出張!誌上フェア

大学生協の書籍コーナーでは、年間を通して様々なテーマのブックフェアが開催されています。その中で大学オリジナルのものや一部のお店でのみ開催されているフェアにスポットをあててみました。コロナ禍でなかなか大学内のお店に気軽に足を運べない今日日、ささやかですが誌上で本選びをお楽しみください。


このフェアは、今春愛媛大学を卒業した海月さん(読書マラソンエントリー名)が同大学生協城北ショップひめかのコーナー一角を借り、4年間の思いを込めて作成したおすすめ本コーナーです。  

 
  • 森博嗣
    『すべてがFになる』
    講談社文庫/定価869円(税込) 購入はこちら > この本に最初に出会ったのは高校2年生の頃で、大学生になってから何度も読み直しています。読書が好きになるきっかけになった私にとって大切な本です。これは、主人公の大学生と助教授が事件を解決する「理系ミステリィ」。なぜ理系かというと、著者の森博嗣さんが工学博士で元大学助教授なので頻繁に理系の話題が出たり、理系に関するものが事件に関わったりしているからです。読むとその世界観に引き込まれ、事件のトリックがしっかりしているので、読後の満足感が凄いです。今では私の本棚は森さんの本だらけです。一番のオススメです。

     
  • カミュ〈宮崎嶺雄=訳〉
    『ペスト』
    新潮文庫/定価825円(税込) 購入はこちら > 私が大学時代に最も影響受けた本を挙げるとしたら、間違いなく『ペスト』を挙げるでしょう。この本は私が海外文学の素晴らしさを知ることになった一冊でもあります。海外文学の深み、重みをこの本から感じました。伝染病のペストが蔓延するアルジェリア・オランに生きる人々の思いがリアルに描かれています。その様子はまるで新型コロナウイルスが蔓延する現代の世界のようです。カミュの文学は「不条理の文学」と呼ばれています。どうしようもない不条理を前に私たちはどう考え、生きたら良いのでしょう。ここにはそのヒントがあるかもしれません。

     
  • 森博嗣
    『読書の価値』
    NHK出版新書/定価902円(税込)購入はこちら > 読書をする上でお薦めしたいのは、好きな作家のエッセイや新書を読むことです。もし好きな作家がいなければ、有名な作家のエッセイや新書を探してみましょう。私は小説にはストーリィの面白さとともに、設定や会話等から著者のバックグラウンドや思考を知ることができる面白さがあると考えます。後者を最大限に体験できるのが作家のエッセイや新書です。この本は私の大好きな作家、森博嗣さんが読書について書いている新書です。森さんは淡々とした文章を書いているため、情報を理解しやすいので、ぜひエッセイや新書を読み始める方にはお薦めの一冊です。
     
 
  • ジョージ・オーウェル〈高橋和久=訳〉
    『一九八四年』
    ハヤカワepi文庫/定価946円(税込)購入はこちら > 皆さんはSFと呼ばれるジャンルの本を読んだことはありますか。現実離れして癖の強い印象があるかもしれません。しかし、この『一九八四年』を読むと、SFに対する印象は変わるでしょう。あまり堅く考えるとつまらないかもしれませんが、SFにこそ「学び」があるのです。この本は、ビッグ・ブラザーによる統制、制限された世界の物語で、いわゆるディストピア文学の一つです。私たちは、この本を読んでディストピアを疑似体験することで、現代の社会について思考をめぐらすことができます。

     
  • 菅野仁
    『友だち幻想』
    ちくまプリマー新書/定価814円(税込)購入はこちら > 素人の考えかもしれませんが、この本を読み切った瞬間、「この本は道徳の参考書にしたほうがいい!」と思いました。この本には誰しもが悩んだことのあるであろう人間関係について書かれています。私も人間関係を少し楽に考えられるようになったとともに、もっと早く読んでおけばよかったと後悔しています。さらに、この本は筑摩書房のちくまプリマー新書というレーベルで若い人に向けて書かれているものなので、とても手に取りやすいものとなっています。皆さん、人付き合いの考え方を変えることのできるチャンスです。

     
  • 森博嗣
    『悲観する力』
    幻冬舎新書/定価880円(税込)購入はこちら > 本はインプットをする効果があります。私は読書で得た知識をメモ帳にまとめる習慣があり、そこでインプットをしていたのですが、知り合いの方に、本を読んで自分が考えたことをまとめるべきと教わりました。アウトプットです。これにより自らの生活により身近な知識となり、活かすことができるようになりました。このフィードバックした知識の中で最も好きなものはこの「悲観」についてです。皆さんで噛み砕いて自らの生きた知識にしていただきたいので詳細は書きません。一見ネガティブな「悲観」ですが、生きる上で必要な力だと感じたのでお薦めします。
     
 
  • 若松英輔
    『本を読めなくなった人のための
    読書論』

    亜紀書房/定価1,320円(税込)購入はこちら > 私は読書が好きです。しかし、実は1年以上スランプに陥っています。読みたいけど読めないのです。今では極端だったと思いますが、本を読めない自分は価値がないと思っていた時期もありました。そんな中手に取ったのがこの本でした。著者の若松さんの言葉は非常に優しいこともあり、この本を読むと焦らなくてもいいんだと思えるようになりました。もともと読書に縁がない方、昔は読んでいたけど今は読んでいない方、この本の若松さんの言葉に触れて読書そのものに対する考え方を改めてみませんか。きっと読書のハードルが低くなります。

     
  • 萱野稔人
    『死刑 その哲学的考察』
    ちくま新書/定価1,034円(税込)購入はこちら > 私は時事的な話題や現代社会の重要論点に興味があり、知識と考えを持っておきたいと思っています。社会に生きる一市民としての責任かなとなんとなく考えています。情報の入手手段にはテレビ、新聞、インターネット、そして本があります。私はこれらを複合的に用いています。特に本で読んで良かったと感じたものがこれです。私が法文学部に所属していたこともあり、死刑については知る必要性を感じて購入しました。様々な論点から死刑について考察されているので、これを読むだけである程度知識がつきます。

     
  • 堤未果・中島岳志
    『メディアと私たち』
    NHK出版/定価990円(税込)購入はこちら > 最も好きなテレビ番組を聞かれたら、NHKのEテレで放送されている「100分de名著」と答えます。この番組は名著を月一冊、毎週25分×4回の計100分で解説するもので、本が好きな方にも初めてその本を知る方にも観やすい番組です。その特別版「100分deメディア論」をテキスト化したものが『メディアと私たち』です。およそ3年間観てきた私にとってのお気に入りの回です。ステレオタイプ、オリエンタリズム、空気、監視社会。メディアに関する名著4冊から見える多様な切り口から現代社会の問題を明らかにします。
     
 

サン=テグジュペリ〈内藤濯=訳〉
『星の王子さま』
岩波文庫/定価572円(税込)購入はこちら > この本は多様な解釈の可能性を秘めています。読みやすい一方で、抽象的なストーリーのため、著者が何を伝えたかったかイマイチ分かりづらい。しかし、この「分かりにくさ」こそが良さです。以前この本で読書会をしました。私の解釈は、王子さまと飛行士は「子供と大人」のメタファーで、王子さまは幼稚ですが想像力豊かで、視野が広く、物事の内面を見ることができ、子供から大人になるにつれ、大切な力が失われていくといったものでした。面白いことに他の方は異なる解釈をしており、その分新たな発見がありました。多様な解釈ができるこの本からあなたは何を考えますか。

海月(河本捷太)さんから
後輩の皆様へ

 こんにちは。私は法文学部に所属し、2021年3月に卒業する河本捷太(かわもと・はやた)と申します。ひめかの職員の方との縁もあり、今回はひめかの一部をお借りして私のお薦め本10選を紹介します。少し硬い本が多いですが、ぜひ一度POPを見て、本を手にとっていただけたら幸いです。
 唐突ですが皆さんにとって本とは何ですか。私にとって本は「経験」です。私は大学生になりいろんなことに挑戦したいと思っていました。社会人になるまでの4年間で少しでも成長したかったからです。そのうちの一つである読書自体は高校生の頃からしていたのですが、大学生になってから特に力を入れました。読書の魅力は自分には直接経験できないことを疑似的に経験することで知識が手に入り、思考をめぐらせられるところです。実際に、読書を通じて今の私の一部は形成されていると言っても過言ではありません。その意味で私にとって本は経験です。
 一方で本は趣味としては少しとっつきにくいという方もいると思います。確かに文字を読むのにはある程度集中力がいるかもしれません。そんな方におすすめなのが誰かがお薦めした本を読むことです。他の人が面白いと思っているならもしかしたら自分も面白いと思えるかもしれません。私自身はその選び方、読み方が性に合っていました。そのため私が紹介するこの10冊を参考にするのも一つの手です。私としては、この10冊は間違いなく自信を持ってお薦めできるものばかりです。これを通して読書に興味を持っていただけたら幸いです。

河本捷太


 
現在(2021年6月)、愛媛大学生協では仮組合員カード(PiyoCa)から学生証への移行手続きを行っており(完全予約制)、手続き完了後に海月(河本捷太)さんのメッセージが添えられたこの読書マラソンのご案内を『読書のいずみ』新学期号に挟んでお渡ししています。
 
 


ご意見・ご感想はこちらから

*本サイト記事・写真・イラストの無断転載を禁じます。

ページの先頭へ