いずみスタッフの読書日記 178号


レギュラー企画『読書のいずみ』読者スタッフの読書エッセイ。本と過ごす日々を綴ります。
 
  • 慶應義塾大学4年生
    手賀 梨々子
    M O R E
     
  • 名古屋大学5年生
    後藤 万由子
    M O R E
     
  • 千葉大学3年生
     高津 咲希
    M O R E
     
  • 千葉大学4年生
    三好 一葉
    M O R E
     

 

 

慶應義塾大学4年生 手賀梨々子

12月8日

 日吉図書館でのビブリオバトル。「人を通して本を知る。本を通して人を知る。」まさにこれ。実は、紹介される本よりもバトラーの考え方や世界観を知ることができるイベントなのだ。そして、コロナ禍で入学した頃からもう4年間お世話になっている日吉図書館への感謝。この空間が本当に好きだなあ。この図書館は「新入生を知の世界への航海に導き、その後専門課程のキャンパスへと送り出す」“船”をモチーフとしているらしい。それってどこかで……あ。『図書室の海』(恩田陸/新潮文庫)だ。主人公の通う学校の図書室の構造も、船に似ている。卒業までに読みたい本リストに恩田さんの作品がたくさん溜まっています……。『図書室の海』購入はこちら >
 

12月16日

 お庭がすてきなお気に入りのカフェで読書タイム。注文後『さいはての二人』(鷺沢萠/角川文庫)のページをめくる。お互いの身の上を明かさないまま近づいていく二人。本当は真反対の立場にいるのに。生まれた場所、家族構成、経済環境、身体の特徴。そういうものを通り越して人間は「繋がりたい」と思うんだ。「りりこちゃん、お待たせしました〜」馴染みの店員さんの声で我に返る。待ってました! チーズケーキ&コーヒーの黄金コンビ! 食欲には何も勝てません。コーヒーを飲みながらお庭をぼんやりと眺め、移りゆく季節を感じる。季節が変わるように、私たちの周囲の環境も絶え間なく変化していくだろう。それでも、この本にある「人型がぴったり一致する」繋がりを誰かとの間に感じていれば、人はなんとか生きていける。血の繋がりや社会的要素を取り払ってもなお残る、人間の芯にある「人型」同士が求め合う繋がり。今日もいいひと時が過ごせたな。ごちそうさまでした。また来ます! 『さいはての二人』購入はこちら >
 

12月20日

「読書日記」に興味をもち、今は『室内旅行 池澤夏樹の読書日記』(池澤夏樹/文藝春秋)を読んでいる。タイトルにもあるように、池澤さんは、読書と旅はよく似たものだと捉えている。旅の間は別の人格になるように、本の中では別の自分になる。人はその記憶を持って日常に戻るので、旅中の別の人格が本来の人格に加わるし、書物の中の仮想の体験は自分の体験の一部になるという。たしかに、一冊読み終えた時の自分は、何かを新たに取り入れたような感覚になることがある。別の人の一生を生きてきた感じ、とでもいうのだろうか。人生は(たぶん)一度きりだけど、読書を通して何度でも歩める。『室内旅行 池澤夏樹の読書日記』購入はこちら >
 
 
 

 

名古屋大学5年生 後藤万由子

12月はじめ

 インフルエンザにかかった。中1以来だ。まさかかかるとは、と驚いたが確かに流行っているもんなぁ。38.5℃なんて久々に見たよ。
 咳は出るし喉は痛すぎるし頭は働かないしで、この日はおとなしく寝ることにした。天井の木目を見ていて、そういえば小さい頃もずっとこうしていたな、と懐かしくなった。天気が良いのだろう、障子から明るい日が漏れていた。何もないが、なぜかワクワクしていた。
 加藤周一は小さい頃よく体調を崩して寝床で本を読みまくっていたんだっけ。私も風邪をひいた時にそうしていたら 勉強をもっと好きになれたんじゃないか。そうか、風邪なんて滅多にひいたことなかったし、ひいてもドラゴンボールばかりだったか。
『アイム・ファイン!』(浅田次郎/集英社文庫)を手に取った。『スカイワード』(JALグループ機内誌)で読んで浅田さんのエッセイを好きになって買った。買った直後はあまり読む気になれなかったけど、なんだか読みたくなった。空飛ぶレタスや薄毛の話が面白すぎた。誰もいないのに、めっちゃ笑ってしまった。ただ、歴史や昔の記憶を古風な語り口調で書いているところが、『羊の歌』(加藤周一/岩波新書)を思い出させた。
 森下典子さんは『いとしいたべもの』(森下典子/文春文庫)で風邪をひいた時のおかゆがこの世で一番おいしいと言っていた。同じエッセイだけど、こっちはやわらかい語り口調で、ちょっと切ない。そうこうしていたら11時になった。様子を見にきた母が「まゆちゃん今日のお昼ご飯どうする」と聞いてくれた。「喉痛かったら柔らかいものとか―― 」と母が聞き終わらぬうちに、私は「がらあげ」と言った。母が笑ったのは、私のガラガラ声になのか、即答にだったのか。おそらく、両方だろう。体調が悪かろうがよかろうが、おかゆより唐揚げ派である。
 

数週間後

 熱が出てからの3日間、私は唐揚げを20個以上食べた。そのおかげですっかり元気になり、年内の病院実習も無事終えることができた。だが本当に流行っているため、皆、インフルエンザに限らず体調管理に気をつけてほしい。
 
 

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