自粛期間が明ける直前、滑り込みで読みはじめた一冊がG.ポリア〈柿内賢信=訳〉の『いかにして問題をとくか』(丸善出版)だ。ジュンク堂書店京都店の閉店前、最後に立ち寄った日に購入した一冊。本書は、解法や目的達成への手段を自分で発見する思考過程の指南書である。はじめは学生と教師の対話形式で算数の簡単な問題を例に、徐々に複雑で抽象度が高い問題を扱っていきつつ、各ステップでやるべきことが書かれている。個人的にその道筋はもとより、“数学”を言語化していく工程に目を見張った。数学を嗜む人以外にも支持されているという表紙の帯文句にも納得。数学以外の一般的な問題解決の一助にもなる一冊。
久方ぶりに本屋に出向く。いつもだったら気の済むまでうろちょろするけどもこの御時世だ、一直線に詩・短歌のコーナーへ向かう。本は時代の鏡でもあるけれど、このコーナーは流行りに構わない普遍性が光っていてなんだかほっとする。
この本を読むのは実に6年ぶり、森見登美彦さんの『太陽の塔』(新潮文庫)を生協にて購入する。主人公「私」の元恋人水尾さんが惹かれる太陽の塔、そして「ええじゃないか騒動」の起点、四条河原町の交差点は如何なる場所か……。広島に住んでいた私は、森見作品を読んでは空想したものだ。
雨がいつも降っている。課題に追われ、友達には会えない毎日。思いっきり楽しい気分になりたくて本棚から手に取ったのは、『キケン』(有川浩/新潮文庫)だった。普通の工科大学の、普通(?)の大学サークルの物語。主人公の冴えない理系男子・元山くんがとにかくハチャメチャな先輩たちにぶんぶん振り回される姿は、一息つく暇もないほどの笑いを提供してくれる。学内でバイクを乗り回し、爆破実験まで行ってしまうU先輩と、そんな先輩さえ恐れる寡黙なO先輩。
やばい。いよいよやばい。テストが迫りくる。精神がやられる。そんなときは、まず読書。すぐに読める短編集で一息つこう。そう思って、『できればムカつかずに生きたい』(田口ランディ/新潮文庫)のページを開いた。この本は、エッセイ集だけど、とっても言葉が重い。読んでいる間は、曇り空の下で強烈なボディブローを何発も食らっているような気分になる。
ぱったり出会った古本屋で本を買ってしまった。数ヶ月前の引っ越しの時に「これ以上本を買っては引っ越しの時にとても苦労する。今後本はなるたけ買わないようにしよう」と決意したはずだった。けれど古本屋が数か月ぶりであったが為に耐えきれず店内に入り、見つけた素敵な本の値段が昼飯代を犠牲にすれば買える値段だと気がついてしまったとき、その決意ははかなく消えた。
おかしい。おかしい。私は何のために北国にやってきたのか。涼しい場所へ行きたかったのではなかったか。それだというのに、暑い。今私はまさしく溶けている。屋外に出たくない。机に冷えた飲み物をおいて、手に取ったのは辻仁成の『海峡の光』(新潮文庫)。辻仁成の作品は小学校以来読む機会がなく、久しぶりの再会であった。函館を舞台にしているからひょっとして見知った地名が出たりしないかしら……そんなことを考えていた最初の自分は読み終えるころには消えていて頭には「?」が残っていた。人生経験が足りていないのかしら。この話の根底にあるものが私にはまだつかみ取り切れていない……く、くやしい。人の行動は説明が毎回付けられるわけではないものだけれど、その描写が本当に上手かった。心情が読めるような読めないようなこの雰囲気。おそるべし……。
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