預りましたが、全国大学生協連で学生委員会をさせていただいております。その中で、環境活動の方も主体的にやらせていただいています。宮城大学の食産業学群というところを3月に卒業いたしました。千葉樹と申します。よろしくお願いいたします。

関係ない話ですが、宮城大学の食産業学群に以前いらっしゃった岩堀 恵祐先生って僕の知り合いですよ。

あ、本当ですか?

僕が阪大でドクター学生の時の先生です。お世話になりました。

意外と、こういうところにつながりがあるのですね(笑)。

(笑)

ぜひぜひ、今日は短い時間ではありますがお時間いただきましてありがとうございます。よろしくお願いいたします。

お願いいたします。

同じく全国大学生協連の学生委員会で副学生委員長を務めております木原悠駿と申します。千葉さんと同じように環境の分野であったり、あとは消費者教育の分野も担当しているのですが、最近話題のエシカル消費であったり食品ロスの話であったり、そういった話も環境分野とつながりがあるのかなというふうには感じております。この春、3月に九州大学の経済学部を卒業し、活動しております。本日はよろしくお願いいたします。

よろしくお願いいたします。

私は同じく全国大学生協連で学生委員会として活動をしております山口朝香と申します。大学は金城学院大学を3月に卒業しまして、先ほど紹介にあったように環境活動のほかにも学びのところで読書や学習支援というかたちで学び系の分野の推進活動を担当しております。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

お願いします。僕は立田真文(たてだ まさふみ)と申します。今は富山県立大学で教えていますけれども、この前は大阪大学にいたのですね。だいたい僕はね、ちょっと変わった経歴で、家が産業廃棄物業者やって、産業廃棄物ってゴミが、その時は3Kって言われていて、「きたない・くらい・くさい」っていう時代だったんですよ。今は3Rでしょ。でもその時代の3Kは、「きたない(Kitanai)・くらい(Kusai)・くさい(Kurai)」ね。そのKやったんですけれど、だから差別の対象やって、もう廃棄物に触っていること自体が大嫌いやったんですね。そんな自分を変えたいとずっと思ってたんです。僕は、大阪工業大学の二部に通っていたんです、夜間部。で、昼間は家で父親の廃棄物の仕事を、家内事業やったんで手伝っていて、夜に学校に行っていて学んでいました。だから大学に行くことが非常に楽しかったんですけれども、もう廃棄物は嫌だということでアメリカに逃げていったんです。本当に逃げていった。でも、人生面白くてね、結局アメリカで出会った友達、イタリア人のニコラっていうんですけれども、彼に「いやあ、お前いいことやってるやんか」「家が廃棄物業者って素晴らしいやん」と言われて、結局廃棄物の勉強をして帰ってきたという。。。
で、今はですね、廃棄物やっていて本当に良かったなあと思うのですね。だから、ちょっとありきたりな言葉けれども、廃棄物に恩返ししたいなあという、まあまあこれはゆくゆく話していきますけれども、そういう気持ちでやっています。そういう気持ちで廃棄物のリサイクルを可能にする技術の開発をやっている。技術を開発して、それを実際に廃棄物が資源となるようなことをやっていると、そういう研究をしています。よろしくお願いいたします。

よろしくお願いいたします。

環境問題は、親しみのある媒体でみんなを巻き込む

現場にいたから廃棄物の事、現場も全部知っているという。汚泥をずっと集めていたからね、家の仕事。

ありがとうございます。今回、企画書でも送らせていただいたのですが、実は学生委員のところで先生の著書の『ロマンティック廃棄物』を読ませていただいて。

これでしょ?(実物をかざす)

はい、そちらで。僕も読ませていただきまして、面白いですね、実際のストーリーとほかの環境問題と廃棄物のお話が交互に入っていたので、ものすごく読み進めていけたなと思いまして。

これ、多分構想から7年ぐらいかかっている。渾身の一冊で、ベストセラーにするつもりやったのですが、実際は売れてない。なんで売れないねん!と思ったのですけどね。

魅力が伝わってほしいなあと思うのですけれど。

僕、この本の印税でフェラーリ買うつもりやったんですけど、全く駄目やわ。

積み重ねてでフェラーリ買うことができるように……。

それでその次にこれ書いたんですよ。『くるくるくるりんまなぶくん』というね、これもまた売れないんですね。

もうちょっとね、皆さんに広く手に取っていただけたらなと思うのですが。それと、いろいろ調べていくところでですね、最初に立田先生の存在を見つけたのは山口さんで。

ほう、ありがとうございます。

山口さんがすごく面白そうな先生がいらっしゃるというのを見つけてくれまして。立田先生、環境の落語をなさるとお聞きしたのですが、それは本当なのですか。

本当です。今はちょっと落語活動は休んでいますけれども。なぜやっていたかというと、僕は思うのですが、環境というのは、みんなが集まってきて、寄ってきて参加してもらわないと駄目だと思うのですね。例えばごみを出すのはみんなが出すのですよね。だからみんなに参加してもらってのことだから、皆さんに伝わるようなことをしていきたいなと。ある日、僕は講演会を聞きに行ったのです。おばあちゃんやったかな、印象に残っているのですけれど、おばあちゃんがトコトコと僕の隣に来てね、寝だすのですよで、それで講演が終わったら起きて帰っていかはった。おばあちゃん、誰かに講演を聞きに行ってくれって言われたんでしょうね。嫌々来たと思うのですよ。それ、聞く方も、話す方も、どっちとも無駄でしょ、そういう時間は。講演だからかた苦しい、だから、もっと易しい媒体ないかなと思って、ずっと考えてたんです。で、本を書いたのですね。でも、この『ロマンティック廃棄物』を書いて見たら、本の内容が難しいと言われたから、じゃあ漫画書いたるわと言って漫画を書いたんです。この本をね、それでもみんなに僕の思いが伝わらない。これ書いてもこの本の存在自体皆さん知らないのですよね。じゃあ、もっといい媒体はないかと考えているときに、ちょうどNHKで『ちりとてちん』という番組をやってたのですよ、ずっと前に。15年くらい前かな、貫地谷しおりさんが主演でした。その中で創作落語をやっていたんです。「あ、これや!」と思って、直ぐにやりだしたんです。講演よりも落語のほうがみんな聞くかなと思ってやりだしたというのが始まりです。
僕ばかりしゃべっていいんですか。

ええ、主役ですので。

で、環境をやってる以上、みんなに伝えていかなくてはあかんと思ったもう一つの理由は、以前僕バイオマスの講演をしてたとき、なんせ、皆さんバイオマス初めてで分からない。で、講演の最後に「なにか質問ございませんか」て言うたら、おばあちゃんか誰かが手を挙げてね、富山県でしたか、うちの大学があるとこでしたけれども。
「バイオマスっていうのはニジマスのこと?」って、聞くのです。
富山県でしたらマス寿司が有名で、マスは皆さん知ってはるんですよ。マスの種類はね。だから、「バイオマスっていうのはニジマスとかサクラマスの一種ですか」と言わはったんです。「いや、大きな範疇でいったらニジマスもバイオマスの一部ですけど、違うんですよ、バイオマスとはもっと大きな意味で言っているんですよ」っていうことがあってね、だから、講演をやったら一つでも理解して帰っていただきたいなということで落語という媒体を通じて伝えて行こうとしてます。僕のバイオマスの落語では「バイオマス、バイオマス」って叫んでいるだけなのですけれど、そのバイオマスという言葉をちょっと頭の中にとどめてもらうだけでもいいかなと。そういう理由もあったんです。だから、本当に普通の一般の方に参加していただいて、一般の方に、環境について考えていただきたいなというのが落語をやっている大きな原動力ですね。それが始まりです。
例えば薬剤師とか土木技術者とかね、土木技術者はトンネルを造ります。トンネルの工法なんて、一般の人は別に知らんでいいでしょ? 薬の難しいやつも、別に一般の人はそこまで知る必要はないじゃないですか。けれども環境は、特に僕のやっている環境は、ゴミだから、みんなを巻き込まなければだめだなというのが出発点です。だから、いろいろなことをやって、ちょっとでも環境についてのことが皆さんに届いたらな、というのが理由、僕の気持ちなのです。

いや、本当に、全然知らない人は知らないですし、本当に詳しく知っている人は知っていて、この差がすごいなと思うのが特に環境の話をしていると思いますよね。

そうなんです。だから、難しいことばっかり言っていても聞く方はちんぷんかんぷんで、意味がないと。易しく伝えられるような親しみのあるような媒体で伝えていけたらなと思っているのですね。それが私の大きなモチベーションです。

環境問題 = 地球温暖化?

実は、落語のほうも拝見したいなと思ってのですが、YouTubeのリンクが切れていまして。

切ったんですよ。あのね、いざ落語をしだすと長いとか言うんですよ、みんな。普通、落語はね、1本15分なのですよ。落語してたらね、そうしたら話が長いと言われて。なんでやねんちゅう話ですよ。けどね、僕は高校にたまに模擬講義とかで行くんですね。で、そこで落語もするんのすけれど、講義中は寝てる子も、落語したら起きだすという現象を見ました。だから、まだちょっと張りますよ。

ありがとうございます。僕は単純に落語が好きで、15分を“長い”という感覚がちょっと。素人と離れてしまって、いやいや45分聞きたいけどなと思うのですけれど。

それはすごい。

ぜひ聞かせていただけたらと思っていて、あと全国大学生協連の学生委員会のほうでも、それこそ環境に少しでも興味を持ってほしいなあということで冊子を発行したりしているのですね。『eco-op』というのを発行していまして、こちらはちょっと「環境活動を何でやるんだろうね」みたいなところであるとか、あとは大学生協も、富山県立大学にもあるかと思うのですけれども、かなり全国各地の大学生協のほうでささやかではありますが、環境の取り組みをやっているのをまとめて、他の方々にもぜひ少し、ちょっとでもいいから始めてみようというのを提案していくような冊子を作らせていただいています。まず僕は立田先生のおっしゃるように難しいことを難しく説明するのではなくて、分かりやすく少しでも多くの方にというのは非常にその通りだと思って、今のお話を聞かせていただいておりました。

だから、漫画も描いたんです。『くるくるくるりんまなぶくん』という。僕にしては素晴らしい本なのですけれど、なかなか売れないですね。

今後に向けてもっとこんなふうに出していこうかなみたいなところは、まだないのですか。

僕今、本を書いているんです。別に誰かに言われたからじゃないんですよ。自分で書いていて、後で出版社に売り込もうかなと思っているのですけれど。で、先ほど千葉さんがおっしゃったように、環境問題というのはね、難しいというか、いろんな人が入り込んできて、商業ベースにもなっていたり、正しいことが伝えられていなかったり、たくさんあるんですね。だから、僕の今書いてる本の仮の題ですが『洗脳されない環境問題』ということで、一つの環境問題でも一つの事象でもいろんな見方があるよと。いろんな側面から考えられる、みんなにそういうふうになってほしいなと思っているんです。例えば地球温暖化でもね、先ほど僕は高校によく講演しに行くと言いましたけれども、高校に行って高校生に聞くでしょ、「今、環境問題って何?」って。そうすると、みんながみんな「地球温暖化」って言うのです。環境問題って地球温暖化だけじゃないでしょ? 水の問題もあるし、ごみの問題もあるし、いろいろな問題がある。けれど、それしか知らないという。それは非常におかしいよ、と思うのですね。もっといろんなことが起こっているし、そういうふうないろんなことに目を向けてくれなければ、やっぱりかなり洗脳されている部分というのがあるのかなと。だから、それを一つでも解くように、一つの事象に対していろんな面の考察をできるような本を、今書いているんです。

それを発刊されるのを、僕も非常に楽しみに待たせていただこうと思っています。

例えば、原子力発電ですね。使った後の廃棄物はややこしいですよ扱いが、放射能が残ったりして。けれども、エネルギー効率からして、あれほど素晴らしいんのはないのですね。そういう話とかね。けれど、危ないから原子力発電はやめようよという、そういう話があるかもしれないし、いろんな議論があっていいと思うのです。それで、アイスランドを例にしてよく言われているのが、地熱であの国は全てエネルギーを賄っているよと。地熱、多分アイスランドの全エネルギーの95%ぐらいなのですね。98%やったかな? もうほとんどエネルギー源は地熱なのですね、アイスランドは。けれどアイスランドってね、国の人口がたった30万人。富山でも100万人おるんかな? そんな小さかったら地熱で賄えるけども、この1億2,000万人おる日本でできるのかという、そういうことも考えてね、ということです。地熱もそれは素晴らしいエネルギーですよ。サステナブルの再生可能エネルギーの一つでもあるけれども、いろんな条件もあるでしょ。そういうのも考えようねという、考え方を提示するような本です。それが僕は今の大学生を見ていてどうなんかな、いろんな考え方できるのかなあという気がするのです。