和田 明日香 氏インタビュー 料理が人生を変えた! ~料理家として、母として、一社会人としての私~ 

「キャベツとレタスの違いが分からない。獲れる場所で呼び名が変わると思っていた!」。
料理を始める前の和田明日香さんは食材にも疎く、その天然ぶりは周りを呆れさせるばかりでした。しかし、結婚し新しい命を宿したことで、和田さんの料理や食に対する考え方が劇的に変わりました。義母である料理愛好家、平野レミさんの手ほどきを受けてその楽しさに目覚め、一から修業を重ねて、現在は食育インストラクターとして活躍するまでになったのです。
今回は人生の変化を料理と共にたどってきた料理家 和田明日香さんにインタビューし、学生時代から就活、現在の仕事に至るまでの女性としてのあゆみを伺い、食に関して学生への提言を頂きました。

「キャベツとレタスの違いが分からない」……『平野レミと明日香の嫁姑ごはん』(セブン&アイ出版)より。

料理愛好家 平野レミさん……「シェフ」の料理ではなく、「シュフ」のアイデア料理をモットーに、テレビ、雑誌等で数々のレシピを明るく元気に発信(出典同上)。著書は数十冊。シャンソン歌手の顔も持つ。

インタビュイー

料理家 食育インストラクター
和田 明日香氏

プロフィール

聞き手

全国大学生協連
全国学生委員会副委員長

鳥井 和真(司会・進行)

全国大学生協連
全国学生委員会

中野 俊

全国大学生協
東北ブロック

山川 瑞生(東北大学)

全国大学生協
東北ブロック

村上 結菜(東北大学)

(以下、敬称を省かせていただきます)

はじめに ~自己紹介とこのインタビューの趣旨

本日はお忙しいところお時間を作っていただき、本当にありがとうございます。私は全国学生委員会の鳥井和真と申します。2022年に山形大学を卒業して今現在、東京で活動しております。
全国各地にある214の大学生協の学生委員会は、学生が充実した生活を送れるように、多岐にわたる活動をしています。全国学生委員会では、それら全国の大学生協や学生委員会相互のつながりを目指したセミナーなどを企画し、支援する活動を行っております。

同じく全国学生委員会で活動しております、中野俊と申します。この春、名古屋大学を卒業して、今は東京で全国学生委員会の活動をしております。

東北大学4年生の山川瑞生と申します。

同じく東北大学4年生の村上結菜と申します。

料理家の和田明日香です。東京在住、36歳で子どもが3人います。料理家の仕事をするようになったのは今から7年ぐらい前でしょうか。ぼんやりと少しずつ始めて、気が付いたらすっかり料理家になっていました。結婚したのは約13年前なのですが、それまでは一切料理をしてこなかったので、まさか自分がこの仕事をするようになるとは思ってもいませんでした。今は主にテレビ、雑誌、インターネットなどで、自分が考えた料理を提案したり発信したりしています。あとはラジオ番組のパーソナリティーを務め、地方で講演会などにも登壇させて頂いています。

和田さんの記事を拝見し、「食育インストラクターの資格を取得して人生が180度変わった」、「スーパーで買う食材はすぐに変えられる」という言葉がとても印象に残りました。
大学生はお金がなくなるとまず食費を削ります。また、新型コロナが5類になり、学生の外食率が上がっています。大学生協では、そうした学生に正しい食の知識と望ましい食習慣を身に付けることができるよう積極的に食育に取り組んでいます。和田さんには大学生に向けて、食に対する意識、料理をすることの大切さや楽しさをぜひお話しいただきたいと思っております。

私の人生を変えたもの

子どもと料理とレミさん

和田さんの人生を180度変えた料理に対する想いや活動に対して、大切にされていることを教えてください。

私は大学生まで実家暮らしで、ありがたいことに帰ればご飯が用意されているという状態で、料理に対する興味もなく、やりたいとも思っていませんでした。なので、そうした人間が仕事として人に料理を教えるようなことはできるわけないと考えていたんです。でも、自分の弱みだと思っていた料理をメディアに発信して行くうちに、私に料理ができなかったという時間があったからこそ、かつての私と同じように料理は面倒くさい、難しいと思う人たちに寄り添えるのではないかと思い至り、今ではむしろ強みだと思って活動しています。

何か転換点やきっかけはあったのですか。

結婚したら、夫の母が料理愛好家の平野レミさんだったいうのも大きかったです(笑)。あと、妊娠して自分の中に新しい命が芽生えたので、その子に栄養を届けなきゃいけないという状況になった時に、自分の体のことはさておき、今まさに作られている子どもの体は良い物で作ってあげたいと思うようになって、食べ物への意識が変わり、安心・納得できる料理を作って食べたいという気持ちがムクムクと芽生えたことが一番のきっかけでしたね。

実際に料理をされるようになって、料理ってちょっと楽しいなと思うように変わってきたのでしょうか。

そう、やったてみたら楽しかったんですよ。なんでこんなに楽しいことを苦手だと思っていたんだろうな、食わず嫌いだったなって思いました。私にとっては、一番近くで料理している姿を見せてくれたのがレミさんだったというのもすごくラッキーでした。正解なんか何一つないから自分がいいと思う方法でやればいいし、食べておいしければ、料理の本やインターネットに書いてある通りじゃなくったって楽しめればいいみたいな、そういう姿を見せてくれていたので、ハードルがだだ下がり・・・・・みたいな感じで始められました。
ゼロからのスタートだったので、私にとって全てが新しい発見でした。鰹だしってお湯にかつお節入れて煮出して取るんだとか、もう一つ一つが全部新鮮だったので、すごく楽しかったですね。

大学生も、料理ってやるまでがなかなか難しいなって思います。

そりゃそうですよ、やる場面があんまりないですから。私もみんなでバーベキューに行った時に肉を焼くぐらいでした(笑)。

和田さん流「食育」の考え方

学生委員会では食育に関して、大学生のうちからぜひこう育ってほしいなあというような思いはあるのですが、料理をするという面ではどのようなところが大事になっていくのでしょうか。

まず大前提として、食育にこだわる必要はないと思います。栄養とか、食事のバランスとかを考えると、どうしても料理はやらなきゃいけないことというか、義務みたいになってしまうと思います。料理ってそんな大層なものじゃなくて、例えばスーパーをぶらぶらしてみて、最近野菜食べてないなとか、全然魚を食べてないなとか……大学生ぐらいになったら野菜や魚って食べたほうがいいものだということはみんな分かるじゃないですか。また、「これ、この間、テレビで食べ方を見たな」とか、何か気にはなると思うんですよね。そうやって意識に引っかかる食べ物を買ってみること、大学生だったら料理の入り口はそれぐらいのことで全然いいんじゃないかなと思います。

「食育」というのが、主に子どもに対して食事のマナーであったり、「この食べ物にはこんな栄養素が入っているんだよ」とか、「一日にこれぐらいの量の野菜を食べなきゃいけないよ」とか、そういうことを教えていくものだと思われがち。実際そういう面もありますが、それは本当に一つの側面でしかないと思っています。
というのも、皆さんよりもっと小さな子たちは、食べることに対してすごく興味を持っています。それに大人よりずっと味に敏感で、味を感じ取る細胞が大人ほど失われてないので、繊細に食べ物の味を分かっています。子どもを育てていると、大人が頭でっかちにああだこうだと教えてしまうのは、その子どもの興味を邪魔してしまうことなんじゃないかなと思うし、お母さん方からいろいろ子どもの食事の悩みを聞いていても、同じことを感じます。

なので、大人は正しい情報を子どもに教えてあげなきゃいけないっていうのを取り外して、子どもと一緒に興味を持って食べ物を見る。「なんで野菜を食べなきゃいけないんだろうね」とか、「なんで冬にはスイカ食べられないんだろうね」とか、子どもの興味を一緒に面白がって考えるっていうのが、大事な食育だと私は思うので、大学生も実際に触ってみて、しかもそれをどう食べるかという実験みたいな感じで料理を捉えると、少しハードルは下がるのかなと思います。