和田 明日香 氏インタビュー 料理が人生を変えた! ~料理家として、母として、一社会人としての私~ 

学生時代から就活~現在に至るまで

自分の「好き」に忠実に生きてきた

和田さんは学生時代どんなふうに過ごされていましたか。また、その後の進路をどういうふうに選んだかをお聞きしたいです。

皆さんに話せるような話がないんですよね(笑)。

何か今に生きているものがあれば、お聞きしたいと思いまして。

学生時代は、本当に恥ずかしいぐらい何も考えてなかったですね。大学も全然楽しくない、サークルに入ってみましたが、合わなくてやめました。音楽が大好きだったので、音楽に関わる仕事に就きたいなと漠然と思っていました。

海外のアーティストのミュージックビデオは、今だとYouTubeなどですぐ見られるのですが、当時は音楽専門チャンネルでしか見られないような状況だったので、一日中そのチャンネルを見ていました。海外で大きなアワードをやっているのを見て、「スタッフとして関わったら超楽しそう」って思ってたら、MTVというチャンネルの日本法人がインターンを募集していることをホームページで知って、すぐに応募しました。でも、インターンってだいたい3年生以上からの募集だったんです。「1年生ですが、大学で他にやりたいことが見つからないので、ぜひやらせてください」って猛烈にアタックしたら、「1年生は授業もたくさんあるだろうから取れません」って断られちゃったんです。それで2年生になってもう一回チャレンジしたら、なんとか入れてもらえました。

憧れの世界だったし、周りの大人も個性的な人が多かったので、本当にすごく楽しくて。大学にいるよりもずっと楽しいことがそこにはあったので、ずっとインターンで仕事をしていました。そんな感じで就活も何とかなるだろうと、1、2回は国際フォーラムの合同説明会に行ったんですけど、ここには私のやりたいことはないなと思って、結局そのインターン先の先輩の推薦のような形でレコード会社に内定が決まりました。

それからすぐ結婚もして妊娠もしたので、結局は就職を諦めて専業主婦になったんです。というように、周りに迷惑をかけながらめちゃめちゃな就活をしてきたので、皆さんには何の参考にもならないと思います。でも、好きなことを諦めなかったので、やりたくないことを無理やりやるような人生にはならなくて済んだし、好きな気持ちをずっと胸に持っていたからこそ、料理家になった今、料理とは関係なく音楽のお仕事を頂いたりしています。あの時の気持ちをずっと大事にしていてよかったなと思えるような結果が今になって出ているので、あの頃自分の「好き」を最優先したのは、私にとって大事なことだったな、と思っています。

手探りで「好き」を見つけよう

私は新しいことを始めても三日坊主で終わったりするのですが、好きを持ちつづける秘訣はありますか。

三日坊主でも全然大丈夫と思いますよ。自分が本当に一生好きでいられるものって、そんなにすぐ見つかるものじゃないと思うので、味見してなんか違えばやめてもいい。私だって漠然と洋楽カルチャーが好きだっただけで、人に堂々と語れるほどの音楽好きだったとは思ってないし、それがこの先自分の人生とどう結び付いていくのかなんて全く想像できなかったから。たった一つの好きなものを見つけるというよりは、「自分ってこういうことをしていると気持ちがいい人間なんだな」というのを、いいことも悪いことも経験して探してみる。そして私が就活ができなかったように、「自分はこういうことはできないんだな、じゃあこっちは? こうやったら楽しいかな?」って、いろいろつまみ食いすればするほど自分が見えてくると思うので、一つの好きなことを持っていることだけが強いというわけでもないと私は思いますね。

好きなものをいろいろ試して、結果的に何か見つかるというような感じなのですね。

そうだと思います。今って本当に何でもすぐ手を出しやすいじゃないですか。ネットで調べられるし、お金はかかるけどサブスクのサービスもあるから、割と昔に比べて自分の趣味に手を出しやすくなっていると思う。だからこそ情報が多すぎて、一つ自分に揺るがない好きなものを見つけるのが難しくなっているかもしれない。でも、迷子になるって何も悪いことじゃないと思いますね。

和田さんの仕事・生活に対する考え方

自分の考えをしっかりと表明する

私、『家事ヤロウ!!!』観て、明日香さんのことが好きになって『地味ごはん』を買いました。今日はお会いできてすごく嬉しいです。私は働き方についてお聞きしたいと思います。今、企業には所属しないでいろいろなお仕事の依頼を受けていらっしゃると思いますが、そのような働き方が普通の民間企業で働くよりも自分に合っていると思う部分はありますか。

『家事ヤロウ!!!』……2018年4月11日(10日深夜)からテレビ朝日系列で放送されている教養バラエティ番組。家事初心者であるバカリズム・中丸雄一・カズレーザーの3人が、家事を基礎から徹底的に学んでいくという内容。

ありがとうございます。すごく嬉しいです。私は毎日違うことをしていたいタイプなので、結果的に合っていたのかとは思います。先輩も後輩もいないけれどレミさんはいるし、いろいろな主婦の方にもお会いできます。料理家として先輩後輩の関係も私には少なく、気付いたら料理家になっていて、同業者みたいなつながりもあまりなくて、結構一人ですね。マネージャーさんはいるけど、アドバイスをもらえたり怒ったりしてくれる仲間がいるともっといいのかな?

正直、普通の会社だったら、チームで何か達成するということができるのかなという憧れはあります。でもこういう働き方しか経験していないから比べようがないのですが、仕事によってチームができているみたいな感覚はありますね。このお仕事を頂いたらその場で一つのチームになって、編集者の方とカメラマンさんとフードさんとみんなでいいものを作って、出来上がればそれで終わりみたいな感じなのですが。

でも、その真ん中にある私の料理が魅力的でないと、みんなもいいものを作りたいと思ってくれないでしょうし、届けた先で受け取ってくれた人が作ってみたいと思ってもらえないといけないでしょう。私たちの仕事は作ったものを食べてもらうのではなく、作り方のアイデアを売るのが仕事で、形にしてもらうのは受け取ってくれた人なんです。なので、そこはすごく責任を感じるところではあります。

チームの中では、和田さんの料理が真ん中にあるという感覚なのですね?

そうですね、例えばレシピ本を作るときもたくさんの人が関わってくれるわけですが、私がどうしたいかっていうのは、周りが勝手に決めてはくれません。だって私のレシピとして世の中に出すわけだから、カメラマンにも「どういうふうに撮りたいの?」、ライターさんにも「どういう提案を文章にしたいの?」って聞かれる。ちゃんと私が自分の意見を持っていないと、みんなどうすればいいのか分からないような状態になってしまう。どんな仕事でもそうだと思いますが、自分の考えをきちんと表明して方向性を示すのは、偉かろうが新人だろうが必ずやらなきゃいけないことです。特にこの仕事はそういう部分が求められると思いますね。