大学を卒業して1年経ちますが、未だにお金や金銭的な制度のことについて勉強不足だと感じています。金融教育の観点になると思いますが、今の大学生がお金や将来のことを考える上で、意識すべきポイントやアドバイスなどはございますか。
本当に身近なことで言えば、まず自分のお金をしっかりと管理することから、ぜひ初めていただきたいと思います。仕事をしてまとまったお金が入るようになり、そのお金で将来的には自分一人でお金のやりくりして暮らさなければならない時に、自分自身のお金ときちんと向き合い、収支をしっかり把握しておくことが、お金のことに関しては何でも基本になります。投資をするにしても貯金するにしても、まず自分がそれらに充てられるお金がどれぐらいあるのか把握することから始まりますので、まずは家計簿アプリなどを使って、自分のお金の管理をすることを身につけていただきたいと思います。
学生時代の収入はまちまちだと思うので、まずはしっかりと管理をして、少しずつ貯金をするとか、投資をしてみるとか、それに回せるお金がどれぐらいあるのか、きちんと自分のお金と向き合うところから始めていただけたらいいのではないかと思います。
以前も家計簿アプリのお話を聞きして、少しずつ始めてみようと思い立ち、一番お金を使っていると思われる食費だけを一旦家計簿につけてみました。やはりコンビニの利用が多いことが一目瞭然で、少しずつ改善しようと思いましたので、本当にはじめの一歩としては家計簿アプリでも変わるものだと感じました。
先日年上の方と話をしていた時に「今の若い世代の節約方法は、脆弱なのではないか」と言われました。私自身も節約と考えたときに、「まず食費を削る?」と思ってしまうし、家計簿も続かず、投資は手を伸ばしにくいと思ってしまうのですが、賢い消費につなげるための情報のキャッチやツール、ニュースの取り入れ方のアドバイスをいただけますか。また横川さんが考える賢い消費とは、どのようなことですか。
お金の使い方で一番メリットがあると思うのは、キャッシュレスとポイントをいかにうまく活用するかというところではないでしょうか。皆さん絶対にスマホを持っていますし、今はコンビニなどにはポイントアプリが絶対あるので、そういうのを漏らさず貯めるとか、キャッシュレス決済やクレジットカードもポイントがより多くとれるものを使うとかですかね。クレジットカードの利用が怖いという人もいると思いますが、例えば〇〇payなどのキャッシュレス決済に紐づけるクレジットカードを契約してポイントを二重取りするなど、上手くポイントを貯めると次の買い物がお得になるという意味では、今は現金払いではなく、いかにキャッシュレスを上手に活用するかというところが大事になってきていると思います。
クレジットカードを新しく作ろうと思って調べた時に、ポイント還元などの情報が多すぎて、結局比較ができずに迷ってしまったのですが、それは地道に自分で比べていくしかないのでしょうか。
ポイント還元率はもちろん差があるので大事ですけど、自分の消費活動が多い場所の方が重要で、例えば決まったお店で洋服をたくさん買う人であれば定期的に割引される商業施設のカードがいいですし、使用している携帯電話会社のキャッシュレス決済がお得な場合もあるし、オンラインショッピングをよく活用する場合はそのサイトのカードがいいなど、自分がよく使う買い物やよく行く場所に関連づけると一番ポイントが貯まりやすく活用できると思うので、還元率よりそこを意識するといいのではないかと思います。
今後、金融リテラシーや消費のリテラシーを高めるために学生が行えることや、学生に期待していることなどがあれば教えてください。
自分たちにとっての課題や、不足している知識の補い方などを、皆さんで話し合ってまとめていくことや、NISAなども実際にやっている学生から聞くことなどだと思います。今はいろいろな情報が溢れていますけど、結局のところ実際の声の方が身近で理解しやすいと思うので、情報をシェアできる環境や話し合いの場があるといいのではないかと思いました。
お金に関して話すことが少しタブーというか、話しにくいと感じたりするのですが、その壁をなくす上でまた障害となるのがいろいろな情報の正誤性のような気がします。身近でできることや、意識した方がよいと思われることはありますか。
確かにSNSなどでいろいろな発信をされている方がたくさんいる中で、その情報が正しいのか一概にはわからないと思うので、少し面倒で難しいのですが必ず一次情報として、例えば金融庁や消費者庁、国税庁など、国が出している情報にアクセスをして、それを噛み砕いて理解できると一番よいのではないかと思います。ですから「情報は一次情報から拾う」ということは、このことに限らずですが、どんなことでも一番気にしていただくといいと思いますね。
投資の話として「投資いいよ」とか「ぜひやってみましょう」という話をいろいろなところで聞きますし、実際そうなのだろうと思ってはいるのですが、やはりなかなか手が出せずにいます。それはメリットとデメリットが、自分のなかで今一つまだピンと来てないせいで、投資をするとお金が増えると言われていますが、逆にどういうリスクがあるのか、そこも含めて改めてお話いただきたいのと、どのように情報を取り入れたらよいのかも改めて教えていただけたらと思います。
投資はかけたお金より減ってしまう可能性があるというところがもちろん一番のリスクで、ただリスクを減らす方法として分散投資という考え方があります。一つの資産しか持っていない場合、その投資資産がマイナスになると自分の投資資産全てがマイナスになりますが、分散投資としていくつかに分けて所有する場合、1社がマイナスでも他がプラスであれば、自分の投資資産全体がプラスになります。一つの資産に全力投球するのではなく、いろいろな資産を持つという分散投資をすること、投資の格言として「卵は一つの籠に盛るな」と言いますが、いかにその損をするリスクを減らすような資産運用をしていくかがまず重要です。
情報については、これは先と同じ回答になりますが、一番はやっぱり一次情報を見た方がいいと思います。国の省庁などでもYouTubeや投資に関連したさまざまな情報を出していたりするので、そういうのを見ていただくとか、証券会社などもいろいろなチャンネルを持っていたりするので、そういうページを参考にしてください。個人が書いていることより、国や金融機関が出している、きちんと説明があるものをまずは見ていただくのが一番いいのではないかと思います。
難しそうだと思っていましたが、わかりやすいYouTubeなどもあるということなので、ぜひ調べてみようと思います。
分散投資の話で、確かに一つの資産だけだとリスクが大きいことは理解できましたが、これは銀行口座でも同じでしょうか。
銀行口座自体は、預けている資産がマイナスになることは基本的にはないですし、銀行が仮に倒産することがあっても、預かったお金を保護する制度もあったりするので、そこは気にしなくて大丈夫ではないかと思います。ただ、貯金用の口座と生活用の口座は分けたほうがいいとは思いますね。
それは使いすぎを避けるためですか。
やはり分けなければ自分の貯金がいくらあるのかがわからないので、貯金用の口座は別に用意していた方が自分の貯金額を明確にするという意味でいいと思います。
読者の大多数は今の若者世代、特に大学生になるので、最後にその世代に向けてメッセージをいただければと思います。
お金の知識があると、さまざまな生活のために活用ができて、いろいろな選択肢が増えると思います。ただ、とかくお金に関しては、投資や消費者トラブル、損をするリスクなどネガティブなイメージがつきものなのですが、お金の知識をしっかりと学ぶことによって、そのようなことを防げるという意味でも、やはりお金の知識をしっかりと身につけていただきたいなと思います。
その知識を身につけるにあたって、何から始めればいいのか分からない場合がほとんどだと思いますが、とりあえず自分のお金と向き合うところからスタートしていただき、自身の収支の管理からまず始めていただければと思います。大学生のうちにそれが身についていると、大人になっても習慣として続けていけるので、まずはそこから始めていただくといいのではないかと思います。
学生や若者に響くメッセージやアドバイスがたくさんの人に届けばと思っています。ありがとうございました。
2024年5月8日リモートにてインタビュー
横川 楓 氏
1990年東京生まれ。明治大学法学部法律学科卒業、学士(法学)の学位を取得。明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科へ進学、24歳で経営学修士(MBA)の取得。
「お金のことをよりも等身大の目線でわかりやすく」をモットーに、お金の専門家として、幅広い年齢層への相談業務や学校・企業などでのセミナー講師、金融教育サポート、メディア出演、企業や官公庁のアドバイザー、コンテンツ制作、マネースクール監修、企画など、金融教育並びにマネーリテラシー向上のため、啓発活動を行っている。
2022年1月、金融教育並びに金融リテラシー普及のため、日本初の金融機関以外の金融教育の非営利業界団体である日本金融教育推進協会を立ち上げ、代表理事に就任。
▼保有資格
経営学修士(MBA)、ファイナンシャルプランナー(AFP)、簿記2級、SDGs検定、マネーマネジメント検定2級、マイナンバー管理アドバイザー、他
(公式サイトより一部抜粋)
公式HP https://www.kaedemoney.com/
一般社団法人日本金融教育推進協会HP https://www.financial-education.jp/