いずみスタッフの 読書日記 175号


レギュラー企画『読書のいずみ』読者スタッフの読書エッセイ。本と過ごす日々を綴ります。
 
  • 千葉大学4年生
    三好 一葉
    M O R E
     
  • 名古屋大学5年生
    後藤 万由子
    M O R E
     
  • 京都大学大学院M2
    徳岡 柚月
    M O R E
     
  • 東京工業大学3年
      中川 倫太郎
    M O R E
     

 

 

千葉大学4年生 三好 一葉

3月上旬

 すっかり春めいてきた日曜の午後、自転車を漕ぎ市立図書館へ向かう。やることも読む本も既に山ほどあるのだけれど、閲覧履歴を元にカスタマイズされた情報じゃなく、色とりどりの背表紙がランダムに目に飛び込んでくる図書館という場所は、私にとってやっぱり絶対に必要なのだ。評論コーナーで、以前から気になっていた『挑発する少女小説』(斎藤美奈子/河出新書)を見つけた。若草物語、赤毛のアン、ふたりのロッテといった作品が、名作として現在まで愛される理由に迫る一冊。何だかあの頃の自分に会いに行くみたいで、少しドキドキしながらページを捲る。愛に満ちた毒舌が楽しくて、流れで無性に児童文学が読みたくなり、『飛ぶ教室』(ケストナー/講談社文庫)もトートバッグに入れた。『挑発する少女小説』購入はこちら >
 

4月初旬

 通学定期が切れてしまったのもあってか、図書館に行く頻度が増えている。何気に読んだことがない作家さんの本でも読もうかな、と思って、『白いしるし』(西加奈子/新潮文庫)を手に取った。正反対な絵を描くふたりの恋愛小説。絵画のことはわからないけれど、それでも何かに心を奪われた瞬間の切り取られ方に、序盤からどうしようもなく頷かされてしまう。息をもつかせない疾走感に、結局貸出機に通すことなく読み終えてしまって、そのまま棚に戻して図書館を後にする。たまにはこんな日もいいな、と思う。『白いしるし』購入はこちら >
 

4月下旬

 風邪気味だ。睡眠不足のせいだろうか。ぼうっとする頭でキーボードを叩くけれど、心なしかブルーライトがダイレクトに目に染みる。ダメだ、こういう時に開くべきはたぶん活字だ。積読していた『ビニール傘』(岸政彦/新潮社)を引っ張り出す。予告なく複数の「俺」が移り変わる独特な語りに一瞬、あれっと面食らうものの、気がつけば舞台・大阪の片隅に引き込まれていた。彼らの抱える寄る辺なさは、私も知っている。名著『断片的なものの社会学』(朝日出版社)もそうだけれど岸さんの文章は、今日すれ違っただけの「何者でもない(そして私でもある)」一人一人にそれぞれ切実な人生があって、ふとした時に蘇る記憶の欠片があって、なんてことない考え事をしたりするんだよな、という当たり前の事実に、本当に優しいまなざしを注いでくれているから、好きなんだなあと改めて思う。そんな夜更けなのだった。『ビニール傘』購入はこちら >
 
 
 

 

名古屋大学5年生 後藤 万由子

3月某日

 今日から春休み。病院実習が始まって3ヶ月弱。ずいぶん読書から遠ざかってしまった。落ち着いたら読もうと思っていた本たち。捲ってみたがどうも気乗りがしなかった。すぐに閉じてしまった。
 
 

4月某日

 何をするでもなくぼうっとしてばかりなのも嫌なので、机の掃除をした。隣の部屋も掃除をしていたら、小さいころ読んでいたドラえもん(『ドラえもんの国語おもしろ攻略 読解力がつく』〈小学館〉)が目に入った。開いたページに、「いそしむ」は「急ぐ」や「忙しい」の親戚と書いてあった。これは面白い。確かに「いそいそ」と言うもんなぁ。他にも親戚どうしの言葉を探してみよう。「うるさい」は「うる(心)」と「せし(狭い)」からきている、と聞いたことがある。うら悲しい、うら寂しいも親戚っぽいな。パソコンで打ったら、「心悲しい」って出てきた。びっくり。『ドラえもんの国語おもしろ攻略 読解力がつく』
購入はこちら >
 

4月某日

 日本語面白い。高校の時使っていた古典の単語帳(『頻出古文単語400』〈仲光雄/Z会ソリューションズ〉)。開いたページに「いみじ」があった。これ、良い意味と悪い意味両方と使えるからどっちなのかわからなくて苦戦したな。そういえば、今どきの子は何でもかんでも「やばい」で済ます、と嘆かれている。もしかしたら「いみじ」も似たようなものなのかも。「あなかま(ああやかましい)」は「かまし(うるさい)」からきている。じゃあ、「やかましい」もそうか。

辞書ではわからないニッポン 笑える日本語辞典』(KAGAMI&Co/講談社)も読んでみた。「おいしい」は「よい」と言う意味の「いし」から来ている。「良い」を「いい」と読むのもそこからきているのかな。
 
 

4月下旬

 親戚が遊びにきた。伊勢の人は「今ね、……」を「今しな、……」と言うらしい、と聞いた。これ、和歌に出てくる語調を整えるための「し」なのかな。「誰しも」は「し」を抜いても意味が通るし、「今し方」ももしかして。考えていたら、ニュースで「本番さながら」と聞こえてきた。ハッこれは。道す「がら」とご親戚?
 夕方、外で「そんな難しいのようやらん(できない)」と中学生が言うのが聞こえてきた。これは漢文の「能く……す」の生き残りか?オモシロすぎて、注意力散漫だ。
 
 

「読者スタッフの読書日記」記事一覧

 


ご意見・ご感想はこちらから

*本サイト記事・写真・イラストの無断転載を禁じます。

ページの先頭へ