わが大学の先生と語る「信太先生の推薦図書」


『冥途/旅順入城式』
内田百閒
岩波文庫/本体850円+ 税
研ぎ澄まされた日本語による語りの名人芸。その淡々とした語り口に導かれて、気がつくと読者はこの世とあの世、現実と夢幻の境を踏み越えてしまっている。

『水晶 他三篇─石さまざま』
アーダルベルト・シュティフター<手塚富雄・藤村宏= 訳>
岩波文庫/本体780円+税
クリスマスの前夜、雪山に迷い込んだ幼い兄妹たち。小さなものたちの無垢な魂と、それを包みこむ思寵としての自然の美しさが、作家の透徹した眼差しによって捉えられる。

『幼年期の終わり』
アーサー・C.クラーク<池田真紀子= 訳>
光文社古典新訳文庫/本体760円+税

「ヒューマニズムの克服」を真っ先に成し遂げるのはSFかもしれない。SFの巨匠の想像力のなかで、「人間」は何処ヘ向かって乗り越えられていくのか。


『遠野物語・山の人生』
柳田国男
岩波文庫/本体920円+税

日本人の魂はわれわれの想像するよりもっとずっと深く「山」に根ざしているのではないか。著者の民俗学とは、その山に埋もれてきた魂に共鳴する能力に他ならなかった。


『ハイデガーの思想』
木田元
岩波新書/本体840円+税

ハイデガーという巨大な哲学的偶像が、20世紀という困難な時代の「現象」として浮かび上がってくる。他の類書にはない展望と喚起力を備えた、ハイデガー思想の最適の入門書。


『利己的な遺伝子』
リチャード・ドーキンス<日高敏隆 他=訳>
紀伊國屋書店/本体2,700円+税

「生き物とは何か」。この究極の問いに大胆で明快な答えを与えることで、世界を見るまったく新しい見方を提起して、それが今日ますます重みを増しつつある。


『考えるヒント』
小林秀雄
文春文庫/本体600円+税
西洋文化と出会い、格闘し、そして傷ついてきた近代日本の「知性」。そうした運命を引き受けてきた著者の思考から、今日のわれわれはなおも学ぶことが多い。
 

『表徴の帝国』
ロラン・バルト<宗左近= 訳>
ちくま学芸文庫/本体1,000円+税
西洋的知性によって極東の国・日本は、無意味で美しい一つの「比喩」として再発見された。「天ぷら」がかつてこれほど見事に描写されたことがあっただろうか。




 
P r o f i l e

信太 光郎 (しだ・みつお)
1969 年生まれ、秋田県出身。
東北学院大学教養学部准教授。
1994 年東京大学理学系研究科人類学専攻修士課程修了、2009年東北大学文学研究科文化科学専攻博士課程後期3年課程修了。2013 年東北大学文学研究科助教を経て、2014年より現職。専門は哲学。

■主な著書・共訳書
『死すべきものの自由─ハイデガーの生命の思考』(信太光郎/東北大学出版会)、『存在と人間』(オイゲン・フィング<座小田豊・信太光郎・池田 準=訳>/法政大学出版局)

「わが大学の先生と語る」記事一覧


ご意見・ご感想はこちらから

*本サイト記事・写真・イラストの無断転載を禁じます。

ページの先頭へ