わが大学の先生と語る「菊池先生の推薦図書」


『ぼくはこんな本を読んできた』
立花 隆
文春文庫/定価759円(税込)
購入はこちら > まず、「知の巨人」立花隆の読書術から。手にした本をパラパラめくって気になる一節に目を止めることも書物の効能だと喝破する著者は、読書が各自の関心と目的に沿った創意工夫を要する営みであることを教えてくれる。

『知的生産の技術』
梅棹忠夫
岩波新書/定価968円(税込)
購入はこちら > 新京都学派の一員にして国立民族学博物館初代館長を務めた梅棹忠夫は、文系理系を問わず、あらゆる知的営為を情報の収集・整理・発信のプロセス=「知的生産」として一元化した。半世紀前の作品でありながら、知の原点を今も示し続けている。

『日本の民俗 祭りと芸能』
芳賀日出男
角川ソフィア文庫/定価1,408円(税込)
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本は読むだけでなく見るためのものでもある。本書は、折口信夫や宮本常一に学び、内外の祭礼を撮り続け、「民俗写真」というジャンルを切り拓いた写真家の集大成となる一冊。この重厚な内容が文庫で手に入るのはありがたい限り。


『魔女に会った <たくさんのふしぎ傑作集>』
角野栄子(著・写真)/みやこうせい(写真)
福音館書店/定価1,430円(税込)
購入はこちら > 児童書もあなどりがたい。福音館書店「月刊たくさんのふしぎ」シリーズは、古今東西、さまざまなテーマを掘り下げ、大人が読んでもしっかりと勉強になる。『魔女の宅急便』の作者が東欧の「魔女」に会いに行く本書も秀逸。

『美童物語』
比嘉 慂
講談社モーニングKC/定価702円(税込)
購入はこちら > 「都道府県別・民俗学的オススメ漫画」リストを考案中。沖縄県代表(暫定)は、ノロ(女性神職)の血を引く少女を主人公とした作品。植民地化され戦争に巻き込まれる沖縄の不条理が、史実と幻想の往還からあぶり出される。

『一〇〇年前の女の子』
船曳由美
文春文庫/定価858円(税込)
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「都道府県別・オススメ生活史」リストも考案中。栃木県代表(暫定)は、平凡社『太陽』を支えた伝説的編集者である著者が、米寿を過ぎた実母から聞き書きした一冊。北関東の農村で懸命に生きる少女の姿が鮮やかに描き出される。


『移民時代の異国飯』
山谷剛史
星海社新書/定価990円(税込)
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今日の日本には数百万の外国人が暮らし、彼らが持ち込む食文化=「異国飯」も百花繚乱、その食べ歩きレポートが本書。知られざるエスニック料理の数々から、事実上の移民国家となった日本の立ち位置を考えさせられる。


『民俗学入門』
菊地 暁
岩波新書/定価968円(税込)
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最後に拙著を。今を生きる「私」を出発点として世の中を見つめ直す民俗学のエッセンスを、可能な限り簡潔に紹介しようとした一冊。人々のいとなみを「きる」「たべる」「すむ」といったシンプルな動詞を軸に解説。入魂のブックガイドもご覧あれ。

P r o f i l e

菊地 暁(きくち・あきら)
1969年生まれ、北海道小樽市出身。
京都大学人文科学研究所助教。
京都大学文学部史学科卒業、大阪大学大学院文学研究科博士後期課程修了(博士〈文学〉)。1999年京都大学人文科学研究所助手として着任、2007年同助教に名称変更、現在に至る。専門は民俗学。
■著書
『柳田国男と民俗学の近代―奥能登のアエノコトの二十世紀』(吉川弘文館 2001)、『身体論のすすめ』(編、丸善2005)、『今和次郎「日本の民家」再訪』(共著/平凡社2012)、『日本宗教史のキーワード―近代主義を超えて』(共編著/慶應義塾大学出版会 2018)、『学校で地域を紡ぐ―『北白川こども風土記』から』(共編著/小さ子社 2020)、最新刊は『民俗学入門』(岩波書店 2022)。
 

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